第15話 改善点
それから数週間、任務が来なかった。
その代わりにレベッカ率いる選抜隊と一日中鍛錬。
筋肉痛が日に日に痛みを増している気すらしてくる。
「余所見ですか」
「っ!」
気が散ると、隊員のレイピアが目前に襲い掛かってくる。
気は抜けない。
「殺すつもりで来てください。遊撃隊の実力はその程度ですか」
煽る口調に動じず、フレイヤの剣は炎を纏う。
「煉獄乱舞_____」
「甘い」
ガラ空きの胴めがけた突き。
だがフレイヤが寸前で躱し、彼の背後からロランが飛び出してくる。
突きの勢いをいかし、腕を軽く引いて隊員の胴に蹴りをいれる。
「・・・っ!!」
隊員が崩れ落ちる寸前で、ロランがハンドガンを頭部に突き付けた。
「・・・降参です」
隊員が両手を上げた。
「素晴らしいね!アネッテにも勝っちゃうなんて!」
拍手をしながら近づいてくるレベッカ。
「見事な連携だよ。1人じゃできないことも皆ではできるもんね」
レベッカはそう言って腰からナイフを取り出した。
「じゃあ、次は私が相手だよ」
「!!」
「なっ、レベッカ隊長!それは・・・」
止めようとするアネッテ隊員を制し、レベッカはウィンクをする。
「まさか本気で行くわけないじゃん。死人が出ちゃう」
その一言にぞっとする。
ロランは胸ポケットから折りたたみ式のナイフを取り出した。
「・・・準備は、できてるよ」
「後方支援の準備もできてる。任せろ」
フレイヤは2人の言葉に頷くと、レベッカに向き直る。
「お願いします」
レベッカの一撃はそう重くない。
適当に捌きつつ、隙があれば狙っていく。
「雷神乱舞______」
強力な雷撃。
躱され、大剣が地面にめり込む。
ロランが逃げ回るレベッカの足を払い、ナイフで胴体を狙う。
が、見透かされているようにレベッカがいとも簡単に防いでしまう。
ヴィルヘルムがレベッカめがけて光の鉄槌を振り下ろす。
が、寸前で避けられる。
「あはは、なかなかやるね~」
すばしっこく動き回るレベッカ。
「じゃあ、これに耐えられるかな~?」
レベッカが一瞬で姿を消す。
「どこに____」
きょろきょろと周囲を見渡すフレイヤ。
「!フレイ!」
金属音。
レベッカの死角からの一撃を、ロランが間に入って銃で受け止める。
「・・・!!」
「ロラン!!」
ヴィルヘルムがレベッカの足元を爆破する。
「わーぉ」
それも予測していたようにバク転で避ける。
ナイフを器用に回しながら、口を開いた。
「じゃあ総評ね、フレイヤ君。君は無駄が多すぎる」
「無駄・・・」
「動きがいちいち大げさなんだよ。隙を見せすぎる。大きな一撃だろうと、動きは最小限にして力を籠めないと」
そう言われても、いまいちピンとこなかった。
「ロラン君は身のこなしが軽やかだけど、それを生かした動きができてない」
「・・・」
「動きが速ければ速いほど、相手を翻弄できるからね」
その言葉に、ロランが頷いた。
「最後にヴィルヘルム君。最後のサポートは見事だったよ。味方のピンチにきっちりとサポートができてる。だけど、前の上位種の戦いでは、無駄が多かった」
その言葉に、本人も理解しているのか、重々しく頷いた。
「いくら怪我人が多かったとはいえ、もっと早く対処できていればフレイヤ君たちのサポートができたんじゃないかな?」
「・・・はい」
「じゃあ、今からは3人別々で鍛錬しよっか」
パンパン、とレベッカが手を叩くと。
2人が訓練場の入り口から姿を現す。
「レベッカ。話は済んだのか?」
中性的な美貌の持ち主が、レベッカに問う。
「うん。SO、フレイヤ君をお願いね」
「承知した。少年、ついてこい」
「は、はい!」
SOと呼ばれた人の後を追い、フレイヤが訓練場から出ていく。
「じゃあ彼をマカロフちゃん、お願いね」
「は、はい!よろしくお願いしますね」
髪をお団子にまとめた少女が一礼する。
ヴィルヘルムも軽く一礼すると、少女がこちらです、と案内する。
残されたロランに向けて、レベッカが微笑む。
「君は私だよ。始めよっか」
ロランが頷き、腰に手を伸ばす。
それぞれの訓練が始まった。
一日一日、進化していく義勇軍の隊員たち。
しかし、その裏で闇の陰謀が動きつつあった。
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