第7.5話 邂逅
_____薄気味の悪い男だった。
彼の流し目は色気を感じさせるが、顔立ちは冷ややかで、どこか他人を見下しているような、不快な思いを呼び起こさせる男だった。
そんな男がこちらに笑顔を向け、手を差し出した。
「俺の名はセイメイという。よろしくな」
こんな男とバディを組むなんて、不本意だった。
だが、あの方の命とあらば仕方がない。
差し出された手を、取った。
冷たい手だ、と思った。
きっと性根もそうなのだろう。
この男に、なんの期待もしなくていい。
私が戦場で適切な対応で手早く人を懺滅しさえすれば、この男との関わりも少なくて済む。
そう思って、握られた手を握り返した。
「私はガトリンクだ。宜しく頼む」
差し出した手を取った女はそう言った。
気持ちの悪い女だ、と思った。
メイド服に身を包んでいるのに、愛想を振りまくわけでもなく、無表情で淡々としている。
正直こんな女の相棒になるなんて、と思っていた。
だが、あの方の直々の命令だ。
従う他道はない。
だから笑って、喋り続ける。
女の気を引いて俺の邪魔をしないように誘導すれば、仲間割れを起こすことも戦闘で負けることもないだろう。
この女と手を組んで人を殺し続ければ、あの方に認められる日も近づくだろうから。
____男は変わった男だった。
私に背中を預け、厄介な敵は自分から引き受けて始末する。
私に怪我がないかいつも確認し、多少の傷があったときでさえメンテナンスを勧めてくる。
変わった男だ。
私に自ら近づいてくるなんて。
「白い殺し屋」と呼ばれる私と、慣れ合うなんて。
____女は変わっていた。
毎回自分の手柄を横取りされるのに何も言ってこない。
傷があっても平気な顔でいるし、普段の生活もとことん自分に頓着しない。
俺が世話を焼かない限り、何もしない。
変わった女だ。
こんな女に出会ったことなど一度もなかった。
面倒くさい、という感情は、もうなくなっていた。
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激戦区にも、その知らせは届いていた。
「どうやら上位種が現れたらしいね」
レベッカが唸る。
「もう既に、何人かやられてるみたいだな」
巨漢の男性が額を押さえた。
「この地域から私たちが離れることはできない」
サングラスの青年が低い声で言った。
「他の副長たちも、今、最前線にいるし」
小柄な少女が銃の手入れをしながら言う。
「今向かえるのは、君だけだ」
中性的な美貌の持ち主が頷く。
「だから、頼んだよ」
盲目の青年が目の前の女性に言った。
「心得ました」
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