第6話 歌、過日に萎えても

 初めて自分が歌った場所。

 ライブハウスはまだ人が疎らで先を歩くレン、ヒサシ、奥崎へと挨拶が交わされる。照明が付けられ、以前の印象より中は広い感じがした。埃臭い木製の階段を登って、照明灯のある小さなギャラリーへと荷物を置く。と、そこにはすでにジーンズと白いシャツを着たタキが荷物を片付けていた。

「タキちゃんおはよー今日も応援ありがと!」

 ヒサシの口調が大きく耳へと届く。タキはそれへと優しげに笑んで、それからヒサシの後方で立っていたレンへと手を振る。が、レンはそれに応えるわけでもなく視線を逸らして荷物を床へと乱暴に置く。

「タキ、マツ君の顔頼む」

 怒ったような口調でレンはそう言うとさっさと階段を下りていく。二人のその様子にサトルが動けずにいると、奥崎が肩を自分へと抱き寄せた。

「気にするな、いつものことだ」

「……いつも、こうなのか?何かレン先輩別人みたいなんだけど」

「……そ、いつも」

 そう言って奥崎も荷物を置くと階段の方へと歩いてゆっくりと下りていき、その後を走って付いていくヒサシはサトルへと手を振って。ギャラリーでタキと二人。サトルは荷物をゆっくりと置いてからタキへと目を向けた。

「さ、メイクしよう、こっち来て?マツ君」

「え。化粧とかするんですか」

「全然軽くね。大丈夫、レンたちのバンド、そんなに飾らないから」

「……はぁ」

「じゃあ座ってね」

 サトルは指定された場所へ座ると髪の間をタキの細い指が梳いた。少しくすぐったいような感覚でサトルは背中に悪寒に似たものを感じた。

 ――長い、指。

 正面に見えるタキの指にサトルはじっと見つめたまま。思わず、口が開いた。

「手……綺麗だって言われませんか?タキ先輩」

「あぁ。無くはないかな。バイオリン奏者だからね、俺」

「ホントですか?凄い……」

 容易に頭の中で想像がついた。サトルは感心した眼差しを鏡越しにタキへと向ける。

「……手、誉められるのは好きなんだ。ありがとね」

 嬉しそうに微笑むタキの顔。サトルは何故か恥ずかしくなって何度も頭を下げた。

「こっちへ顔向けてもらっていいかな?」

「はい」

 何かを顔に塗られる、慣れない感触にサトルは少し眉間に皺を寄せた。それでもタキの指先が少し気持ちいいような感じがしてゆっくりと目を閉じた。

「さっき、……ごめんね」

「え?」

 目を閉じたまま応えるサトルにタキは申し訳なさそうに少し俯いてから笑って。

「レンとの会話、まるで喧嘩でしょ?」

「あ、……あぁ……はい」

 挙動不審になっていた自分のせいでタキに気を遣わせた、サトルはそう思って少し目を開けた。

「なんか俺がダメみたいなんだけど、ね」

「え?なんでですか?って……すいません」

「謝らなくていいよ、あんまり謝ってばかりだと癖になっちゃうよ?マツ君」

 クスクスと柔らかく笑うタキ。でもサトルには少し寂しそうに見えた。

「……どっかから聞いたでしょ?俺とレンのこと」

「あ、ぁ……まぁ……」

 顔の筋肉が引きつる。

 サトルは都合悪そうに顔を歪めた。

「でも、それは俺にとっては正直なとこだからさ。レンが好きだよ、一番好き」

 タキの言葉にサトルは目を大きく開けた。

 多分、それまで誰かが誰かをそんなにはっきり『好き』と言う様を見たことがなかった。そういうのはドラマとかそんな世界での事だと思っていた。サトルは生唾を飲んだ。

「……まぁ、あまり普通ではないよね、男が男を好きなんてさ。それでも俺はレンへの想いは恥じないよ。恥じゃないし」

「……なんか……」

 サトルはグシャグシャと動き続けていた気持ちが止まった様な気がした。

「なんか……凄いです。タキ先輩」

 クス、と色素の薄い瞳を細めてタキは笑んで。

「ありがと」

「……いえ」

「……よし、じゃあ、ちょっと目をもう一度閉じてもらっていい?」

 タキの声にサトルは目を閉じて従った。

「あ~あ、でも言っちゃった」

「え?ホントは内緒だったんですか?」

「ううん、そういうわけじゃないんだけどね」

「???」

「キョウイチにも言ってないからさ。マツ君、キョウイチより一つ物知りになったね」

 耳へと聞こえてくるタキの落ち着いた優しげな声。サトルは気持ちが同時に落ち着いていく感覚を覚えた。


 化粧を施された自分の顔に多少違和感を感じながらサトルは階段を降りて、以前にシノブと座った席へと座った。周囲を歩く数人の人が自分へと笑顔でお辞儀をして通ることに慣れず、小さく頭を下げて何となく場をやり過ごす。ざわざわとし出して落ち着かないライブハウスに居心地の悪さを感じていた時、耳について離れない声が届いた。

