第2話 居心地良さ・悪さ
「渡辺な」
流石総代、記憶力いいなと思いながらサトルは話を進めた。
「そ、そいつとマコトが同じ委員会らしくて」
「ふぅん、それが嫌だってことね。でも色んな奴と接してみるのも一つの社会勉強だろ。この歳から苦手だ嫌だなんて言ってたらロクな大人になれねえぜ」
シノブの意見に口元が軽く引きつった。サトルも嫌なことからは逃げ出してしまいたいタイプだ。適当に合わせて責任から逃れたい、正直本音で思っていたことで、シノブの言葉はきつく感じた。
サトルとシノブは入学式前日に一度歩いた学校から駅までの道沿いを歩いた。周囲の風は少し冷たくまだ見慣れない風景にサトルは少し物思いに耽った。
学校を取り囲んで未だ咲き乱れる桜のせいか、強引なシノブといるせいかはわからない。
ただ、ゆっくりと鳴り続ける心臓の音が少し気になった。
平穏無事な毎日はここからスタートする。
何かを食べて勉強して寝て起きて。
その繰り返しを今度は高校という舞台で始めていく。それは。
――どこまで続く?
気持ちが過るとサトルは深くため息を付いた。
「……なんだか疲れたな」
「あ?ああそりゃそうだろ。今日は球技大会だったんだしな。体動かせばそりゃ疲れる」
「……まぁね」
別にそういうことじゃないけど、と内心思ったが口にはしなかった。
横で平然と歩くシノブは総代、奥崎やマコトはバンド。みんなそれぞれ好きなことや人には負けないものを持ってる。そんな奴らと話をするようになってしまった。自分は。自分は別になんの取り柄も好きなこともなくて。ただ平穏無事なこんな光景の中で平和に過ごして、なんの問題もなければ楽しいことも見つけられない。本当に自分のことがどうでもいいようなモノに感じてきそうだった。
――それでも力強く心臓はサトルの耳元に響くのに。
「お、コロッケ売ってる。ちょっと待ってろ」
シノブは商店街に並ぶ少し古びた店頭に売っているコロッケを買いに自分から離れた。自分よりも長身、やっぱりどこにいても目をひくようなそんな同級生と一緒に今同じ時を過ごしている。きっと、こんなくだらないことも考えないんだろうな。そう思い、サトルは汚れたアスファルトへと目線を落として少し笑った。
シノブの指差した先。
恐らく『BLACKBLUE』と描かれた看板は割れて、寂れていた。その入り口付近に数人が談笑しているようだった。それはマコトが着ていたような服装の人たちでサトルの目からは少し怖いように映った。汚らしい車庫の入り口のような場所はひんやりとしてコンクリートを打ちつけた壁には蜘蛛の巣が揺れる。
「おーいこっちだ」
のんびりとしたシノブの声に顔を上げてサトルは後を付いて行った。いつもながらにシノブは堂々としたまま先へと進み、暗がりの通路を通り、現れた金属製の重い扉を開けると急に中から爆音が耳についた。
「入るぞー」
多分、こういう場所に慣れてるんだろうな、サトルはシノブを観察するような目で見つめた。シノブの後を付いて行くと更に視界が暗くなり、開かれた扉からは嗅ぎ慣れない匂いと雰囲気が漂う。赤い照明に照らされた白い煙はゆるりと周囲に蔓延していた。入り口入ってすぐ右側には上へ上がる階段。その階段もあまりの暗さでよく見えない程。そして真正面にはステージ。その反対後方では数人が機材で曲をかけて盛り上がっている。
始めて来る見慣れない場所、大きな音。
サトルはまた落ち着かず周囲を何度も見渡した。
「おーい!オック!」
爆音を消し去るかのようなシノブの大声に一番驚いたのはサトルだった。その声にステージとは反対側のカーテンの向こうから見慣れた人物が片手にタバコを持ったまま出てきたのが目に入った。
「タバコ……」
サトルは小さく呟いた。
「よう、きたか」
全身黒で指には学校では嵌められていなかった銀の指輪が二つ。手には決して不自然には見えない煙草がゆったりと空に煙を引く。
奥崎だ、と認識するまでに時間がかかった。
シノブはニヤ、といつもながらの嫌味な笑顔で奥崎に手を少し上げる。
「そこ座れよ」
それに応えるように低い声で奥崎はいつもながらにだるそうに答えステージ横に設置されている長椅子を指差した。シノブは長椅子へと向かいすぐさま座って隣の空いてるスペースを叩いた。それを見てサトルは命ぜられるがままに叩かれた場所へとすぐに座った。古びた長椅子の座り心地は思ったより固かった。
「どうだ?ここ」
奥崎へと顔を向けてシノブが話し出す。
「悪くねえんじゃね?分かんねえけど」
無表情な口から白い煙が吐き出された。上へと上る煙を目で追いながらサトルは緊張の解れない自分に少し焦りを感じた。
