第444話恵理、結、宗雄の現状と、九条家の対応

麗が都内に戻った月曜日の午前に、馴染みの刑事と弁護士が、九条屋敷を訪れた。

対応するのは、大旦那と五月、三条執事長。


刑事

「イタリアのフィレンツェ警察からの連絡です」

「まず、恵理ですが、癌が悪化、意識は混濁状態」

弁護士

「恵理は九条家から籍を自ら抜いております」

「温情で住まわせていただけ、その旨も実家は重々承知しとります」

「その後に判明した兼弘様と由美様の殺害容疑、実質は実行犯なので実家でも謝りはしても文句は言えません」

「遺体搬送するかも含めて、九条家には迷惑がかからんようにと、釘を刺してあります」

三条執事長

「それでも墓に収まるまで徹底的に監視はいたします、どこにも漏れんように」


五月

「実家の黒田家での葬儀は?」

弁護士

「実家と連絡も、ほとんど無かったようで、葬儀はせず埋葬するだけとか」

「あまり騒ぎ立てると、実家でも困るのでしょう」

「根掘り葉掘り聞かれても、都合の悪い話ばかりで」


大旦那

「旧宮家と言っても、今は断絶寸前、血筋を引くのが恵理と結だけか」

「宮家の血を引く恵理の父は既に死んどる、残っているのは、その妻だけや」

弁護士

「その妻は・・・要介護で家政婦を入れて・・・ようやく生活をしとります」


大旦那

「結は、犯罪者で今は刑務所に」

「救う義理もない、わしらは被害者や」

刑事

「その結ですが、取り調べが厳しいとか、面会にも誰も来ないで落ち込み」

「刑務所で、最初は、宮家の血筋など騒いだようですが、逆に刑務所仲間にしばき上げられて、意気消沈、今はうつ病気味に、食事も満足に喉を通らんとか」

五月

「恵理の実家では、何と言っとる?」

弁護士

「引き取りたくないとか、何でも要介護の祖母を面倒とか汚らしいとか、足蹴にしたとかで」

「そんな結の性格やと、介護は無理やと」

刑事

「その前に、結はうつ病の兆候があるので、治療が先でしょう」

三条執事長

「結も、いかなる状態でも、監視は怠らんようにします」


大旦那が頷くと、刑事が対象を変えた。

「宗雄も、実は危険な状態」

「刑務所内で、つまらんことから喧嘩沙汰で、殴り倒されて、傷口から菌が入って」

「宗雄も長くないと」

弁護士

「宗雄は一人息子で、既に両親は死去」

「両親にも兄弟が無いので、天涯孤独状態」

「その両親の家と土地も、とっくに売り払っておりますので」

大旦那

「香料店の晃に聞いたら、その金も博打で無くなったらしいな」

「奈々子とは、死後離婚か?」

弁護士

「その件につきましては、対応は終わっとります」

「フィレンツェに旅立つ前に、宗雄が、酔って癇癪を起して離婚届に署名捺印したものを、奈々子さんが持っておりました」

「後は、こちらで責任を持って対応します」


大旦那

「万が一にも、京の街衆には迷惑がかからんようにな」

五月

「これ以上は、麗ちゃんも、九条家も困りとうないし」

三条執事長

「京の街衆の麗様への期待と人気は揺るぎません」

「その麗様を苦しませるような、悲しませるようなことは、どんどん処理をするべきかと」


九条屋敷では、そんな話が続いている。



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