第430話政治家候補者との面談を前に 麗は考えを述べる

九条屋敷に戻った麗は、リビングにて、大旦那、五月、茜、そして三条執事長を交えて、政治家候補者面談前の打ち合わせ。


大旦那

「竹田議員には重々引導を渡した」

「後援はしない、出たかったら自分の金と力でと」

五月

「まあ、無理やろうと思います」

「浜村秘書が使い込んだ金の支払いが先で、それも歓楽街の飲み食い」

「候補者は、財団と学園、銀行、不動産から一人ずつ推薦、その中からですね」

大旦那

「参議院やから、それも考えんとな」

「どっちにしろ、初回当選で、国会に行っても丁稚の小僧や」

三条執事長

「今回の候補者になれなくとも、次回の衆議院や首長選挙にも順番に出られるようにと連絡をしてあります、現職の総入れ替えの話もしました」

五月

「それぞれに、今の仕事の都合や、知名度も異なる」

大旦那

「女性候補であっても、ただの客寄せではあかんな、しっかりと見識がないと」


そんな話が進む中、麗は黙っている。

いかに九条後継であっても、京都に在住した期間が実に短い。

それを考えると、資料を見たとしても、面識がない人への、論評は控えるのが当然と思う。

また、選挙の世界そのものが、麗には初めて。

それもあり、とても口を挟む考えがない。


それでも黙っている麗が気になったのか、五月が声をかけて来た。

「麗ちゃんも、何か考えがあると違う?」

「聴いてみたいな、若い人の意見を」


すると大旦那も麗の顔を見る。

「ああ、何でも構わん、言うてみい」


茜も、三条執事長も見て来るものだから、麗は仕方がない。

自分の考えを言うことにした。

「実際、居住している、とまでは言えないのは、わかってくれていると思います」

「その立場での、意見とわかって欲しい」


全員が頷くので、話を続ける。

「例えば、見識がある・・・と言っても、何の見識なのか」

「行政的な経験があり、その見識を持つ人か」

「あるいは学識か」

「それ以前の問題として、政治の、政治家の役割とは何か」

「例えば、京都にどんな問題があるのかを、どこまで理解していて、国会の中でそれをアピールして、問題解決につなげるのか」

「京都人から見て、日本の国内問題、国際問題を、どのように考えているのか、それについて、理論立てて、納得できる話を聴ければと」


大旦那は、満足そうに腕を組む。

「そやな、当たり前や、それを考えずに知名度やら何やらで、九条家に頼り」

「国会から帰ってくれば、政府と与党の代弁者なら、京都の役にも立たん」

「ただ、国家に出て、挙手係でしかない、単なる人数要員や」


五月と茜が、考え込む中、三条執事長が麗に聞く。

「麗様、その考え方は、昨日鈴村さんのお屋敷に行く時に、気がつかれたのでは?」


麗は、三条執事長に頷く。

「それも、その一つ」

「静かであるべき上賀茂の社家町を観光客が大挙して歩く」

「ゴミ問題、大声問題」

「観光も大事、寺社の経営も大事」

「しかし、その中に生活者の不自由や苦しみを、無視してはならないと」

「観光を優先するな、との考えではなくて、それを優先し過ぎると、観光資源を支える人も苦しみ、壊れていく、ひいては観光資源そのものまで悪影響、本末転倒になる」


五月が口を開く。

「そやなあ・・・とてもタレント議員では思い浮かばんことや」

「そういう見識、問題意識を、今日の夜に会う候補者が持ち合わせているのかな」


茜も続く。

「確かに、それをちゃんと話せん人は、後援できん、街衆にも申し訳がたたん」


大旦那は麗の言葉に相当満足したらしい、何度も頷いている。

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