「マツさん、こんばんは」

 サトルは座ったまま顔をすぐさまそちらへと上げる。自分よりも余程派手な格好のキョウイチが無表情に横に立っていた。

「あ……こんばんは」

「いよいよ今日だね。楽しみにしてたんだ、俺」

「そうか」

 あまり関わらない方がいいだろう、と横へと顔を背けた瞬間額に何かが当たった。顔を離して見上げるとそこには黒のスーツ姿に着替え終わった奥崎が無表情にサトルへと目を向けていた。

「お……オクさ……」

「控え室に行くぞ」

 キョウイチには目もくれずに奥崎はサトルの腕を掴んで無理やり立たせる。いつの間にかしんとした周囲の視線がこちらへと向けられていることにサトルは思わず俯いた。

「オク。ちょっと待って」

 キョウイチの言葉にも耳を貸さず、奥崎はサトルを引っ張ってライブハウス奥にある控え室へと歩き出す。

「……オク!全然つりあってない相手といるのがいいの?!今日だって上手くいくわけないじゃんか!!」

 キョウイチの荒い声がライブハウス全体に響く。

 キョウイチの周囲を取り巻くキャアキャアという声ばかりが耳へと届き、サトルは腕を引っ張られたまま無言でその場で睨んでくるキョウイチから目が離せずにいた。


 バン、と乱暴にドアが閉まった。


 腕を離されサトルはソファへと座らせられ、奥崎は無言のまま煙草へと火をつけた。ため息交じりに白煙を吐き出す奥崎は横目でサトルへと視線を向けた。

「……なに?」

「……いや」

 緊張の糸が部屋中に張り巡らされているような感覚。奥崎は機嫌悪そうにセットした髪を指で掻き揚げると再度、サトルへと目を向けた。

「気にするなよ」

「しないよ、さっき言っただろ?信用ないな」

「それとは話が別だ。……こっち見ろ」

「……機嫌悪いのか?オクさん」

「あぁ、悪いかもな」

「!!」

 ベロ、と唇を舐められてサトルは驚きのあまり目を見開いたまま固まった。と、同時に金属音が聞こえて右手首を見ると手錠が掛けられていた。

「オクさん!」

「やるっていっただろ」

「それは聞いてたけど……」

 困惑した表情でサトルは自分の手首にぶら下がる手錠を見つめ、奥崎を見上げると自分を真っ直ぐに見つめてくる奥崎の目に映る自分の目。無意識に瞬きを繰り返した。額に汗が吹き出る。

「さて、そろそろ出番だ。自分でちゃんとマイクスタンドに手錠掛けて、きっちり練習通りに歌ったらご褒美やる」

「……犬じゃないんだから……」

「ただし、緊張して声が小さくなった、本気出せなかった、最悪歌えなかった。……そうなったらお仕置きが待ってる」

「……はぁ?」

「マツがちゃんと歌えればご褒美、失敗したらお仕置きだと伝えてる」

「なんだよ、それ……俺聞いてない」

「前から教えてたら逃げるだろ、お前。またその足で」

 その件に関しては前科持ちな分、サトルは都合悪そうに顔を背けるも急に顔を奥崎の両手が捕らえ、瞬時にサトルの顔が熱くなった。漆黒の瞳に自分の顔が鮮明に映るほど。奥崎が近い。サトルは目もやり場もなく座ったまま奥崎の瞳に映る自分の顔を見つめた。

「……失敗したら?」

「失敗したら?聞きたいのか?」

「……一応。心構えを作っておかないと不安だろ?」

「そうか……」

 優しげに笑む奥崎の顔にサトルは心臓がドクンと同時に動いた。そっと奥崎へと引き寄せられる体。額に奥崎の唇の感触。サトルは不思議にも安堵感を覚えた。緊張していたはずなのに、奥崎の手が心地よいとすら思ったサトルはゆっくりと瞳を閉じた。