高校に入って。
自分が話をするようになったクラスメイトは不良。
うん、だろうな、と分かってはいる。ただうまくやっていく自信はない。多分緊張はそのせいだろうとサトルは焦りを顔には出さないようにして細く息を吐いた。
「奥崎、タバコ吸うんだな」
「あぁ、お前も吸うか?」
「いや、いい」
サトルの返答に奥崎は少し笑ったように見えた。
また、うまく話せない。
まだ、名前を呼ぶ事もうまく出来ない。
サトルは奥崎からすぐに目を逸らした。
そろそろ始めるぞ、と誰かの声がすると奥崎はゆっくりとステージへと向かって。サトルとシノブはそれと言って話をするわけでもなく周囲を眺めていた。
流されていた音楽が鳴り止む。
チューニングの音が数回。
それから突然。
今までの音とは比べ物にならない爆音。
それはサトルの全身へと響いた。
サトルは目を丸くして演奏をするステージ上の奥崎を見た。ベースを弾く奥崎の横顔は赤い照明のせいでよく見えない。でも、その手だけが異様にサトルの目には綺麗に映った。他のメンバーだろう人たちもたまに少し笑ったりしながら演奏を続ける。
目を、耳を、奪われる。
まさにサトルはステージから目を離せなくなっていた。初めて目の前でギターやらドラムやら演奏するのを見て時間がどれくらい経ったのかよくわからなくなった。腕時計を暗がりの中必死に見つめてようやく針の刺す時刻が見えた。結構な時間が過ぎていたことにも驚いたのと同時に鳴っていた音が止んで、周囲がまた談笑やら曲をかける等で騒がしくなった。
何故かいつまで経っても馴染む事ができない。
できたらもうそろそろ帰りたい。
そうシノブに、本音をぶつけることができなかった。
「なぁー、あれ今日はダメなのかよ」
「またか、お前本当に好きだな」
呆れた奥崎の声にシノブが嫌味な笑みで返す。サトルは場の状況が飲み込めずただ黙って隣にいるシノブを見つめた。奥崎のバンドのメンバーが気さくに笑ってシノブへと手招きしている。サトルは不安に思いつつシノブへと声をかけた。
「神崎」
「ん?あぁ、タダでカラオケ!お前も一緒に歌おう」
「は?!」
「は、じゃねえよ。マジ生演奏で歌ってみろって。めちゃくちゃ気分いいから」
強引に腕を捕まれ席を立つ。
まただ。
またシノブの強引なところ。
そういうのは大嫌いだ。
サトルは苦笑いをする余裕すらなく、重い足を引きずられながら本気で思った。
「なぁ、マジで無理だって!」
「無理ねえって。お前人前に立つのとか慣れてる方がいいぜ?そうやって目立たない精神だといざって時に絶対困るから」
そのシノブの理屈も今や嫌悪する程にサトルは相手に聞こえるように大きくため息をつきながら反論した。
「そういう意味とかじゃなくてさ!いや、俺カラオケとかも行ったことねえし絶対無理。苦手なんだよ」
「絶対無理なんざ頑張ってから言え。カラオケ行ったことねえとかあんの?ならここで初体験だな」
「いや初、って……お前」
「大丈夫、俺も一緒じゃんか。それにお前こんなところで初体験だぜ?」
なんでこうも強引な奴なんだ、とサトルは思いながらも引きずられ、嫌味な笑みを浮かべたシノブにとうとう逆らうことができずステージの上に立った。
ステージは思ったより高さがあって、客席は逆に暗く感じた。サトルは隣で嬉しそうにマイクを手にするシノブを見て深く落ち込むも後方でベースを抱える奥崎と目が合った。少し笑ってサトルへと何度か頷く奥崎の様子。助けてくれる気はないらしい、とサトルは思い嫌そうな顔をしながら手渡されたマイクを慣れない感じで一応握った。
「ほら、あれくらいは知ってるだろ?」
シノブが上げたアーティストの名前はサトルも普通に知っているメジャーなバンドだった。
「……まぁ」
明るく話しかけてくるシノブに気が遣える状態じゃない。サトルは目を合わせずゆっくりと頷いた。
「よーしオック、いつものでOKだ」
サトルの様子など気にもしないシノブの陽気な声と同時に自分らの後ろにいるバンドの演奏が始まった。
黄色の照明がまた真っ赤に変貌する。
体に響くベースの重低音が少しくすぐったいような気がしてサトルは何度か後方へと目を向けた。あちこちから聞こえてくる色んな音にサトルは何度も目を見開いたが隣にいるシノブは上機嫌で笑っている。聞いたことのあるフレーズになんとなく曲名とリズムが分かってきた。
「マツ!ちゃんと歌えよ!!」
