第14話 動き出すもの


ゆらり、ゆらり。

蝋燭の灯が踊る。

ランタンの中の光が揺らぐ。




「リー、珍しいね。こんな夜に任務が来るなんて」

どこか怯えた様子で周囲を見渡す少女は、隣のリーに話しかける。

「そうですね。ですが大丈夫ですよマカロフ。私達は後方支援ですから」

「・・・そうだね。モニカちゃんがいるから大丈夫だよね」




漆黒の奥から、銀色のパーツが見える。

その姿を見て、暗視ゴーグルをつけた女性は高台から叫ぶ。

「全軍、装填確認!」

一斉に何かを操作する音がする。

数十秒後、それが止んだところで。


「撃て!」


高らかなその声に従って、弾丸の雨が漆黒に注がれる。

慌てて奥のオートマタが銃を構えるが、もう遅かった。

女性の放つ弾丸が、一撃で頭部を破壊しオートマタを再起不能に堕としていく。

再装填の動作もスムーズで、相手が2発と撃つ前に装填を終えている。


数十分すると、数千のオートマタの破壊が終わった。

女性が高台から飛び降り、テントに向かう。

「治療班、流れ弾に当たった者がいるの。救護を頼むわね」

「はい!」

治療班が走って怪我人の元に駆け付ける。

「お疲れ様です、モニカ」

「モニカちゃんお疲れ様。かっこよかったよ~」

「リー、マカロフ。後援部隊は貴方たちだったのね」

暗視ゴーグルを外しながら2人に近づいてくる。

「私たちの力添えは不要だったようで。さすがですね、モニカ」

「やだ、そんなに褒めないでよ。大したことないんだから」

嬉しそうに頬を赤く染めるモニカに、補給ドリンクを差し出すマカロフ。

「飲んで」

「あら。ありがと」

ぐいっと一気に呷るモニカ。

「こんな夜中に任務だなんて、疲れるよね」

「そうよ!夜更かしは美容の天敵なのに・・・。はぁ、「懺滅隊」が憎いわぁ」

真剣な表情で暗闇を見据えるモニカ。

「こんな大量のオートマタが一夜に見られるなんて珍しいわよねぇ。・・・何かが動き出したのかしら」

「そう考えるのが妥当でしょうね」

リーはモニカの横を通り、崖から下を見下ろす。

「何か見えた?」

モニカの問いに、リーは首を振る。

「いいえ、めぼしいものは特に」

「あなた、よくゴーグルなしで見れるわね。私何も見えないわよ」

「慣れていますから」

笑顔でそう答えると、モニカが頬を膨らませた。

「どうかしましたか?」

「・・・何か腹立つ」

「え?」

そう言うと、モニカは前ぶりもなく崖から飛び降りる。

「へ、へ?!ななな何やってるのモニカちゃぁん!」

慌てて崖の下を覗くマカロフ。

モニカはオートマタの頭蓋を踏み台にし周囲を見渡していた。

「相変わらず身軽ですねぇ」

「ねー、リー」

「なんでしょう?」

大声で呼ばれたので、大声で返す。

「このマイクロチップ、見覚えないかしら?」

そう言って投げられたものを、顔の手前で受け取る。

手のひらを開け、その形を視界に入れる。

「・・・これは」

「どうしたの?」

そう言ってマカロフが覗き込む。

鮮血のように真っ赤なマイクロチップ。

その上に黒い文字が書かれている。

「何語かな?」

「南オルゴート語です。500年以上前に滅びた王国の文字です」

「・・・なんて書いてあるの?」




リーはそれを言うのを躊躇っているようだ。

険しい顔をしている。

「おーい、何してるの?」

崖の下のモニカの声が聞こえる。

「リー、教えて」

服の裾を掴んで引っ張ると、リーは何度か口を開いた後、こう言った。

「これには、こう刻まれています。





_______必ず喰いに行く」







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