「失敗したら、素っ裸に剝いて突っ込んで女にしてやる。俺の体でな」


 安堵していた耳元で囁かれた言葉にサトルはすぐさま目を開いて奥崎から体を離した。

「……マジ冗談キツい……」

 サトルの反応を楽しむかのように奥崎が笑う。

「冗談は嫌いだからな」

 手首にかかる手錠が重く感じた瞬間だった。



 もう耳に慣れてしまった音が、

 狭いライブハウスを走り抜ける。

 眩しいくらいのライトで瞳孔が動く。

 白く煙る場に爆音、弾いて強く光る楽器。

 他には何も見えず聞こえない。

 もう温度を感じない手錠がぶら下る。


 ヒサシのドラムが脳に振動を起こして。

 挑発的に笑うレンの顔が白の光で霞んで見えた。

 奥崎の大きな背中を目で捕らえながら。


 マイクスタンドへと走る。


 ガシャン、と強い金属音が耳に付いた。


 ヒュ、と呼吸。


 瞬間。

 サトルは暗闇へと目を奪われた。





「見たー?!周囲の呆気に取られた顔!!もう最高よ~マッちゃん!!」

「上出来上出来!実はちょっと心配してたんだぜ?でもマジカッコよかった!!」

 興奮して話すレンとヒサシの会話をサトルは呆然とした顔でただ見つめた。

 正直。

 緊張のあまり覚えていない。

 前に立った浮遊感。

 目の前の暗闇。

 怒鳴りつけるようにマイクへと歌い続けて。


 あっという間の時間だった。

 体中は汗だくで、呼吸だけは未だ荒いまま。

 ライブを終えた四人は長椅子へと座っていた。

 テーブルには用意されたペットボトル。

 奥崎は立ったまま控え室から少しドアを開けて壁へと凭れかかっていた。


 目と目が、合った。


「……お疲れ、マツ」

「オ……オクさん」

「まだぼけーっとしてんのか?音に食われたな」

「……音に?」

「そ」

 そう言うと奥崎は目を細めて小さく笑った。

 手錠もいつの間にか外されてちゃんとテーブルの上へと置かれていた。

「そっか……終わったのか」

 サトルは小さく呟いてまだ朦朧とする意識に身を任せた。軽く瞳を閉じる。

「ホントありがとな、マツ君」

 レンの嬉しそうな言葉にサトルは薄く目を開けて小さく呟いた。

 ――正直、気持ちがいい。

 地に足がついてない現実離れした感覚。全身汗まみれなのに、心地よい達成感が全身を包み込んでいるようだった。

「……罰ゲームは?」

「……安心しろ、ナシだ」

「そっか……」

 ほっとしたようにサトルが安堵の笑みを零す。奥崎はサトルから目を離して、手にしていたペットボトルを一口飲んだ。見れば、奥崎も、レンも、ヒサシも額から汗が流れ出ていた。サトルは穏やかな感情に嬉しくなった。

「お疲れー!マツ!マツマツマツ!!!」

 ドアを乱暴に開いて現れたのはシノブとマコトだった。マコトは尊敬の眼差しでサトルへと駆け寄り瞬時に抱きついた。瞳を大きくして別にサトルも抵抗を示さずに小さく笑った。

「マッちゃん!!すごかったよ!!この前とまた全然違うんだもん!すごいよ!すごい!」

 完全に興奮しきっているマコトが少し可愛く見えた。

「ありがと」

 少し照れくさい、と思いながらもサトルはそう言って頭を下げた。マコトと一緒に来たシノブは奥崎と向き合って楽しげに話しているのが視界に入った。サトルは寮でのことを思い出したが、今この瞬間の盛り上がりに気持ちを任せた。


