第37話 ウナギの蒲焼完成! しかし、まだ終わらず!

 さて――――




 ここから調理が始まる! 




 と勢い良く言ってみたが、ウナギをさばいた後の工程は――――




 ① タレを作る




 ② ウナギを焼く




 ③ タレをウナギに染み込ませる




 ④ もう一度、ウナギを焼きながらタレを塗る




 ⑤ 完成




 とシンプルだ。 


 何も、捻り鉢巻ハチマキを頭に巻き――――


 竹串でウナギを刺して、うちわで扇ぎながら炭火で焼くというウナギ専門店の大将みたいな本格派ストロングスタイルを真似て作るわけではない。




 タレの材料は、前に猪の生姜焼きで使った 砂糖 酒 みりんを用意する。


 もう1つ、重要な材料がある。それは――――




 醤油!




 流石に『こちら側』の世界に醤油はないのではないか?


 大豆からの自作も考えていた亮であったが……普通に市販されていた。




 (どれだけ、日本文化が浸透してるんだ? この異世界は?)




 そんな事も考えながら、鍋に火をつける。


 まずは醤油をみりんを鍋の中へ! 加熱しながら味を確かめると砂糖と酒を加えて微調整。


 微調整を繰り返しながら、自分好みの味を探しだす。


 まずは、これでタレは完成。




 次にウナギを焼く。




 しかし、問題がある。 


 このままウナギを焼くと煙が大量発生してしまうのだ。


 密閉空間のダンジョンで煙を充満させてしまうのは拙い。


 ならばと煙が少なくなるように、ごく弱火で焼く調理法を選択。




 火元に網を――――その上に油を塗り、ウナギを置く。


 このまま焼くとウナギが貼りついたり、網の跡がついてしまうので、約5分で引っくり返す。


 また5分が経過した頃に引っくり返す。 また5分……合計で3回引っくり返した。


 3回引っくり返すと、少し火から遠い位置に移動させて7分焼く。


 これは身の薄い場所が焼けすぎてしまわないようにするためだ。




 時間はあくまで目安だ。




 若干の焦げがつき始めたら、タレの中に入れて染み込ませる。


 そして、もう一度焼く(約5分)。




 最後に再びタレを染み込ませたら、軽く焼いて――――




 完成だ!




 ――――いや、完成はした。しかし、真の意味で完成はしていない。


 ウナギの蒲焼だけでは終わりではない。


 必要なのは――――




 米だ!




 亮が釣りの最中に読んでいた本を思い出してほしい。


 そう――――稲作関係の本だ。 つまり、この世界にも米は存在している。


 では、どうして亮は今まで米を使った料理を作らなかったのか? それには理由がある。




 平成5年 天候不順によって日本で米が大規模な不作に――――米不足が起きたことがある。




 その時の対処法として、海外から米の輸入。


 タイ米、カルフォニア米。タイ米と日本米を混ぜたブレンド米が食べられるようになった時期があるが……


 日本人の日本米信仰は根深く、そして、あまりにも日本人は日本米に慣れ親しんでいた。




 違和感。 




 決して、日本の米が世界で一番美味しい米と言うわけではない。


 しかし、日本以外でも、主食が米文化の国では他国の米に拒否反応を示してしまう事がある。


 つまりは、そう言う事だ。


 子供の頃から食べなれている主食の原料の変化は、如実に感じ取ってしまうものなのだ。




 亮に取って『こちら側』の米は口に合わない。




 だが、今回ばかりは――――ウナギの蒲焼に米を合わせないわけにはいかない!




 離れた場所。 


 火元の上に黒い物体から吐き出される白い蒸気。




 そう――――




 あれこそが、飯盒炊爨はんごうすいさんだ!?






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