第66話麻央の責めは続く

「ねえ、麗君」

麻央の声は、講義中には聞けない甘い声。


「はい」

麗は、麻央の肉体の密着が強いと感じる。

柔らかさもあるので、見かけ以上に豊かな身体らしい。


「何か、肉が少ない、麗君」

「骨と筋だけ?」

甘い声のわりに、麻央の言葉は責め気味。


「そう言われましても」

麗は答えに困る。

確かに普通の人よりは栄養が足りていないとは思うけれど、麻央はあくまでも源氏の講師。

麗の肉体や健康状態を判定する立場にはないはずと思う。


麻央の唇だろうか、麗の首筋に柔らかいものが触れた。

麗は、ビクッと震える。

「先生、困ります」

麗は、必死に佐保の腕をほどこうとする。

しかし、佐保は腕の力をさらに強める。


「押し倒したくなったなあ、麗君」

「こんな肉が少ない身体だもの、簡単に」


麗は、足を踏ん張って抵抗する。

「何をするんですか?」

「講師と学生です」


麻央は、息を麗の耳に吹きかける。

麗は、腰がガクンとなる。


「何を言っているの?麗君」

「ここは大学じゃないでしょ?」

「教室でもない」


麻央の手は、麗の身体の中心に至った。

麗は、全く抵抗が出来ない。


麻央は、含み笑い。

「ただの男と女」

「それとも、何?」


麗は、頭がクラクラとしてきた。


麻央の言葉責めと身体の中心責めは続く。


「おばさんと思っていない?」

「だから避ける?」

「許さないよ、そんなの」


麗は途方に暮れた。

いつもの得意の「お断りスキル」など、この状態では全く使えそうにない。

この時点で、救いになる可能性があるのは、佐保による制止のみ。

しかし、佐保は、鍋料理の準備と言っていた。

それに佐保の準備が終わったとしても、この部屋に入って来るかどうかは、佐保の思惑しだいなので、全く当てにならない。


麗は、開き直って麻央に聞いてみることにした。

「ところで、先生は何をしたいのですか?」

出来る限りの冷静な口調、少しは麻央の激情を抑えようと思った。


麻央は、麗の問いには答えなかった。

そのまま、麗のジーンズの上から、ぐっと掴んでしまう。


「うわ!それは!」

麗が声をあげた瞬間だった。


「ガタン」

部屋のドアが開いた。


佐保が、そのまま部屋に入って来た。


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