 なんか

 なんか楽しい


 サトルは荒い呼吸を愛しく思った。

「マツ聞けよ!キョウイチの奴凄い顔してライブハウスから出て行ったんだぜ?お前の完全勝利って事だ!」

「え?」

「神崎」

 ふいに奥崎が話の間に入る。シノブは奥崎へと目を向けて不思議そうに見つめ。

「他の奴らはどうだ?」

 口調は穏やかなようだ。サトルは座ったまま黙って二人の会話へと集中した。

「おお!すげえって!みんな正直呆気に取られてたな。俺からすればざまあみろな結果だぜ」

「そうか。……だとよ」

 優しげに視線を下ろしてくる奥崎。

 サトルは少し緊張した顔で頷いた。

「……そ、そっか」

「もっと自信持ちなよマッちゃん!凄いことなんだから!!」

 マコトが顔を赤くして力説してみせる。

「ホントマツは誉められることに慣れてねえんだな、慣れとくべきだぞ」

「将来のためにってヤツ?」

 シノブの言葉にサトルが笑みながら問いかけるとシノブは自信満々に頷いて、嫌味臭く笑った。

「そういえば今日はこれからどうするの?打ち上げ?」

「当たり前だろ」

 タキの問いにレンが笑顔で答える。

「そうそう、いいところがあるのよ~」

「え、どこ?」

 次々と話し出す周囲の様子をサトルは少し笑んだまま見つめて。ふと、視線を感じて上へと見上げると奥崎が自分を見つめていることに気付いた。

「……どうかした?オクさん」

「いや、……どうだ?」

「え?」

「心臓」

「あ……あぁ」

 サトルは僅かに脳裏をよぎる事さえなかった言葉に咄嗟に自分の胸元に手を当てた。早鐘のように鳴る自分の心臓。いつもは嫌な音なのに、今日は気にもならなかったなんて。

 サトルは小さく、大丈夫だ、と呟くと奥崎は少し口角を上げて頷き。

「良かったな」

 奥崎の言葉にサトルは顔が熱くなっていくのを感じた。




 汚い路上をキョウイチは速い足取りで進み、五月蝿い界隈から離れた。路地を抜けて、緑茂る公園へと入る。人の気配は、ない。

「…ち、くしょ…」

 邪魔するどころか、入る隙も与えてもらえない。

 下唇を強く噛みながら池の脇にある小さなベンチへと腰をかける。


 強烈な光と音。

 叫び出される音色。


 思い出して、キョウイチは無意識に拳を作った。

 マイクを握って叫び続けるサトルの後ろでいつもと同じくベースを鳴らす奥崎の姿は見慣れた光景のはずなのに。

 ――あんな、顔するなんて。

 キョウイチは奥崎の穏やかにボーカルを見つめる顔を奥歯で磨り潰した。あれは自分の知らない顔。見たことのない、向けられたことのない顔。

「オク……バレバレなんだけど」

 好きだと伝えて。

 頑張ったって。

 手に入らないなんてキツイ。

「……冗談じゃねえよ」

 目を大きく開いて月明かりに揺れる池を睨みつける。自分の瞳に浮かぶ涙は瞬きと同時に地へと落ちる。嗚咽を喉で殺しながらキョウイチは固く目を閉じて。溢れる涙を次々と地へと落とした。




「別にご褒美とかいいよ……」

「バカ、そんなこと俺が言える立場かよ。んなことより遅れるとオックが怒るぜ?」

「なんでオクさんが怒るんだよ……」

「それは、自分で聞けよ」

 シノブは珍しく黒の帽子を被ってサトルへも青いサングラスと帽子を渡しながら言った。

 あれから一週間。

 学校はすでに夏休みへと突入して、普段より寮にいる生徒数が減ったような気がした。

 サトルとシノブは寮の自室。

 暑い日差しが容赦なく部屋を満たす、時間は午後二時頃。

 それまでサトルは熟睡。

 学校で生徒会の仕事を終わらせてきたシノブのお前案外ぐうたらなんだな、という声で目を覚ました。


 サトルは面倒くさそうにベッドから上に着ていたTシャツを脱いで出かける支度を始めた。話によると、ご褒美を渡すから学校から少し離れた川岸へと来い。シノブは少し嬉しそうにしながらサトルの支度ができるまで待った。いつになく機嫌が良さそうなシノブの様子をサトルは不審に思いながらも準備を終わらせた。

「別にサングラスはいらないよ」

「お前つくづくバカだな、あのライブ以来学校内にもお前らのファンが急増中だっつうのに!いいから速くしろ!」

「……わかったよ……」

 ――確かに。

 あの日を境に、学校へ行って廊下を歩いても寮で食堂に居ても視線をあちこちから感じることが増えた。どこにいてもみんなが笑顔で挨拶をしてくる。そんな状態を普通に受け止める奥崎やシノブ、マコト、他のみんなの神経が知れないとさえ思っていたのに。慣れ、とはこういうものかとサトルは自分の気持ちの変化に戸惑った。

「さてと行くぞ、オックに連れて来る様に頼まれてんだからな、俺」

 面倒くさそうに話すシノブ。

 サトルはため息を小さく出して、ごめん、と一言言った。


 外へと出ると咽返るほどの熱さが辺りに充満していた。太陽の居場所は解らず、ただ白い光が容赦なく肌へと焼きつく。熱気のようにアスファルトが揺れ、シノブは項垂れた声を数回漏らした。と、横を浴衣姿の女の子が数人並んで通り過ぎる。それをサトルはじっと眺めて。

