第3話

「一緒にやろうか?」

 女の人が僕に言った。

「一緒にシャボンを作るの。もっと素敵よ」

 僕らは同時にストローをシャボンの液に浸した。ストロー口を重ね合わせて、一緒に大きなシャボンを作った。二人乗りの大きなシャボンだ。

「浮かべ!」

 僕らは同時に叫び、シャボン玉に乗った。成功だ。二人で大きく笑った。僕らの体は地上を離れ、どんどん高く昇っていく。

「見て、きれいな夕焼け」

 僕らは夕陽に向かって飛んでいるのだ。どこまでもどこまでも二人きりで・・・。高く、高く、昇っていく。鳥たちが巣へ帰っていく。僕も思い出した。お母さん、何処にいるの?

 とたんに僕らは現実に帰ってきた。

「だめねえ」

 女の人が、ちょっとがっかりしたような口調で言う。僕が謝ると、女の人が言った。

「お母さんに会いたいのなら、捜せばいいのよ。一緒に捜してあげるわ」

 そこで、僕らはもう一度、大きなシャボン玉を作った。壊れるな、弾けるな、僕の夢。お母さんを捜すんだ。ふわりと宙に浮かんだシャボン玉の中で、僕は女の人に説明した。僕のお母さんがどんな人なのか・・・。

「君は本当にお母さんが好きなのね」

 女の人が言い、僕は頷いた。ちょっと子供っぽいかなあ、と反省する。でも・・・。

「でも、お姉さんだって、お母さんが一番好きでしょ?」

 そう言うと、その女性は少し淋しそうに笑った。

「・・・ええ。大好きよ」

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