第427話麗は祖母八重子のために、いろいろと考え、動く。
突然の音楽会も終わり、麗にとっては久しぶりの一人風呂と一人寝。
お世話係に気をつかうこともないので、実際は気楽で解放感もある。
「こんなことなら、何度でも泊まりに来るかな」と思うけれど、麗自身が対処するべき用事の多さは自覚していて、すぐに無理と結論が出る。
ただ、祖母八重子の一人住まいを考慮しなければならないと思う。
「何とか、タイミングを見て、お世話係の一人を、ここに常駐させたい」
「ばあ様は、九条屋敷には住めない、こんな立派な上賀茂の社家町を空き家にもできず、他人に住まわせることも、ためらうだろうから」
ただ一人の孫であるから、面倒を見るのは当然と考える。
「一緒に生きる時間を増やしたいし、話ももっとしたい」
「あの笑顔をもっと見たい、少しでも元気になることを考えたい」
麗は、そんなことを考えながら、その夜は熟睡。
朝になり、昨日から気になっていた庭の雑草処理をするべく、着替えていると部屋のドアにノック音。
ドアを開けると、可奈子と葉子だった。
可奈子
「おはようございます、もうお着替えを?」
麗
「はい、少しやりたいことがありまして」
葉子は、笑顔。
「お庭ですか?昨日の目線でわかりました」
麗は苦笑い。
「はい、少しは孫として」
可奈子
「それほどではないので、手伝います」
葉子
「八重子さんが起きて来る前に、片付けましょう」
そんな話をして、三人で庭に出て、雑草の処理。
少々苦労しながら、ほとんどの雑草を処理すると、祖母八重子も庭におりて来た。
「あら・・・申し訳ないわねえ・・・」
「つい、手が回らなくて」
麗は、汗を拭きながら笑顔。
「いえ、孫ですから、当たり前で」
「ここの土も触れたかったから」
またうれしそうな顔になる祖母八重子に麗。
「ねえ、ばあ様、このきれいになったところに、植えたいものがあって」
「九条屋敷に連絡すれば、すぐに持って来る」
祖母八重子は、「うん」と、麗の次の言葉を待つ。
麗
「ローズマリーを、植えたい」
「繁殖力が強いし、いろいろ使える」
「肥料もいらない、肥料すると増え過ぎて、逆に大変なことになる」
「オイルをしぼって香料にも、料理にも、お風呂にも、お肌にもいいし、湯冷めしないよ」
祖母八重子は、目を丸くする。
「考えたこともなかった・・・」
「へえ・・・ローズマリーねえ・・・」
「好きな香りや・・・それをお料理にも、お風呂にも?」
麗は、にっこり。
「また、お風呂に入りに来る」
「この家で、香料も作るかな」
祖母八重子も笑う。
「すぐに連絡して、うちも植えたい」
「その香りと繁殖力を楽しみたい」
麗は、そのままスマホで九条屋敷に連絡、笑顔で連絡の結果を伝える。
「墓参りの後、大旦那、五月さん、茜姉さまも一緒に植えたいとのこと」
「何か、大変なことになりました」
祖母八重子
「あら、ほんまに忙しゅう・・・大変なことに」
そう言いながら、その顔は、ますます輝いている。
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