「……なんか、祭り?」

「まぁそんなトコだ。つうかあちぃ……」

 ため息混じりに話すシノブが少々哀れに思えた。

 街中を抜けて駅の構内へと立つ。

 ガランとした構内では額の汗を拭きながら電車を待つ浴衣姿の人間が数名いた。小さく聞こえてくる笑い声。サトルは隣に無言で突っ立っているシノブへと顔を向けた。

「神崎、大丈夫かよ?」

「大丈夫だ、俺はこう見えても日頃自己管理は完璧なんだ、心配はいらねえ」

「そう」

 強気な口調のシノブにサトルはこれ以上話しかけるのはやめた。

 多分、機嫌が悪い。

 サトルはシノブの背中から目を逸らして徐々に増えてゆく人々をぼんやりと眺めながら歩いた。


 ふと見上げた空。

 知った無彩色。




 校庭から吹き抜けてくる風はいつも冷たくて。

 サトルは背中から追いかけてくる風を一身に受け止めながらグランドを走り続けた。

 見慣れてしまった中学の空。

 雲は横へと流れていく。

 電線のない空を追いかけてゆく自分の息は徐々に上がり出していた。

 夏が終われば冬休みまで三者面談やら試験やら、気難しいことばかりが脳裏に浮かんだ時期。

 サトルは無心にグランドを走り続けた。

「おーいそんな頑張るなってー」

 遠くから聞こえてくる友人の陽気な声。それに応えるべく、サトルは少し笑ってそちらを向いた。

 大声で笑い声を上げるいつものメンバー。

 影に身を寄せて夏の暑さから紛れているその友人たちの場所へと差し掛かって、サトルはペースを落として。その友人たちへと歩いた。

「……松崎ぃ、もう練習やめようや。暑いし、眠いし。後輩だけ頑張ってればいいんじゃねえ?」

 寝そべって自分へと話しかけてくる鷲尾という友人は呆れたようにサトルを見つめながら話した。

「……そういう訳にもいかないだろ……それに別に俺は頑張ってなんかねえよ」

 額から流れる汗をサトルは腕で拭うとすぐ横の芝生へと腰を下ろした。それをにやついた笑みを浮かべて見つめてくる鷲尾の瞳が、嫌いだった。

「へぇ?じゃあなんで走るんだよ?みんなここで楽しく会話してんのに入ってこようともしねえ」

 鷲尾の口調が一層夏の暑さを増していってるように思えた。サトルの眉間に皺ができる。

「ただ……つまらないから、だよ」

「つまんないって?」

「こういう下らない会話が、かな……」

「……へぇー」

 鷲尾のうっすら作る笑み。

 サトルは心底嫌いな顔だった。

 人をバカにしたがっている顔。

 鷲尾の側に群がる自分の友人らもみんな似たような、顔。視線をゆっくりと逸らして空へと一直線に伸びる飛行機雲を瞳は捉えた。

「松崎、前回のマラソン、記録、ずいぶん良かったみたいじゃねえか」

「まぐれだよ」

「え~そうかぁ?」

 ――しつこい、サトルは自分の本音を奥歯で噛み殺す。

「同じ長距離選手な俺の立場っつうのがないっしょ?ねぇ?松崎君」

 そう言うと鷲尾は声高らかに笑った。

 周囲にいる連中らもつられて笑う。

「だから……まぐれだったんだよ」

 胸の内を押さえながらサトルは優しげに相手へと話した。鷲尾はふぅん、と鼻を鳴らして芝生へと寝そべった。

「鷲尾の方がでも普段タイムいいよなー」

「そうそう、走りが綺麗っていうか」

「なんつか鷲尾はさー」

「ただやらないってだけの努力知らず天才肌って奴だろ?耳たこだっつうの」

 周囲の声にゆっくりと口角を上げて。

 鷲尾が自信満々に話し出した。

「努力して頑張って頑張ってなんて性に合わねえんだよな、なんかさ、そういう奴見てると虫唾が走る」

「鷲尾だもんなぁ~すげえよやっぱ」

 友人の一人が鷲尾を絶賛する。鷲尾はそんな状況にはもう慣れていて小さく欠伸をかいてみせた。

「頑張らなきゃできないって奴はもともと向いてないってことだろ?ホント努力しなきゃできない、頑張らなきゃだめだと抜かす奴は大した奴はいねえよ」

 ちら、と鷲尾の目がサトルへと向けられるもサトルはまたその場に立つとゆっくりとした足取りでグランドへと向かった。

 背中から聞こえてくる鷲尾の声。

「あいつ、俺のことライバル視しすぎじゃね?」


 バカか

 お前が天才肌でもなんでも構わない

 なんでもいいから

 なんでも構わないから

 結果を一度でも出してから言え

 大会毎回予選落ちなくせに


 走り出した足を同時に脳裏に浮かぶ相手へと不満。


 でも

 それでも


 それでもサトルはこの場所から離れることが怖く感じていた。不満に思ったとしても自分には相手とぶつかる勇気もない。それに気付くと「面倒くさい」と粋がった言葉で自分の惨めさを消そうとして。相手の言葉に従って居る方が楽な状況だって知ってる。そんな楽な場所を捨ててまで、自分の足一人で走っていく勇気なんて、きっと持ち合わせていない。


