本当に万能薬というものがあったら人間はどれ程幸せだろうか?あらゆる病は消え、不調は回復し、年齢すら延びる。まさに夢の薬……。
しかし、それは飽くまで個人の夢……。社会に行き渡り皆が恩恵を受けるとどうなるか……それを実に見事に皮肉った作品だと思います。
作品中に登場する博士は純粋な気持ちで皆の要望に応えてゆくものの、人の欲望は果てし無い。そうして辿り着く結末はまさに人間の業を体現した演出と言えます。
軽快で明るい流れがまたブラックユーモアとしての質を高めている。万民が楽しめる見事な作品です。
ショートストーリー好きは必見です。
人間にとって不老不死は夢であると言う言説がある。そして、病の克服は、今でも実際的に人類の夢であり、希望である。この物語の主人公である博士が開発した「万能薬」は、まさに人類にとって夢を現実とする薬だった。小さな病から大きな病、難病でさえも治した。
しかし、一つのクレームが入る。事故で負った怪我が治らない、という物だった。世間は博士に同情的だった。病気は治っても、怪我までは治らないくても、仕方のないことだと思ったのだ。
だが、博士はこのクレームにも対応する薬を作ったのだが……。
いかなる病院も必要がない世界。
そんな世界を、あなたは望みますか?
是非、御一読下さい。