そう楽しそうにシノブは手にしたマイクを持って歌い始めた。歌い慣れしてるのか、普通に聞いて上手いとサトルは思った。マイクを持つ手が徐々に汗ばみ始め、サトルは隣で熱唱するシノブへと少し笑いながら手をTシャツに擦り付けた。
突然。
背中に人の気配を感じ振り向くと奥崎が演奏してる状態でサトルの顔を見て笑っている。
奥崎の口元が微かに動いていて、サトルは眉を顰めてじっと口の動きを見つめた。何度も同じように動かされる口元。渋い顔つきから徐々に都合悪そうな苦笑いを浮かべたサトルを見て、唇の動きが読めないと判断した奥崎は演奏しながらゆっくりサトルの耳へと自分の口を近づけていった。急に近づく奥崎の行動にサトルは挙動不審になったまま動けずにいた。
呼吸と共に耳へと流れる微かな低い声。
「歌えよ、マツ」
言われたと同時に何故か右腕に鳥肌が立った。なのに、顔がものすごく熱くなって、サトルはゆっくりと横で演奏する奥崎へと顔を向けた。
目を細めて笑っている奥崎の顔。
サトルは小さく口を開くもすぐに顔を背けて手に握っていたマイクへと目を向けた。もしここで歌わないですませたら、多分あとから面倒くさいことになる。
せっかく演奏してやったのに、とか。
せっかく連れてきてやったのに、とか。
仕方ない。
恥ずかしいのは今だけだ。
別に顔が見えるわけじゃない。
覚えてる曲を口にすればいい。
そうすれば大丈夫だ。
問題にはならない。
サトルはそう自分に言い聞かせて、
マイクを徐々に自分へと近づけて。
半分ヤケクソ状態で息を吸った。
心臓はもう、爆音に掻き消された。
体がひどくべたついていて気持ちが悪い。サトルは寮に帰ってきて早々、部屋に戻ると着ていたTシャツを脱いで新しい服へと着替えた。顔から火が出る程久しぶりに恥ずかしい目にあったな、と思い深くため息をつきながら床へと座った。ひんやりしたフローリング床が気持ちいい。未だに震えるマイクを握っていた手を見つめて、サトルは本当に自分の器の小ささに呆れた。
「たかが、カラオケって……全然カラオケじゃなかった」
頭を抱えてしゃがんだまま目を閉じる。
シノブはまだライブハウス。あまりの恥ずかしさにサトルはついに適当に理由を話して先に寮へと戻ってきたが多分、不自然だったろう。帰り際のみんなの様子が余所余所しく感じたせいか。
――やっぱり行かなきゃよかった。
できるだけシノブには嫌なことは嫌だと言うようにしないと学校生活大変になる。そんなことを思いながらサトルは窓へと目を向けた。
窓から見える月には濁った白い雲がかかって。
サトルは呆然とそれを見つめた。
入学してからまだ一週間も経ってないのにひどく疲れる。でも。多分違うんだろう。――以前の疲れとは違う。
冷えた床にしゃがみながらサトルはゆっくりと手を自分の胸元へと置いた。
均等にゆっくりと鳴り続ける心臓の音。
さっきまでの高鳴りが嘘のような。
不満が募るようなそんな気分にさせられるこの音。
好きな事はないが、嫌いなものは分かる。
どうしても心臓の音が不安で、嫌いだ。
「おい」
「うわっ!!」
「ああ、悪い」
ふとした声に顔を上げると奥崎がサトルのすぐ傍でしゃがんでいて。無表情な奥崎の返答に変に焦りを見せた自分が恥ずかしくなってサトルはすぐ横へと顔を向けた。どうやら床へと座り込んだまま寝入ってしまっていたらしい。
「いや…………いいよ」
振り絞るように声を口から出してからまた悩み出した。――話題。二人になったのは初めてだ。なにか喋らないと。
「お前」
急に飛び込んできた奥崎の声にサトルは生唾を飲んだ。
「……えっと、ごめん……俺どうやらあれから帰ってきて、寝てて……」
「あぁ、疲れてんだろ。……それはいいんだけどな」
口を付いて言う言葉と思考が全然一緒にならない。心にもない言葉を言っている感覚。サトルは平常心を取り戻せずにいた。
「あの……何かあったのか?」
「あぁ」
「……何?」
「バンド……とか興味あるか」
「……バンド?」
「そ」
「興味は……ない」
素直にそう返答した。それこそさっき大恥をかいたと思ったばかりのことだ。
「あ、でも見に行くのは行きたいかな。本当にみんな演奏上手で……」
「そうか」
サトルの返答に奥崎はそのまま沈黙した。
サトルは長い沈黙に耐えかねて首を傾げた。
なんだか、意味がわからない。
続く沈黙をようやく奥崎の声が破った。
「お前さ」
サトルは思わず生唾を飲み込んだ。
「うちのバンドのボーカルをやれ」
「…………は」
「『は』、じゃなくて、『はい』だろ」
「…………や、ちょっと待てよ、それ」
「別にすぐ答えをくれとは言ってない。ただ俺は気が短い。一応覚えておけ」
脅し?
