第442話葵からの相談 京都本家からの連絡で麗は不安
午後の授業を終えて、葵は麗を大学近くの喫茶店に誘う。
理由は「明日の夜のジャズコンサート」と言うけれど、他にもある様子なので、麗は素直に誘いに乗る。
麗が感じた通り、ジャズコンサートの話は「場所が吉祥寺、チケットは財団から、授業終了後にご案内します」とだけ。
麗が納得すると、そのまま次の話題に入る。
「麗様、九段下の財団事務所に、一度出向いていただきたいと」
「ビルの一部を改装したいと、その旨の相談をと」
麗は、なかなか断りづらい。
以前に九段下の事務書を訪れた時は、まだ九条家の理事に正式には就いていなかった。
しかし、今は本家の次席理事として理事会にも出席している。
「わかりました、私も責任があります」
「高橋所長の顔も見たいですし」
葵は、ホッとした顔。
「明日はともかく、日程は今週で、水曜日でも?」
麗は苦笑。
「葵さんは、私の講義の予定まで把握しているから」
「うん、水曜日の午後で構いません」
「一度、九条ビル全体を見たいとも思っていましたので」
葵は、話を少し具体的にする。
「実は、昨年度からの計画です」
「大広間の改装になります」
「社会人講座ができるような、多少音楽を流しても大丈夫な防音機能を備えた会場にと」
麗は考えた。
「そうなると京都本家の理事会の議題にもなりますね」
「金額もかかるでしょうし」
「ただ、ビジネス街でもあるし、学生街でもあるので、需要はあるのかな」
「魅力のある講義なら、人も集まると思います」
葵はスマホをタップする。
「テレビ会議が使えるので、京都の麻友さんにも声をかけます」
麗が声をかける間もなかった。
葵は、「麻友さん、即参加とのこと、楽しみにしておられるとのことです」と、麗に報告。
麗は「また忙しくなるな」と思うけれど、相当のコストをかけての改装になる。
またしても気が抜けない案件の発生で、肩が張るような感じ。
そんな麗に、葵が含み笑い。
「麗様、明日の吉祥寺のコンサート」
「ご夕食は香苗さんと桃香さんのお店で?」
麗は思い切り首を横に振る。
「いや、普通の店で軽食に」
そんな話を終えて、麗は葵と別れて下校、高輪の家に帰った。
今週のお世話係の可奈子に鞄を預け、「葵との話」を報告。
「わかりました、麗様の明日のご予定は、葵様とご一緒」
「明後日の午後は、九段下の財団事務所に」
可奈子は、しっかりとメモ。
その後、可奈子から京都本家からの連絡を聞く。
「葉子さんからも連絡があった通りになります」
「新幹線で娘が騒動を起こした家元が、大旦那に謝りに来たとのこと」
「大旦那も厳しくお叱りで」
「その後、内緒で葉子さんにも泣きついたとか」
麗
「うん、面倒な親子だね、ここに来ても応対する気はないかな」
可奈子
「こんな話は、京では広まるのが早くて、家元から離れてしまうお弟子さんも多くなるでしょう」
「他にも細かな騒動があって、みんな嫌がっていたとか、あの家元と娘を」
「つまり鼻つまみ者です」
「テレビに出れば、詫び寂びとか、偉そうなことを言うけれど」
「実際は金欲と名誉欲にまみれた家元と、甘やかされるばかり、威張りたいばかりの娘」
そこまで話が進んで麗は不安。
「京都でも、マスコミがあって・・・万が一」
可奈子は、笑顔で、首を横に振る。
「それは、心配いりません」
「麗様の評判は、また高まっとります」
ただ、麗には、その実感が、まるでない。
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