第434話麗の他所から見た「京都論」、大旦那の熱弁

「それと・・・」

麗は、厳しい表情になった。

その表情に、大広間に集まった全員の視線が集まる。


「京都だけ、得になればいい、そんな考えは危険と思うのです」

「つまり、畿内とか、他の日本各地のことなど、どうでも構わない、そんな考えは持たないほうがいい」

「そんなことを進めれば、反感を買い、イメージダウンするばかり」

「具体的に言えば、京都に予算や人が集中すれば、他所はどう思うのか」

「予算の分捕り合戦ではなくて、最低でも畿内の調和を保った上で、配分を目指すべきかと」


五月が、麗の言葉に反応した。

「京都に通勤通学する人も多いし、また京都から畿内に通勤通学する人も多い」

「一体の経済圏、生活圏と考えて、調和を図る、そんなことやろか」


総務省の現役官僚が、麗の顔を眩しそうに見る。

「本当に、麗様の言う通りです」

「お若いのに、よくわかっておられる」

「私も、毎日、そんなことを、日本各地の先生方から言われて、気苦労も仕事の苦労も絶えません」

「自らの狭い選挙区には感心があるけれど、他の選挙区はどうでもいいとか」

「酷いのは、同じ県であっても、隣の選挙区であっても、困っていても知らんぷりとか」

「県連の会長を狙い合うのか、同じ党で、同じ県で、足の引っ張り合いまで、あるのです」


麗は、頷いて、続けた。

「今は、都内の大学生であることは、皆様ご存知のこと」

再び、全員の視線が、麗に集まる。


「私が、京都の大学生であれば、九条の後継で、ある程度、注目されるかもしれない」

「しかし、都内では、黙っていることもあるけれど、九条の後継と言ったところで、反応は相当低い」

「ある程度、そういう格式とか伝統に興味がある人なら、反応があると思う」

「意外かもしれないけれど、東京人から見れば、京都は寺社の多い、観光都市の位置づけ」

「つまり、京都の評価は高いけれど、京都人が思っているほど、京都人は、全国的には高い尊敬を受けてはいないのが現実」

「単に寺社の多い、観光客の多い、古都に住んでいる人、そんな感じ」

「だからと言って、具体的に、何がどうとかは、全くない」


この麗の言葉に、大旦那が反応した。

「わしも、そう思う」

「京都人は、歴史と伝統に、胡坐をかき過ぎや」

「確かに、最高の歴史と伝統がある、しかし、それに奢っとる」

「せっかく観光に来た日本の、世界の人を、小馬鹿にしたような態度」

「京都宇治産のシールを貼って、中身は、どこで作ったか、わからん茶をいれる、それを高値で売りつけ、得意顔」

「料亭に入れば、高飛車で、地元客、馴染みばかりを優先や」

「そもそも京都人が偉い、そんなことではないんや」

「京都の歴史と伝統に、至上の価値があるんや、それを何もわかっとらん」

「はるばる京都に来られた人を小馬鹿にするのが、京都の伝統か?」

「それが、おもてなしの心を大切にする、京文化なのか?」

「そんなんで、よく日本文化の基本と言えたもんや」


大旦那は政治家候補者全員の顔を見た。

「今まで、京都出身の政治家で、国政で、京都と言うだけで評価された人は、おらん」

「つまり、国政では、本物の実力が無いと、あかんのや」


熱が入ってしまった大旦那を麗が止めた。

「厳し過ぎる話になりました」

「ただ、そういう視点があるのも、お忘れなく」

「京都の中だけにいると、わからないと思うので、あえてお話させてもらいました」


学園推薦の女性教授も、頷く。

「学者の世界でも、京都出身と言うだけでは、通用しません」

「ああ、いい所にお住まいですね、それだけです」


不動産推薦の弁護士は腕を組む。

「理由の薄い特権意識は、通用しない、法律家としても当たり前」

「やはり納得のできる根拠と、説得力が欠かせない」


銀行の元支店長も続く。

「たまには、このような厳しい話も、勉強になります」

「国政に出るのですから、やはり国全体から見た京都を考えなければならない」

そして、麗の顔を見る。

「ますます、麗様とお話をしたくなりました」


他の候補者も同じく、麗を見つめている。

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