サトルはいきなりの話に気が混乱しそうだった。起きたら同室のシノブじゃなくて奥崎で。しかもボーカルやってみないか?ではなく、やれって命令口調だろう、とサトルは座ったまま動けずにいた。その膠着状態に突然大きな音がして振り返る。部屋のドアが豪快に開いていて、そこには着替えの終わったシノブの姿があった。
「マツー、奥崎のバンドでボーカルやってほしいんだとよ。ってただいまー」
部屋に入ってきたシノブの腕には数本の缶ジュースが抱えられていた。
「お……おかえり」
サトルはシノブへと声をかけて座っていた体勢から立とうとするも関節が酷く痛み横へとよろけた。
「いっ……!」
痛みで顔が歪むも同時に視界に人の腕が見えた。横へとよろけるサトルを抱きかかえるように奥崎の大きな腕がサトルの身を抑えた。
「そんな体勢で寝るからだ」
奥崎の言葉にサトルは何度も頭を下げながら奥崎から身をひいた。
「あ、……ご、ごめん」
「別にいい」
単調に応える奥崎を何故かまともに見ることもできずサトルは誰もいない部屋の隅へと視線を移した。自分と同じ歳なのに、体格が明らかに自分と違う。手に残った奥崎の感触がじんわりと熱を放ってるような気がした。
「お前しゃがんだまんま寝るなよ。姿勢悪くするぞ」
能天気な口調でシノブはそう言いながらテーブルへと缶ジュースを置いてサトル、奥崎へと一本ずつ渡した。サトルはそれを受け取ると半ば呆然としながら自分の勉強机の方へと移動して椅子へと腰掛けた。背中には汗びっしょりだ。
「神崎帰ってきてたんだな。悪かった。帰ってきたの気づかなかった」
「お前爆睡してたからな、うるさくしたら悪いと思ってさ」
「そっか……」
案外優しいところもあるんだなと思いながらサトルは渡された缶ジュースを開けた。奥崎も床へと胡坐をかいて座り缶を開ける。微かにコーヒーの匂いがした。
「それで?どうすんだよ、マツ」
シノブの声にサトルは缶から口を離し眉間に皺を寄せて意味もないのに少し笑って見せた。
「いやどうって……なんでって、感じだし……」
「奥崎はお前のこと気に入ったみたいだけどな」
「…………」
サトルはシノブの言葉に暫し黙ってからゆっくりと奥崎へと視線を向ける。すると奥崎は少しサトルの視線から目を逸らして。
「まぁそんなとこだ」
無表情にそう答えた。
「……はぁ……」
小さく呟いてからサトルは咳払いをした。
「お前の声聞いていい声だと思った。それに練習すれば多分もっと良くなる」
口調は変わらず奥崎がサトルへと話すとサトルは困ったような顔をしながらシノブへと視線を向ける。シノブも奥崎の意見に同調の意を表して首を縦に振り。
「俺もそう思ったぜ。お前叫ぶとすんごい声出すんだな。正直一緒に歌って恥かいたっつうの」
「……大げさだろ……」
とんだ場違いの大恥をかいたのはこっちだ、とサトルの口から陰険なトーンで声が漏れた。
「なんだ、マツ。俺が嘘でもついてるって言いたいのかよ」
少々サトルとシノブの間がピリピリした。
が、奥崎がため息混じりに言った言葉がそれを払拭した。
「前にボーカルはいたんだがやめた。今は代理に頼んでやってもらってる状態。ちょうど探してたとこだったし。お前だったらいいなと思った。うちのメンバー全員もそう言ってる。演奏しててこっちが興奮したって、な」
「興奮……」
サトルは言われた言葉を繰り返した。
頭がうまく動いてくれてないような気がした。
「やってやれよ、マツ」
普段より優しげなシノブの声にサトルは少し顔を上げた。
「神崎……」
「奥崎がこうやって人に頼むって滅多にないぜ?お前これで断ったら奥崎傷つくだろうな~」
「……は……?」
脅しじゃねえの?と疑問を持ちながらもサトルは奥崎へとぎこちなく目を向けた。すると奥崎はまっすぐにサトルへと目を向け、黙って頷いた。
「ちょ……マジちょっと待って……」
サトルは脱力するように自分の勉強机へと顔を沈めた。脅しを含んだ誘い。しかもその内容がボーカルやれだなんてあまりの事にサトルは目眩がしそうだった。
「三日」
奥崎の声。
「三日後に返事くれ。期待して待ってる」
「オックなんか優しくね?三日も待ってやるのかよ」
嫌なシノブの笑い声が耳に付く。
猶予は三日。
心臓が苦しく感じた。
中学校の時の音楽の通信簿は毎年、3。
やる気がありません、と評価された数字だ。
そんな俺がボーカルなんて。
