第7話 上位種Ⅱ


ガトリンク、と呼ばれた女はアサルトライフルを、何の前ぶりもなく撃ってきた。

正確無比の射撃。

フレイヤは辛うじてそれを剣で防ぐと、間合いを詰めるべく走り出した。


「〈煉獄乱舞〉______」

炎を纏った剣撃。

ガトリンクは剣撃を避け、炎の剣を何のためらいもなく踏みつけた。

「な・・・」

彼女の足は全く燃えている気配がない。

アサルトライフルを構え、フレイヤの脳を撃ち抜こうとする。

が、寸前、アサルトライフルが弾かれた。

音を立てて、数メートル先に転がり落ちる。

どうやらユハニのエッジで弾いたらしい。

「下がれ!突っ込みすぎた!」

その言葉に、慌ててユハニ達の所まで下がる。

「得体も知れない敵の懐に入り込もうとするな!相手の思うつぼだぞ!」

「う・・・ご、ごめん」

「それは、いい。前」

ロランがハンドガンを両手に持って構える。

前を見ると、既にガトリンクはアサルトライフルを構えていた。


ガトリンクがアサルトライフルを撃つ。

他の小隊のメンバーが前に出てきて盾で銃弾を防ぐ。

「・・・」

ガトリンクは不快な表情を露わにしながら撃ち続ける。

「銃弾切れを狙いましょう。その隙で、一気に追い込む」

盾の戦士がそう言うと、ユハニが頷く。

「それしかないな」


やがて、弾丸の雨が途切れた。

「・・・・ち」

静かな舌打ちの後、ガトリンクは銃弾を補充するべく腰のホルダーに手をかけた。


「今だ!」


ユハニの鋭い声に呼応するように、一斉に盾の後ろから全員が飛び出した。

フレイヤが焔を纏った剣を振りかざし、ユハニがエッジの刃を毒が塗られた刃に切り替え投げつけ、ユハニは2人の邪魔にならないよう、隙間を縫って銃弾を放つ。

他の隊員たちも、剣を振りかざしガトリンクの頭部を狙う。




「緩いな」



「!?」

背中に重力を感じ、伏せると、巨大な爪のようなものが背を通過していく。

「ぐわぁっ!!」

避けきれなかった隊員たちが崩れ落ちる。

「!!」

ロランが彼らに駆け寄り、傷を診る。

隊服が切り裂かれており、傷も深い。

放っておいては出血死するかもしれない。

「俺が何もしないわけないだろ、馬鹿者が」

鉄扇で扇ぎながら溜息を吐く男。

反対の手で鎖鎌を弄びながら、フレイヤ達に近づいてくる。

ロランが隊員達を庇いながらハンドガンを放つ。

それを器用に鎖鎌で払いながら、ロランの前に立つ。


「攻撃が単調すぎる。もっと柔軟に攻撃に転じないと、俺らには効かない」

鎖鎌が振り上げられて。

血飛沫が舞った。


「・・・・ぐ・・・・!」

「!!」

ユハニの胸に鎖鎌が刺さっている。

深々と。

倒れ込むユハニを支え、ロランは困惑した様子で隊服を破って傷口に押し当てる。

「美しき友情かな。尊いものが見られて嬉しいよ」

男は笑顔を作って鎖鎌を弄ぶ。

「ふ、ふざけるな・・・!」

「ユハニ・・・!喋らないで・・・」

苦痛に顔を歪めながら悪態をつくユハニを諫めるロラン。

「でも、これで終わりだな」

男はにやりと口角を上げ鎖鎌を振り上げる。





ユハニのことは気にかかるが、千載一遇の好機を逃すわけにはいかない。

フレイヤは心を鬼にして前へ進む。

銃弾を補充し終えたガトリンクがアサルトライフルを構える前に。

炎の剣を、頭部めがけて振り下ろす。


が、



剣は、ガトリンクに手で受け止められていて。



「遅いよ、もう。セイメイがあなたの仲間を倒した時点で、あなたたちの負け」


アサルトライフルの銃口が、フレイヤの額にぴったりと当てられる。











「【インフェルノ】である私たちに喧嘩売ったこと、死んであの世で後悔するといい」



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