 ただ流れる無彩色の空を視界に写して。

 それから耳を突く自分の呼吸と増していく心臓の音が鳴り続けるだけ。

 平凡だけど、どこか残酷に感じる殻の中の退屈。

 時にはそれが優しさで、居場所で。


 バカバカしい日常は繰り返す。

 平穏は中々破れてもくれない。

 世界も急にはひっくり返らない。


 続く道。

 続く呼吸。

 死ぬまで音を刻み続ける心臓。

 全ては意味を無くして。

 自分が生きてる意味さえも追いかけたくなる衝動。


 先に続く永遠の退屈にサトルは吐き気を覚えた。


 遠くに聞こえる耳に残ってしまった友人らの声。


「松崎――――」


 吐き気。

 吐き気が止まらないぐらいが丁度いいんだ。

 サトルは青い空を見上げながら込み上げた胃液を飲み込んだ。




「マツ」

 大きな声にサトルはゆっくりと横へと顔を向けた。

 眉間に皺を寄せて無表情に自分を見つめる奥崎の顔。サトルは小さく声を漏らして困ったように笑った。

「今日は一段と元気ねえな」

「……そう?」

「せっかくだ。今日は楽しめ」

 奥崎の言葉にサトルはあぁ、と返事を返すと日が翳った薄暗い空を見上げた。周囲はガヤガヤと騒音の如く人間の声が聞こえてくる。思えば、少し肌寒い。

 奥崎の手にはビール。

 自分へはウーロン茶が手渡された。

「……今日は花火大会だったんだな」

 ぼそりと話すサトルの言葉に奥崎は横でビールを煽りながらあぁ、と答えた。

 見渡す限りの人、人、人。浴衣の模様が狭い道を行き来する。煙る煙草の色。自分達の座った席から、夜店が二十店位見えた。

「ここって良い席なんだな」

 サトルはウーロン茶の封を指で開けながら周囲を見渡した。

「あぁ、ここ有料区域だからな」

「有料?嘘……幾ら?」

 サトルは横に置いておいた自分の鞄から財布へと手をかけるも奥崎がそれを制した。

「金ならコウジが払った。あいつ金持ちだから気にするな。お前に……この前の詫びだとよ」

「――……あ、あぁ」

 脳裏に浮かぶ夕日と口を塞ぐコウジの口付け。

首を締め付けてくる細く長い指。キョウイチがコウジに頼んだこと。サトルは思い出してからゆっくりと頭を下げて、そうか、と小さく苦笑いを浮かべた。

「一応、……あとからコウジさんに礼、しとく」

「必要ねえだろ」

 奥崎はいつの間にかビールを飲み干して煙草へと火を灯した。

「いや……でも」

「必要ねぇ」

 強い口調で自分へと話してくる奥崎の目が真っ直ぐサトルの顔へと向けられた。

 ――機嫌、悪いのか?

 サトルは少々怯えたような顔になりながらも奥崎の意見に納得した。

「わ……わかった」

 緊張のせいで異様に乾いた喉へとウーロン茶を流し込む。周囲のざわめきが一斉に唸った。爆発音と共に空一面に打ちあがる花火。一瞬にして光に目が奪われた。

「……やっぱいい席は見ごたえあるな」

 缶ビールを口に当てたまま奥崎が静かに話す。続けて、空を彩る花火は次々と爆発音と共に咲いては散り、サトルは口を少し開けたまま空を見上げた。暗闇に放つ極彩色の光。体へと響く爆発音はまるでライブの時のようで。サトルは嬉しそうに少しだけ笑んで、空を見つめたまま小さく息を吐いた。

 暗闇に向かって叫び続けるあの高揚感。激しく潰れそうなくらい早鐘で鳴り続いているはずの心臓の音を掻き消された。あんなに緊張していたことだったのに。凄い場所を知ってしまった、とサトルは思い返した。


