第445話奈々子を財団勤務に 

翌火曜日の朝8時、麗は大旦那から連絡を受けた。

大旦那

「奈々子をいつまでも、アパートの狭い部屋に閉じ込めておくのも、また問題やということになってな」

「それは、そう思います」

大旦那

「いろいろ考えたんやけど、財団で何か仕事させたらどうかと」

「五月が気持ちを聞いたら、奈々子も喜んでおった」

「それから通勤には、花園美幸が付き添う」

「ありがとうございます、気配りいただいて」

「そうなると、香料の知識があるので、それを活かしたほうが」

大旦那

「わしからも高橋所長には言うておく、少ししたら高橋所長からも、麗に連絡させる」


その20分後に九段下の財団事務所の高橋所長から連絡が入った。

高橋所長

「麗様、大旦那のお話通りにいたします」

「今日中に、奈々子さんと花園美幸さんの、仕事の環境を整えます」

麗は、素直に感謝する。

「助かります、やはり外の空気を吸ったほうが、気も紛れるので」

「広報誌で香りのブログでも、専門家でもあるので」

高橋所長の声が明るくなる。

「はい、それは助かります」

「やはり歴史と伝統のある香料店のお方」

「事務所の他の職員も大歓迎で、期待しております」

「最初は戸惑うと思います、大きな目で見守ってください」

「私からも、重々言い渡しておきます」


高橋所長は話題を変えた。

「明日の午後は麗様も来られると、葵様から話を伺っております」

「それも職員一同が楽しみで」

「改装の話ですね、了解しています、良い計画を一緒に考えましょう」


高橋所長との話も終わり、麗が奈々子に電話しようと思っていたら、奈々子からかかって来た。

「麗様、大旦那様からのお話で・・・九段下に」

「ああ、そのほうがいい、歩いたほうが気はまぎれる」

「通勤は美幸さんも一緒で、迷わないかと」

「ああ、それから、二人の時は敬語を使わないで、気持ちが悪い」

奈々子

「あ・・・わかりました・・・ごめん、わかった」

「それはありがたいけれど・・・まず・・・久しぶりの仕事で」

「不安なの?ゆっくりでいいよ」

「高橋所長には、香りのブログと言っておいた」

奈々子

「そう言われても、イメージが・・・」

「香りの付け方の基本でどう?」

「春夏秋冬の香りとか、いろんな場面で、どの香りが適しているかとか」

奈々子

「それくらいは・・・何とか・・・」

「この前、政治家との面談で、祇園の料亭に行ったけれど、女将も仲居も全員がバラバラで濃い香りで」

「同じ人間でも、顔と着物に異なる香りをベタベタと」

「京都でも、酷いとそんな状態だよ」

奈々子は驚いたような声。

「それは・・・ほんま?祇園やろ?」

「ありえんて・・・そんな・・・」

「本来はお手本にならんとあかんのに」

「都内も酷いよ」

「電車に乗るとわかる、香りの基本がわかっていない人ばかりで、気持ちが悪くなる、だから、つけ方の基本からがいいと思う」


「それならマジにやらんと、ありがとう、うれしい」

奈々子の声は力強くなっている。

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