サトルは寮にいても学校にいても落ち着かない数日を過ごしていることに気付いた。放課後のHRも終わり、みんなそれぞれ部活の見学やら委員会やらに忙しそうに教室から出て行った。教室にはいつの間にかサトルを含んだ数名のみが残っていた。もうすでにシノブも奥崎の姿もない。黒板に書かれた日付を見てサトルは椅子に座ったまま机に寝そべった。
『3日』
そう言われたはずなのに、もうあれから一週間ほど経っていた。それでも、奥崎は何も言ってくる訳でも態度が変わったわけでもない。いつもと変わらぬ状態、サトルはそれに甘えて答えを言いそびれてしまった。これ以上話にならないなら、このままなかったことにできるかもしれない。
でも、どこかで罪悪感が過る。
サトルは暫くその体勢のまま呆けた。
「おい!マツ!!!!」
教室のドアが開くと同時にシノブの怒声が頭に響いた。サトルは驚いて体を少しびくつかせて、急いで顔を机から離した。
「か……神崎?」
「神崎?じゃねえよ!お前ちゃんとオックに返事したのかよ!」
来た。
この話題はやっぱりナシにはならないらしい。サトルは気まずそうに首を横に振って小さな声で『ごめん』と言った。そんなことが通るほどシノブは単純ではないことも一緒にいてわかってたことだ。予想通り、シノブは眉間の皺を一層深くして、サトルの席まで靴音を異様に鳴らしながら歩いてきた。
「お前ちゃんと約束事は守れ!今日オックに聞いてびっくりしただろうが、こっちはもうとっくの昔に答え出したもんだと思っていたしよ……どうすんだ?!俺に答え言え!オックには俺から伝えておいてやるから」
「え……」
それは流石に気まずくなると感じたサトルは首を横に振った。その対応にシノブは少し顎を前へと突き出し、目を大きく開いた。
「はぁ?なんだそれ。お前あやふやにしようとしてんのか?」
気持ちの全てでそう思っていたわけではないが正直図星だと言える点だった。サトルはシノブの顔が見れないままその場に動けずにいた。教室に残っていた他の生徒たちはいつの間にか居らず、シノブとサトルの二人きり。自分へと苛立っている様子のシノブの状態にサトルは殴られるだろうとも思っていた。でもなんで殴られなきゃいけないんだと気分の悪い部分もある。サトルはゆっくりと席を立つ。それを踏ん反り返った様子で見つめるシノブの目はじっとサトルへと向けられた。
「……俺、帰る」
「はぁぁ?!」
呟いたサトルの言葉にシノブは一層サトルを睨んで体を近づけた。机がぶつかって引き摺られたような音が教室に響く。それでも、そんな態度に出られてもサトルはシノブの方へと決して目を向けず俯いたまま。シノブがサトルへと手を伸ばそうとした瞬間。
サトルは全速力で教室の後ろドアから廊下へと出た。
「わっ!!!マジかよ!!こら!待てっ!マツーーーッ!!!」
シノブの罵声を背中で聞きながらサトルは教室から上へと階段をスピードを落とさないまま走ってあがった。首筋や腕にはうっすらと汗が出始め、呼吸が喉を乾燥させる。無我夢中でシノブから逃げて、サトルは一番上の扉へと手をかけた。
銅版でできているのか、その戸は重く。
ゆっくりと開かれたそこに現れたのは赤い空だった。
「……ここ……屋上解禁なのか……」
サトルは少し切れた息を整えながら初めて来た場所を見回した。鉄柵で囲まれた屋上は思ったより狭く、緩く肌を滑る風に目を細めた。
沈黙した自分の周囲。
時折聞こえてくる自動車の音。
鳥。
雲の流れ。
それを邪魔する自分の、早鐘のような心臓音。
サトルは頑丈なドアを閉めその場に座り込んだ。
――すぐには寮には帰れない。
寮に帰るより今は校内から早くシノブがいなくなる事の方が問題で、サトルは寮に入った事を初めて後悔した。
喧嘩を同級生とする。
嫌な目眩で目の前がぼんやりとする。
どうしていいかなんてわからないし。
殴りたくないし殴られたくない。
だから、逃げた。
「次、神崎に会ったら殺されるな」
サトルは頭を掻きながら情けなく笑った。
「なんで?」
恐ろしくなってサトルは座った状態のままドアへと後ずさった。どこから声がしてるのかがわからない。でもこの声は知ってる。
ふと、大きな雲が太陽を遮ったかと思った。
ダン、と地に足が着地する音。
自分の目の前に急に空から現れたのは、今最も会いたくない相手だった。
「お……オク、ザキ……」
