第431話可奈子と麗

リビングでの打ち合わせを終えて、麗は一旦、自分の部屋に戻った。

今週のお世話係の可奈子も、一緒に入る。


可奈子は、頭を下げる。

「改めまして、よろしくお願いいたします」

麗は、少し笑う。

「今さら、そんなこと」

可奈子は、麗の手を握る。

「そう言われましても、昨日は八重子さんの家」

「うちは、湯女もできず、添い寝もできず」

麗は、懸命に言葉を選ぶ。

「可奈子さんは、お世話係さんの中では、珍しい幼なじみ」

「子供の頃は、可愛いお姉さんみたいな感じで」

「今、こうして会うと、またきれいになって」

ただ、思い浮かんだことを口に出している。


可奈子も、子供の頃を思い出す。

「一緒にお風呂に入って、一緒に寝た」

「麗ちゃんを、みんなで取り合って」

「まず、桃香と美里の取り合い」

「そうすると蘭ちゃんが泣きだす、私のお兄ちゃんなの、って」

「最後は、一番年上の私が、奪い取る」


麗は、恥ずかしそうな顔。

「そんな感じだった」

「途中から、何をどうしたらいいのか、わからなくなって」


可奈子も、顔を赤らめる。

「麗ちゃんの抱き心地も、好きだった」

「お肌が白くてきれいで、王子様を抱いているみたいで」


麗は、この話が続くと、本当に恥ずかしい。

「そんなことを言っても、今はこんなで」


可奈子は、そんな麗にお構いなし、しっかりと抱いて、ベッドに押し倒す。

「その可愛い麗ちゃんが、久しぶりに九条屋敷に戻った時」

「ほんまに驚いた、泣きたくなった」

「顔色悪いし、ガリガリに痩せていて」


「桃香に聞いたら、一日一食生活?」

「桃香も、泣いて怒っていたけれど」


麗は、押し倒されたまま、身体は何の抵抗もできない。

そのため、言葉で必死に反論。

「九条に戻ってから、食べられるようになった」

「それで勘弁して、可奈子ちゃん」


しかし、可奈子は、麗の言葉を聞かない。

「まだ、もらっていないから」と、麗の服を脱がせてしまい、自分も全てをさらけだす。


全てが終わり、可奈子は涙顔。


「はぁ・・・ごちそう様でした」

「美味しかった、麗ちゃん・・・いや・・・麗様」


麗は、可奈子を横抱きにする。

「まさか、可奈子ちゃんと、こうなるとは」

可奈子は、顔を真っ赤にする。

「もう・・・必死やった」

「でも、安心した、これで」


麗には意味不明。

「安心って何?」

可奈子

「みんなきれいで、ご立派な人が多いし」

「うちは・・・普通やもの」


麗は可奈子の耳に口をつける。

「可奈子ちゃんは、きれいだよ」

「子供の頃から、そう思っていた」

可奈子は、身体まで赤くする。

「毎日、可愛がってくれる?」

「一週間限定だけど」


麗は頷き、可奈子を深く抱きしめている。


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