第39話 人間と魔の闘争
その男は魔王と呼ばれていた。
詳細は、一切不明。
曰く、異世界からやってきた存在。
曰く、宇宙から訪問者。
曰く、古来の神族の生き残り。
わかっているのは、そんな噂が先行して広がるほどの圧倒的戦闘能力。
だが、彼が人間を恐怖のどん底に叩き落としたのは、戦闘能力の高さではない。
それは――――
求心力
魔王登場以前の世界では魔物はダンジョンに現れるもの(当時は、そう考えられていた)。
どんなに強くても、人の手に狩られる存在でしかなかった。
しかし、魔王はそれらを纏め上げた。
魔物の集団化。 統治。 文明化。
多種多様の魔物が支配する世界 『魔界』を成立。
人類に対して宣戦布告を行う。
恐ろべきは――――
ここまで魔王が歴史の表舞台に台頭して、僅か5年の出来事。
たった5年――――
たった5年で、数千年の英知を持つ人類に匹敵する勢力を作り上げたのだ。
それに対抗する人類の旗手 『勇者アッシュ』
勇者と魔王。 魔王と勇者。
対となる存在は激闘に激闘を重ね――――そして最終局面。
「勇者よ、世界の半分をくれてやる」
それは魔王の敗北宣言だった。
世界の半分を人類のために―――― もう半分を魔物のために――――
「断る!」
勇者アッシュの言葉が叩きつけられる。
『魔界』に攻め込まれ、首都に炎が上がり――――
それでも、どこか魔王は人間を信じていた。
今はダメでも――――きっと、いつかは―――― 人と魔が共存する世界は――――
「良いだろう、勇者アッシュ――――否! 愚者アッシュよ! ここでお前を、お前さえ倒せば、我々はまだ戦える」
魔王の足元からは魔方陣。
高まる魔力はゴーレムを召喚した。巨大なゴーレムだ。
魔王はゴーレムの肩に飛び乗り、勇者アッシュを見下ろす。
「全力で来い。これ以上、私を失望させてくれるなよ。人類!」
「魔物の分際で咆えるな。お前さえ、お前等さえいなければ!」
この後、3日間不眠不休の戦いが行われたと言う。
その戦闘の詳細は、神殿の地下深くに記録書が保存されて、一部の許可を得た者しか閲覧が許されていない。
そして、話は現在に戻る。
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