「よぅ、神崎と喧嘩でもしたのか」
「あ……まぁ……」
「ふぅん」
そう言って、奥崎は屋上を一周見回すとサトルの隣へとしゃがみこんでポケットからライターと煙草を物怖じする様子もなく取り出す。
「ここは滅多に先生らも来ない。安心しろ」
煙草へと火をつける慣れた手つきを目で追いながらサトルは無言で一度頷いた。別に何を責められるわけでもなく口からゆっくりと煙を吐き出す奥崎の横顔を横目で確認して、サトルは耳に付く心臓の音に少し目を伏せた。タイミングが悪すぎる。茜色に染まる空をふと見上げて、深く深呼吸した。
「どうした」
「……あ、いや……」
「……まあ、どうしたもこうしたもねえか」
「…………悪い。なんて言えば良いかよく分からなくて」
「ふぅん」
「あの……」
言わなければ。
今がある意味チャンスだ、とサトルは思った。会いたくなくてもどうせ会う。これから三年間、同じ学校でやっていかなきゃならない。相手を傷つけたとしても、きちんといい関係を保っていくように後からでもできるだろう。それに自分はこういうことから逃げるのは、苦手ではないはずだ。
サトルは座り直してから、顔を奥崎の方へと向けた。
「悪い……やっぱり俺には無理だ。声をかけてくれたのは嬉しかったけど、俺には無理だと思う。そんな目立つような……事、したこともねえし」
「ねえだろうな」
奥崎の返答に言葉が詰まった。サトルはまた俯きがちになりながら奥崎から視線を離した。
「……だから、悪い。ごめん……」
「…………」
ひゅ、と強い風が吹き付けたと同時に顔にかかってきた白い煙が自分へと充満し、サトルは少し咳き込んだ。
「ああ、悪い」
素直に謝ってきた奥崎へとサトルは首を横に振る。別に奥崎は暗くもなっていない様子だ、とサトルは少し考え込んだ。ちゃんと断ったはずなのになんで奥崎の表情は変わらないのか理解に苦しむ状況だ。それともシノブとは違ってあまり顔に感情が出ないタイプなのだろうか。サトルは左手で自分の頭を掻いた。
「……お前ってさ」
「……何?」
急に喋り出す奥崎に怯えるように身体が無意識に動揺した。
「髪の毛とか、染めたことねえのか」
「髪?」
「そ」
「……ない。……別に興味もない」
「今は?」
「今?」
「今染めたいとか思わないか」
「……別にない、かな」
「……そうか」
そう言うと奥崎は口へと煙草を運んだ。
――益々分からない。
サトルは顔を隠すようにまた髪を指先で掻いていると、急に右腕首を捕まれ奥崎へと身体が引っ張られる。
「!!」
「……お前腕細いな」
「……そ、そうか?」
「顔は……悪くねえしな」
「ちょ……ちょっとおい!顔が近い近い!」
「あ、悪い」
含んだような笑みを浮かべて奥崎がサトルの手を離す。サトルは掴まれて赤くなった手首を見つめて、それから奥崎へと目を向けた。奥崎は未だに小さく笑ってサトルを見つめてもう一度『悪い』と一言。
誘いを断ったから嫌がらせをされたかもしれない、サトルは不安げに赤く跡が残った手首を見つめてそう思った。
「なぁ」
「……今度はなんだよ」
「まぁそんな警戒すんな。単なる質問だ」
「…………」
「なんで無理だって思った。理由が聞きたい。さっき聞いたのはそれはそれで分かったから」
「……理由」
「そう。あれか?目立つのが極端に嫌だからとかか?」
「それもあるけど……」
「他になんだ」
懸命に相手が納得する理由をサトルは考えた。効率の良い、絶対にああそれじゃあ無理だなと相手も理解を示してくれる理由が必要だ。サトルは閉じていた目を思いつきと共に開いて一度頷いた。
「……まだ学校に入学して一週間経った位だろ?俺らってさ。だからそんなに仲も深いわけじゃないし、赤の他人も同様な人間と、今までした事も無い事をいきなり一緒にやるとかどう考えても無理だと思ったんだ……、まだこの先クラスで親しくやっていってホントに仲良くなれればまた気持ちは違うんだろうけど……だから」
「だから無理だと判断したわけだな」
「そう」
横で煙草をコンクリートの床で消しながら頷く奥崎を見てサトルは少し安堵した。
――なんとか、わかったくれたようだ。
奥崎は何かを考えながら何度も小さく頷いて、ゆっくりとサトルへと顔を向けた。
「よくわかった」
「うん、ホントにごめん」
ようやく気持ちが楽になる。
自分の口でちゃんと言えたし、シノブにもきちんと話したと言えばこれから支障はないだろう。