 地上へと線を引いて落ちてくる花火。


「綺麗だな……」


 無意識にサトルの口から言葉が漏れた。

 周囲からは歓声。五月蝿い場所のはずなのに、高揚としてくる自分の思いにサトルは嬉しくなった。何となく横にいるはずの奥崎へと目を向ける。

「……っ」

 じっと自分へと真っ直ぐに向けられていた奥崎の瞳に気付いてサトルは慌てて顔を背けた。

「……何だ?」

「いや、……ごめん」

 眉を顰めて問う奥崎の顔がまともに見れずにサトルは意味もなく謝った。

「なんだよ?」

「ホント別になんでもない。……あ、ご褒美、ありがとな」

「礼を言うのはこっちだけどな。まぁ今日はなんでも奢りだ、気にせず楽しめよ」

「……わかった」

 なんとなく会話が成立できた、とサトルは安堵して横にいる奥崎へと目を向ける。花火に照らされた奥崎の横顔は穏やかに見えた。

「俺、やってみてよかったよ」

「?なにを?」

「……あ、ヴォーカル……」

「……そうか」

 小さく笑む奥崎の顔。つられて笑うサトルはすぐに俯いて、手に持っていたウーロン茶を見つめたまま何故か動けなくなった。


 心底、嬉しい。

 そう思った。


 自分がどう頑張っても、足掻いても。

 世界は変わらない。

 そんなことは知っていた。

 そんなことは教えられた。

 もがく分、足掻く分、

 周囲がそれを笑いながら潰しにかかる。

 それが自分の世界で。

 心臓が、その音がどうしても嫌いで。

 生きていくのが嫌いで。

 ちっぽけな思い込みだったのかもしれない。

 それでもそこからの逃げ方もわからなくて。

 勇気と呼べるものが自分にはなくて。

 全てに対して諦めても、それでも。

 生きなきゃならなくて。


「おい」

 急な奥崎の声にサトルは顔を上げた。

「ごめ……なに?」

「なんでもねえ。せっかくの花火だ、ちゃんと堪能しろ」

 優しげに笑む奥崎。

 サトルは泣きそうになった。




 花火の終了を知らせる放送が辺りへと知らされ、周囲の人間はぞろぞろと立ち上がってその場から離れ出した。

 ――そういえば。サトルはふと疑問に思ったことがあり、奥崎へと問いかける。

「……オクさん。神崎は?」

「神崎なら早々に帰っただろ。俺らのような暇人と時間の使い方が違うそうだ」

「あ、……そう」

 心配して損した、と呟いて横へと顔を傾けたその時、知った顔が見えて。サトルは横にある通路側へと視線を走らせた。サトルは少しそちらへと身を乗り出して声を張る。

「マコト!」

 呼ばれた相手はすぐさまサトルの方へと顔を向けて一瞬、いつもの笑みを浮かべた。

「マッちゃん!会えるなんて思ってなかったよ~!この人じゃん?ムリかと思ってた!」

 マコトは紺色の浴衣に手には多分夜店で獲得したのであろう金魚をぶら下げていた。が、いつもよりテンションは低いらしく、表情が固く見えた。

「誰と来てたんだよ、バンドの人たちと?」

「あ!……っと、同じ広報の渡辺君……だよ」

「え!」

 思わず大声が口から漏れたが、時既に遅し。

 マコトの隣から渡辺カズキがサトルを見下ろしている。単に多少崩して着付けられただけの筈の浴衣が、見るからに本物の極道に感じられる同級生にサトルは瞬きを忘れた。

「いや……!ごめん、同じクラスの松崎です。こんばんは、渡辺君」

「……どうも」

 機嫌が悪い、気分が悪い、どっちへも取れるような口調にサトルは困ったように笑った。すると隣に居た奥崎がいつもと同じく無表情のままサトルの横へと立ってマコトへと視線を落としてから、渡辺へと目を向けた。

「ナベ、お前らも来てたのか」

「あぁ……今から帰る」

「そうか、お疲れ」

 不良と極道の会話にサトルとマコトは黙ったままその様子を見つめていた。普通に会話をする奥崎がサトルは少し羨ましいとさえ思った。

「行くぞ」

 渡辺はマコトの手首を乱暴に掴むとぐい、と引っ張って歩き始めた。

「!じゃ……っじゃあねーマッちゃん!オクさん!」

 悲鳴にも似て聞こえるマコトの声。

 サトルはマコトが不憫に思えた。

 あっという間に人ごみへと消えたマコトと渡辺の方向を見つめたまま立ち尽くし。それから奥崎がサトルの腕を捉えた。

「帰るか」

「あ、あぁ」

 腕を引かれて前へと身体が動く。

「すごい、人だな」

 サトルは苦笑いを浮かべて奥崎の背中を見る。

「あぁ」

 それへと顔を向けずに応える奥崎。

 サトルはすっかり黒い空に残留した煙を見つけた。

 月明かりに照らされてその形をくっきりとし、風にゆったりと流されていく様。熱くなっていた体の火照りを覚ますかのように風が後方から全身に吹き付けてくる。


「おい」


 呼ばれて、サトルは慌てて奥崎へと顔を見上げた。

 腕を引いて進んだまま。

 奥崎の瞳は真っ直ぐにサトルへと向けられた。


「離れるなよ」


 目が、泳ぐ。


「迷子になられたら見つける自信がねぇ」


「……わかった」


 瞬時にして熱くなる頭。周囲が暗くてよかった、とサトルは思った。勘違いする熱を冷ますため、何度も奥崎に気付かれないように息を吐いた。脈づく手足。いつもとは違う不快感のない皮膚の表面へと響く心臓音。


