第433話議員候補者も、ワンチームに 麗の提案

麗は、心を懸命に静めて語りはじめた。

「まだ若く未熟な、18歳の選挙権を得たばかりの意見とお聞きください」

4人の候補者も、料亭で現役政治家相手の麗の言葉を知っているらしい、真剣な顔になる。


「京都は、古く尊い歴史を持つ文化都市であり、観光都市」

「日本各地、世界各地から、その歴史、文化に憧れ、人が来ます」

「観光客数は年間5千万人を越え、観光消費額も1兆円を超えたとか」

「北米の有力旅行雑誌の読者アンケートで、8年連続ベスト10入りとか」

「そのような状態の中、地域生活者、京都に通勤通学する人にも、快適であらねばならない」

「かなりな難事と思います、どちらが崩れても、良いことはない」

「ここにおられる候補者の方々の発言にもあった通り、観光客と市民生活の健全な関係は必然」

「ついては、もう少し、その具体策を、お聞きしたいと、思います」


ただ、候補者4人からは、すぐに「具体策」が出て来ない。

腕を組んで考え込む人、頭を抱える人、鞄からタブレットを持ち出し調べ始める人、ノートを持ち出して言いたいことを整理し始める人、様々になる。


麗は、そんな4人に声をかける。

「具体策が無いようで、難問なのだと思います」

「今すぐには無理かなと」

「しかし、具体策がないと、言葉で言うだけでは何も変わらない」

「むしろ、悪化する可能性のほうが高い」

「それに、具体策がないと、投票する人も、モヤモヤした中での投票になるのでは」


麗は、続けた。

「本日、ここに来られた4人の方、それぞれに国政に出るお力があると思われ、関係筋から推薦された」

「その国政に出る順番は、未定ですが」

「九条家も、関係筋からのご推薦でもあるので、見捨てるようなことは、しません」


その麗の言葉で、4人の候補者は、顔を見合わせて、一様に安堵の顔。

また、会場全体の雰囲気もやわらぐ。


麗は、続けた。

「意外な提案と思うかもしれません」

「ここにおられる4人の方々で、具体策の検討チームを作るとか」

「実際に、京都の街を歩いて、実状を見て回るとか」

「総務省で地方自治を担当されているお方」

「女性の立場で、京都の発展を考えられるお方」

「法律に詳しいお方」

「金融部門で、地域に明るい銀行のお方」

「一つのチームになれば、具体策ができるのも早く、より良いものになるのでは」


麗は、驚いて互いに顔を見合わせる4人の候補者に、付け加える。

「もちろん、大きな意味での、ワンチーム、横一線で、九条家も皆様を支えます」


黙って麗の話を聴いていた大旦那が、満足そうな顔。

「つまり、4人が競い合うんやない」

「連携して、協力し合って、より良い具体策を作って、国政に出る」

「足の引っ張り合いもない」

「どうせ、選挙は順々に来る」

「順番に当選もある、九条家が後援すれば」

「そんなに時期も離れん」

「その中で、九条家が後援する候補者が、バラバラの政策を言っても、意味が無い」

「それも、麗は、言いたいんやと思う」


最初は不安な顔をしていた4人の候補者たちが、顔を見合わせて笑顔に変わった。

総務省の現役官僚

「では早速、打ち合わせを」

学園の女性教授

「はい、ワンチームです」

不動産から推薦された弁護士

「わからないことは、バリバリ調べます、面白いチームです」

銀行の元支店長

「早速時間を作って、京都を回りましょう」


麗は、一定の方向性が出たので、肩の荷をおろす。

ようやくお茶を飲んでいると、総務省の現役官僚から、声がかかった。

「一度、我々と、じっくりお話を」


他の候補者も頷くので、麗は「そうですね」と、答えるしかない。

ただ、ひと言付け加える。

「学業もあって、いろいろ書き物も、依頼がたまっていまして」


茜は、苦笑い、麗の肩を揉んでいる。

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