第5話 前線へ

カトレア帝国 林道


ヴィルヘルムが運転する専用車が、危なっかしい道を難なくすり抜けていく。

「流石だな、ヴィル」

フレイヤが感嘆する。

「当然だろ」

鼻を鳴らして返すヴィルヘルム。

地図を広げるロランがヴィルヘルムに道案内をしている。

「そこ、右」

「おう」

凹凸の激しい道に、車が大きく傾く。

が、華麗なハンドル操作で危機を脱する。

「あと少しで着くぞ。集合場所のサルビア草原」

「ああ、国境にあるあの花畑か」

「だから準備しておけ。いつ戦闘になるかわからないからな」



名もなき密林の先に広がるのは、まさに絶景だった。

色とりどりの宝石が散りばめられたような、数多くの花が咲く草原。


既に何台かの車が停まっており、隊員たちが武器の点検をしていた。

「降りるぞ」

ひらりと身を翻し車から降りると、点検中の隊員たちに声をかける。

「よう。敵は?」

隊員が顔を上げ、少し表情を柔らかくして答える。

「激戦区には、既に各隊の副長が戦っています。隊長達は激戦区の司令部で指示を出していて、私達はこれから、各地の残党を倒しに行きます」

「そうか」

「遊撃隊の皆さんは、どちらへ?」

「俺らは_____」

フレイヤは任務について書かれた紙を、懐から取り出す。

「ここから数百メートル離れた場所だな」

「そうですか。どうかご武運を」

隊員はそう言って微笑むと、車に乗り込みどこかへ行ってしまった。


「俺らも行くか」

ユハニがエッジの先を布で拭いながら言う。

「そうだな」

フレイヤも頷き、大剣を鞘から取り出そうとしたとき。




________甲高い声がして、銃声が響いた。




「え・・・・」

『応答してください、ここに残っている隊員は、何名いますか?!』

情報部の少年の声が、無線から聞こえた。

その問いに、フレイヤが答える。

「残っているのは遊撃隊と、小隊が2つだけで____」

『至急、こちらの場所へ向かってください!』

座標が送られてくる。

ここから約1キロ離れた場所だ。

「ここに、何かあったのか?」

ヴィルヘルムが問うと、情報部の少年は焦っているような声音で答えた。



「この地点に派遣した隊員が全滅しました。おそらく、上位種が現れたかと」

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