 ……好き、って言葉が適切なのか。


「好き、……か」


 小さく呟く声。

 サトルは掴まれた腕に意識が集中したまま。

 混雑を抜けてから、どう自分で奥崎と対応すればいいのか。そんな事を考えたまま、歩いた。


 心臓は早鐘。

 多分、確実に動き出した自分。


 サトルは感情にどうしようもなく、弱く唇を噛み締めた。




 夏はゆっくりと過ぎて。

 学校へと吹き付ける風が少し冷えた。

 体を包み込むようだった熱気は消え、カーテンから覗く青空が少し近くなった。青に混じる雲はゆったりと流されて。

 サトルは教室の窓際からそれをただ、眺めていた。

 誰も居ない教室に校庭から生徒の笑い声が届く。

 開け放たれた窓に身を任せて、サトルは流れる雲から下のグランドへと視線を落とす。

 何人もの生徒たちがスポーツに勤しみ、笑い。

 サトルはそれを呆然と上の階から見て、それから目を伏せた。

 眠気が頭を支配する。

 毎週のライブ、練習で少々寝不足気味だった。

 音のない教室。

 静寂は、以前は不安を煽るものだったのに。

 今は自然にそれを受け止められている。

 目を伏せた向こうには。

 奥崎の顔が鮮明に浮かぶ。

 放課後になると嬉しさにも似た感覚が沸く。

 スタジオに行く足取りが速くなる。

 学校にいると、目でたまに探す。


「……疲れる」


 頭を擡げて、サトルは深くため息を付いた。


 以前なら考えられない自分の変化。


 歌を歌うことが気持ちいい。

 ライブが楽しい。

 徐々に奥崎の隣が居心地良くなっていく。

 それが当たり前になるのが。

 怖い、という考えが脳裏を掠めた。

 無くなってしまったら、辛いだろう。

 離れてしまったら、自分はきっと戻り方さえ知らない。

 幸せの後は、次の不幸が恐ろしいとさえ感じてしまう。

 こうやってひとりでいる時間にも慣れなくてはダメだ、サトルはそう思いながら秋空を見つめた。


「相変わらずシケてんな~カリスマ」

 嫌味口調で自分へと後方から話しかけてくる声。シノブがいつもと変わらず嫌味のような笑みを浮かべて、こちらへと歩いてきた。

「窓開けてんのか?寒くね?」

 嫌そうに眉間に深い堀を作りながら窓枠へと手を掛けて相手の返答を待たず、窓を閉め、鍵までかけた。気付けば、教室の中はひんやりとした冷気を感じた。

「ごめん、寒いと思ってなかった」

 少し笑ってサトルが答えた。シノブはそれにつられて相変わらずの笑みを作って笑うとクラスメイトの机へと腰を下ろして体を伸ばした。軽く、唸る。

「また生徒会?神崎も大変だな」

「あ?俺は自分でやりたくてやってんだ。大変だとは思わねえよ」

 心配すんな、とシノブは笑って、長い指で黒髪を後方へと流した。襟足まで伸びた黒髪を見てサトルは右手をシノブへと伸ばして髪へと触れる。

「つうか、髪伸びたな。切らないのか?」

「あぁ……いや少し伸ばすかと思ってな」

「そうか、うん、似合うんじゃねえの」

「だろ?俺もそう思ったんだよ、だから伸ばすの」

「そうか」

 そうだよな、とサトルはシノブの顔を見ながらそう思った。何を着せてもどんな髪型にしてもシノブは多分、似合う。冷たい印象の強い目つきも整った眉も指先も髪も全てシノブを示すもの。それは奥崎やミナミにも同様に言えることで。サトルはそう思いながらまた空へと目を向けた。

「何かずいぶん、哀愁漂ってんなお前」

「あ、ごめ……単なる寝不足だよ」

「だろうな、バンド活動も大変だろ?」

「まぁね」

 でも、充実感があった。

 今までの学校生活は単調なもので、学業が本分。部活も親に言われるがままに続けて、勉強もそこそこにやっていただけ。何の面白みもない、色のないような自分の生活。

 今は、はっきりと違うといえる。一緒に行動する仲間がいる。それを見守ってくれている少しわがままな友達だって、サトルにとってはかけがえのないもの。


 それから。

 それから。


 脳裏に浮かぶ真夏の花火と、穏やかな奥崎の顔。


 真っ白な雲の先、サトルは思いを深く感じた。


「最近さ、」

 シノブがサトルの隣へと移動して窓へと寄りかかった。

「なに?」

 サトルはシノブの顔を見上げて。

「お前なんかいいんじゃね?」

「……そう?」

「まぁ、なんつうの。俺ほど頑張ってねえだろうけど表情いいっつうか。……あー……面倒くせえな」

「なんだよ、それ」

「なんかそう思ったんだよ。俺は俺なりにお前の心配はしてるんだぜ」

「……そう」

 意外なシノブの言葉にサトルは目を丸くしてから、ゆっくり笑った。正直、らしくない、そう思った。

「神崎と同じくらい、俺は頑張ってるつもりなんだけどな」

「言ってろ、俺の苦労は並大抵のやつはできねえんだ。人の上に立つって言うのも慣れなんだよ。ここまで慣れるまでも俺は小学、中学時代から培ってきたもんだ。最近頑張り始めた奴の比にならねえ長年の努力っつうのがあるんだ」

「はいはい」

 ついにはサトルは笑って口元を手を押さえた。

「なにがおかしいんだよ」

「……まぁ神崎のやってきた人生はすごいことだらけなんだな、尊敬するって」

「わかってりゃいい。……だからお前も頑張れよ。カリスマ」

「その呼び方やめねえ?」

 秋晴れに爽快な気分。

 サトルは困ったように笑った。

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