第443話麗の気配り
可奈子の話は続く。
「この前の和菓子職人さんたちの話もありますが、お逢いしてお話をしたい、そんな評判が広がっとります」
「土日しかおられんのが寂しいとか」
「石仏調査が待ち遠しいとか」
「東京でお体壊しとらんやろか・・・とか」
可奈子は、少し笑う。
「うちもそうですが、お世話係も責任重大です」
麗は、やはり実感がない。
それに、あくまでも京都での話で、そうなれば京都での言動は、ますます慎重にするべきと思うくらい。
そんな人気など、一つのミスで、あっと言う間に崩れ去るのが、京都という社会なのだから。
「あまり、そんな話には浮かれないようにします」と言い、話題を切り替える。
麗
「少し考えていたのですが」
可奈子
「はい、何でしょう、何なりと」
麗は顔を和らげた。
「料亭が木曜は休みのはず」
「この高輪の家に、木曜の夜に、蘭とか桃香、鎌倉から来られれば美里も」
可奈子の顔がパッと輝く。
「え・・・よろしいですか?」
そしてホッとした顔。
「安心しました、もう、都内の電車がわからなくて、逢いたくても迷ってしまいそうで」
「また、子供の頃のように、みんなで集まれるなんて」
麗は少し笑う。
「料理は糸目をつけずに、食べたいものを」
「電車で来てもらって、帰りはタクシー代を渡します」
「なかなか逢える機会もないので」
可奈子は目頭をおさえる。
「泣けてきます、逢ってもいないのに」
「さっそく連絡します」
そんな話の後、夕食。
母由美のレシピにあった。ビーフシチュー、サラダ、焼き立ての白パンだった。
可奈子
「八重子先生に特訓を受けました」
「元々は八重子先生が由美さんに教えて、それを伝授されて」
麗は、味わって食べる。
「味が濃い目で、京料理とは少し違う」
「あえて、違う味にしたのかな」
可奈子
「上賀茂の家でのこと、ほんまに楽しくて」
麗
「今後は、折に触れて遊びに行きます」
「ばあ様が都内に来られたら、この家に泊まってもらいます」
可奈子
「八重子先生、喜びますよ、それは」
「新しい設備が多いから、面白がるかも」
麗
「パソコンの知識も、意外に深かったなあ」
可奈子
「ほぼ、出始めた時から、使っているとか」
「うちより詳しいと思うことがあります」
麗
「あの大きな家に一人が不安でね」
「いつかは引き取ります」
「家の管理は、私が考えて」
可奈子は、また目を潤ませる。
「もし、よろしかったら、私をお使いください」
「それもあって、九条家に、大旦那様と五月様が、気を回してくれて」
麗は、やさしい顔。
「私にとってはもちろん、九条家にとっても、京にとっても、古今・・・日本文化にとっても、大切な人、最後までしっかりと」
「可奈子さんなら、安心かな、それもみんなに安心」
食事の後は、一緒に風呂。
風呂から出て、麗は財団の式子内親王のブログを書き、一緒にベッドに入る。
「離れられん、麗ちゃん・・・麗様やけど・・・あの健気で可愛い麗ちゃんが・・・」
可奈子は、麗が愛おしくて仕方がない、思い切り麗を求め続けている。
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