ふ、と顔から笑みが零れた。
「安心したか」
「え……あ、いや……別に安心とか」
「いいって無理すんな」
「……いや」
言葉にならない返答が口から付いて出る。
図星を当てられると本当に都合が悪い。
サトルは屋上から出ようと思った。少し痺れた足が不快に感じたが今はもう、ここから出た方が賢明だろう。
「じゃ……そろそ……」
サトルが立ち上がろうとしたと同時。奥崎がサトルの背中へと手を回してそのまま自分へとサトルの体を引っ張った。
一気に顔が熱くなる。
「!!」
「……お前ってあんまり人とこうやって密着したことねえの」
「…………っ、ない。それがなんか悪い事なのかよ!」
「いや、別にバカにして言った言葉じゃない」
「…………」
奥崎の腕がぐっとサトルの体を締める。
「!……っちょ……」
「気が短い俺が3日待つと言ってそれ以上待てるだけ待って、お前の気持ちも理由も聞いた。……次は俺がどうするかだな」
「はっ!?」
どんな理屈だよ?!と内心叫んでしまいたい気持ちでいっぱいになったが目で相手に訴えるしかない。ふと奥崎の視線がサトルへと落とされた。動揺するサトルの顔が見て、奥崎は小さく笑って。
「安心しろ、俺はお前の断る理由を考慮して、ちゃんと考えてこれから動くことにする」
「な……なにそれ……」
「別に。話は聞いたから安心しろよ、マツ。ただ俺は諦めが悪い方だってよく言われる」
「諦めって……だから俺は」
「ああ、聞いた聞いた。もっと仲良くなればいいんだろ。俺の名前呼ぶの緊張するなら無理に呼ばなくてもいいぜ。周りからはオクとかオクさんとか呼ばれる。さん付けがいいならそう呼べば」
そう言うと奥崎はサトルの体から腕を離してヤクザのような笑みを浮かべながら先に屋上を後にした。
取り残された誰もいない茜色の空の下。
サトルは呆然とそこに長い時間立ち尽くした。
「……ただいま」
寮のドアノブをゆっくりと回して開けるとそこは真っ暗な空間だった。どうやらシノブはいないらしい。好都合と取っていいのか、それとも仲直りをする機会を逃してしまったと取ればいいのか、サトルには判断する頭が欠如していた。
まだきつく奥崎に抱きしめられた感触が消えないような。嗅ぎ慣れない香水の香りとか。固い胸元とか。そういうことを悶々と考えるうちにサトルは顔が熱くなった。
「……何考えてんだ、俺……」
愚痴愚痴言いながら部屋へと入ろうとした時、遠く廊下から人がこちらへと歩いてくるのが目に入った。
「あ……」
遠目からでも判断が付く。モデル並みの身長、長い手足。橘高等学校の王子様で彼からゴリラと称されるシノブの敵、上月ミナミだ。しかもこちらへ微笑みながら直進してくる。サトルは何故かぎこちなく会釈した。
「やぁ」
「……どうも」
「たしか……ゴリラ君の友達だよね?」
「はぁ」
なんで自分に挨拶なんかしてくるんだ、と思いながらも少しだけ頭を下げた。返事をしてからミナミの言葉を肯定してしまったと少し後悔するも相手はにこやかに微笑んでいるので自分も合わせて少し笑ってみる。
「先程先生からこの用紙を渡されてね。ゴリラ君忘れていったみたいだから届けに来たんだ。もし良かったら君がゴリラ君に渡してくれないかな?」
「いいですよ」
「内容は生徒会選抜についてのことだと思うからそう伝えて。あ、あと同じクラス会長同士仲良くやろうね、もね。ゴリラ君、なにかと俺のこと目の敵だから、さ」
困ったように笑うその顔も異様に綺麗に見えた。サトルは用紙を受け取って小さく頷くと『あ』と小さく声を漏らした。
「なに?」
「あの……ゴリラ君、とかって言うから多分神崎怒るんだと思うからさ、できたら名前で呼んでやればいいんじゃないかなー……なんて」
「名前……そうか。確か神崎シノブ君だった……かな」
「そうですよ」
「わかった。そうするようにしてみるよ。彼ね、なんか俺が昔持ってたゴリラのぬいぐるみに似てるもんだから、ついね……、あは。わかったよ、アドバイスありがとう。じゃあよろしく」
「はい」
サトルへと振る手も指が長くてサトル自身、少し動揺した。
「……ゴリラのぬいぐるみ」
言いながら開けていたドアから部屋へと再度入ろうとすると二段ベッドの下から人が出てきたような気がしてサトルは目を見開いた。
「っ……!!」
暗がりからこちらへと誰かが素早く向かってくる。
サトルは思わず息を呑んだ。
