第81話京都の話は避けたい麗 鎌倉等の話に移り落ち着く

麗は、何とかしてこの場を切り抜けようと思った。

万が一にも、京都との関係を感づかれては困る。

今日は、日向先生のご自宅にも出向く、そこで京都の話題にもなれば、ますます面倒なことになることは、目に見えている。


麻央

「麗君の目が泳いでいる、何かある」

佐保

「うん、その表情の変化は何?」

麻央

「実際に手に取ったことがあるんじゃない?」

佐保

「着たこともあるとか」

など、なかなか追及は厳しい。


麗は、答えに窮した。

下手に答えて、京都との関係が知られるのは困る。

そして、その不安が現実化した場合は、麗は離れたいと願う京都から、ますます離れるのが難しくなると思う。

麗は。顔を下に向けることにした。

動揺する顔を見せたくない。

何とか、ぼやかして言う。

「うーん・・・そういうことに詳しい人に見せてもらったことがありまして」


麻央は麗の顔を覗き込む。

「ねえ、麗君、言いづらいの?」

佐保は麗の手を握った。

「うん、そんな顔している」

麻央は、少し笑った。

「言いづらかったらいいよ、言える時で」

「私、麗君の先生だもの、保護するから、心配しないで」

佐保も笑う。

「大丈夫、麗君は守りたいよ、言って困ることは言わないでいい」


麗は、自分でも信じられないけれど、少し涙目になってしまった。


麻央が話題を変えた。

「小町通りも歩きたいなあ」

佐保は麗の顔を見た。

「麗君は鎌倉に行ったことあるの?」


麗は、ようやく顔をあげた。

「はい、紫陽花の時期とか、紅葉の時期に」

「北鎌倉の円覚寺から、ずっと歩きます」

「長谷寺は混むので、なかなか入れません」


麻央

「小町でよく入る店は?」

「うーん・・・頒布の店とか、和菓子屋さんでしょうか」

「新しい店が増えていますね、そういう場所はあまり入りません」

佐保が麗の脇をつつく。

「サブレーは?」

麗の反応が、スムーズになる。

「はい、僕は食べませんけれど、妹が好きなので買って帰ります」


麻央が面白そうな顔。

「へえ、麗君、妹さんがいるんだ」

佐保は、意味ありげな顔。

「麗君は、妹さんに弱いでしょ?タジタジとか」

麻央

「やさしいお兄ちゃんって感じ」

佐保

「突っ込みどころ満載の兄かなあ」


麗は、蘭の顔を思い出した。

「元気でいるのかな、あいつは我がままで泣き虫」

「サブレーを買って送ろうかな」

「でも、一人で食べて、太るかもしれない」


麗は、蘭が聞いたら、真っ赤になって怒るようなことを、考えている。


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