第6話 上位種Ⅰ

車を走らせ、約1分。

近くのわき道に停車させ、3つの部隊の隊員は急いで車から降りて走り出す。


「血の匂いが、濃くなってきたな・・・」

フレイヤがたまらず鼻を手で覆う。

「とにかく急ぐぞ!」

ヴィルヘルムが加速する。

残りの隊員もそれに続く。

(どうか、助けられる命が、残っていますように・・・)

草を掻き分け、あふれる汗をぬぐいながら前へ進む。

凹凸の激しい道に躓いている暇はない。




「この先、すぐそこだ!」

ヴィルヘルムが指し示す先。

草原の先の、

大きな道に出たところだった。



「・・・・・!!」


地獄絵図、というべきか。

倒れ伏している隊員は、どこの部隊の人間かわからないほど隊服が血に濡れていて、いろいろな骨が折れて、腕や足の向きがおかしくなっている。

浅い呼吸を繰り返し、目には涙を浮かべていた。

「ヴィ、ヴィル・・・」

「わかってる」

ヴィルヘルムは怪我人の傍に跪く。

本を開き、回復系の魔法をかける。

指の動きに沿って光の因子が現れ、それが傷を癒していく。

「怪我人が多いな・・・」

1人で処置をするにはあまりにも多い。

「手伝います!」

第3部隊の小隊のメンバーの少女が、提げていたバッグから包帯を取り出す。

「助かる。こっちの人の腕、固定していてくれるか」

「はい!」

「任せたぞ、お前ら」

ユハニが言うと、ヴィルヘルムは嗤った。

「ああ、任せろ」



「早かったな」



ぞくり、と背筋が凍り付く声音。

圧倒的な支配者の声がする。

ゆっくりと振り返ると、数十メートル先に、派手な服を着た男と、メイド服に身を包んだ女が立っていた。

「・・・何だ、隊長副長レベルの人間ではないのか」

鎖鎌を弄ぶ男は、つまらなさそうに吐き捨てる。

「殺すか?」

メイド服の女はアサルトライフルをフレイヤ達に向ける。

「無論だ。犠牲者が増えていけば、勝手に隊長副長たちが来てくれるだろ」

「了承した」

「そう簡単に、やられてたまるかよ・・・!」

隊員たちがそれぞれの武器を構えた。

フレイヤが大剣を構えて彼らに向けて叫んだ。


「お前らは、俺たちが必ず倒してやる・・・!!」

 


「気概だけは一人前、か」

メイド服の女は無表情のままアサルトライフルを構えた。

「ガトリンク、あんまり遊ぶなよ。銃弾の補充は時間かかるんだからな」

「心得ている」


「俺たちは、あの方に目をかけていただいているんだからな」




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