「くぉら!このバカマツ!!帰ってくるの遅ぇぞ!!」
第一声でそれがシノブだと理解してサトルは深く息を吐いた。
「も……マジビビッた……なんだ神崎か……お化けかと思った」
「なんだ?ゴリラの次は化けモンかよ、俺は。……ってさっきの声」
「あぁ、H組会長上月ミナミだろ、はい、これ」
ドア付近で不機嫌そうな顔で立つシノブの横を通り過ぎてサトルは電気をつけてようやく部屋へと入った。髪の毛の状態から見て、どうやらシノブは布団で寝ていたらしい。持っていたカバンを机へと置いて制服のボタンを外す。
「『生徒会選抜』について…か」
「そう言ってた」
「ミナミの野郎も出るのか?」
「それは言ってなかったけど」
「奴は出そうな気、するけどな…」
「どうだろな、……神崎は?出ないの?」
「俺か?一応出る予定だぜ」
「そっか」
中にきていた白のTシャツを脱いで紺色のものへと着替える。その間もシノブは用紙をずっと真剣な顔で見つめていた。よくそんな人前に立つ仕事をするな、とサトルはシノブの神経が知れなかった。所謂ボランティアのようで、責任はある。誰だってやりたくないと思うようなことなのに。
「神崎」
「ん~?」
「お前さ、なんでそんなのやろうって思うんだよ?」
「は?簡単な話じゃんか。受験に有利だからだよ」
「受験って?」
「お前つくづくバカだな、大学受験だよ大学受験」
「大学って……お前」
「三年なんざあっという間だ。俺の夢はでかいからな。今からできることは全力でやっていきたい、そういうヤツなんだよ、俺は」
「……なにそれ?」
「は?」
「いや……なんでもない」
夢。
考えたこともなかった言葉にサトルは少し首を傾げた。そんな目にも見えない将来のことなんて想像もつかない話で。同室のシノブは同じ歳なのにこんなにも自分と違う。
「神崎の夢ってなに?」
「……秘密」
「……なんだよ、教えてくれたっていいだろ?」
「やだ」
「なんで?」
「絶対バカにするからだよ」
「……しないよ。夢なんだろ」
「……夢だから言いたくねえ。……つうかお前今日逃げやがって!忘れるところだったぜ。普通逃げねえだろうが!」
――やっぱり覚えてたんだ。
サトルは生徒会選抜の件でシノブの頭からすっかりバンドの件は過ぎた事かもと期待したのに。少し黙ってからゆっくりと口を開いた。
「俺、飯食ってくる」
「ほら、俺から逃げるから飯食う時間も遅くなっちまっただろ?お前帰ってくるの遅えんだもん、多分いいヤツもうなくなってるぞ」
「別にいいよ」
サトルは愛想のない返答をしてさっさと部屋から廊下へと出た。
面倒くさい予感がしたからかもしれない。
今はシノブとは距離を置きたくなった。
人と深く付き合うなんて得意じゃない。
談話室の明かりを点けて、サトルは緑色のソファへと深く座り込んだ。
夕食のメニューは魚の煮付け、味噌汁、漬物、ほうれん草等。すっかり冷めていたが食堂のおばちゃんが温めてくれた。
一人きりの食堂でさっさと夕食を済ますとまだ行き慣れていない談話室へと入ることにした。そこにも誰もおらず、サトルは少し安心した。思ったよりソファは柔らかく、ソファ前のテーブルは清潔で。あまりここを使用する人はいないのだろうか、と思った。サトルの座ったすぐ横には大きめなテレビがあり、その横には今日の新聞が並べられている。
以前に、奥崎とここで会った。
その時はまだ自分がぎこちなくて仲良くなれるわけがないと心のどこかで思っていた頃。一週間という時間は自分が思っているより長い時間なんだと感じた。
屋上で体を引き寄せられた瞬間。
その光景が頭を過る。
「……だから何だって言うんだよ……」
サトルは黒髪を両手でぐしゃぐしゃにして目を軽く閉じた。
ボーカルの件。
きちんと自分なりに断ったはずだ。
なのにあの返事。
ここに来て、入学してからロクに自分の意見が通らない場所だと実感した。シノブはものすごい我が儘だし、面倒くさいし、目立つし。奥崎は冷めてるようで諦めが悪いらしいし。
俺は、俺は。
「……なんか面倒くさい……」
呟いた愚痴が談話室に異様に響いて聞こえた。
明日は、明日はどんな一日になるのか。
これからの学校生活はどう変化していくのか。
サトルは不安で胸が苦しくなった。
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