第472話奈良への小旅行計画が持ち上がる

麗は、恵理と結、宗雄についての話が終わったので、自分の部屋に入った。

すぐに今日からのお世話係美幸が入って来た。

「麗様、本日からよろしゅうお願いいたします」と頭を下げる。


麗は、「はい、忙しいかもしれませんが」と、地味に返事。

それでも美幸が音楽係であることを思い出す。

「いつかの夜は、協力ありがとうございました」と、感謝する。


美幸は、驚いて首を横に振る。

「いえいえ、麗様の腕前が素晴らしゅうて、まだ耳に残っとります」

「また、気分が乗った時でも、お聞かせください」


麗は苦笑い。

「拙い演奏ですし、予定も立て込んでいて」


美幸は、自分の手帳を見る。

「お昼の後、石材屋さんがお見えになります、鈴村様のお墓に置かれる地蔵様の件」

「その後は、不動産の麻友様が、跡地に建てる研修施設兼宿泊所の件」

「高輪の家至近のマンション購入の話もあるようです」

「夜に政治家候補者様たちとの、二回目の面談」


麗は、承知しているので頷くのみ。

少しパソコンを開いてメールチェック、特に見るべきメールが無いので、そのまま昼食のため、食堂に入った。


五月が話しかけて来た。

「ほぼ、今日中に面談は片付くと思うよ」


麗は、「はい」と答え、食事を続ける。


茜も声をかけて来た。

「明日は、ゆっくりしたらどう?」

「あえて言えば、麗ちゃんのお披露目会の話やけど」

「麗ちゃん自身が計画するわけやない、麗ちゃんが主賓や」


麗は、自分のお披露目会なので、それについては、あえてコメントはしない。

「たまには、ゆっくりします」と無難に返す。

実は、面会も外歩きも、面倒と思っている。

それよりは、ブログや源氏物語、古今和歌集の読書や勉強に取り組んでいないと、先行きが不安、そんな思いのほうが強い。


大旦那からも、声がかかった。

「気分を変えて、小人数で奈良でも行ったらどうや」

「遠くないし、我が九条、と言うよりは藤原家の氏神、春日大社もある」

「一度、顔見せをしないと、あかん」


麗は、外歩きは面倒と思っていたけれど、「奈良」と聞いて、表情を変える。

「奈良ですか・・・近鉄で行くのかな」


茜は頷く。

「そやな、特急で35分や、近いよ」

「そこから真っ直ぐに歩いて、興福寺」

「藤原家の氏寺でもあるし、阿修羅像がある」

「その先に春日大社、東大寺」


麗は少し考えて、答えた。

「行きたいことは本心」

「万葉集の勉強もしているので、春日野や三笠山を見たいなあと」


大旦那は笑顔。

「たまには、ゆっくり気分転換や」

「宮司には、わしから連絡しとく」


そうなると、麗も断れない。

「わかりました、明日は奈良に」と頷く。


茜は笑顔。

「小人数で、麗ちゃんとうち、秘書で奈良出身の葉子さんが道案内、今週のお世話係の美幸さんでどうや?」


麗は、素直に頷いている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る