第2話 指揮官と隊長達

義勇軍のとある宿舎の奥に、大きな円卓のある部屋がある。 

これは、各隊の隊長副長らが集まる会議室である。



その部屋に、6つの影が見えた。

「最近は上位種見られないねぇ」

レベッカが髪をいじりながら呟く。 


「そうだな。悪い兆候だ」

サングラスの青年が壁に背をもたれている。


「そんなに難しく考えることなの?」

レベッカの膝に座った女の子が甘えた声で問う。


「力を蓄えているということでしょう。ですが、最近の動きは妙です」

中性的な美貌の持ち主が円卓の前に座る。


「犠牲者が出ないで済む、っていうのは有り難いがな」

大柄の男性は頭を掻きながらレベッカの反対の席に腰かけた。


「そのことも含めて、指揮官からお話があるだろうねぇ」

楽しそうに声を弾ませ、笑顔の青年は席に着く。


その声の後、部屋の扉が開かれる。

全員が一斉に立ち上がり、一礼する。

「指揮官、御壮健で何よりです。益々のご活躍を切にお祈り申し上げます」

「あはは、堅苦しい挨拶はよしてくれ。皆、座って」

金髪の美しい男性は円卓の中央に腰かける。

その後、残りの全員が腰かけた。

「今回の会議は他でもない、上位種の件だ」

彼の言葉一言一言が、彼らに重みと静かさを与える。

不思議な声音だ。

「数十年前、予言があってから活発に活動している「懺滅隊」の上位種が、ここ数か月見られていない」

「はい」

「皆が知りたいのは、このことだろう?」

「はい」

指揮官は手持ちのバッグから書類を取り出した。

それを円卓の前に置く。

そこには、こう書かれていた。

「上位種は、サフォイア公国を無政府状態に陥らせた。至急討伐に向かえ」


「サフォイア公国、ですか・・・」

サフォイア公国は、カトレア帝国の西隣にある国だ。

ここ数百年前にカトレア帝国から独立し、独自の発展を遂げてきた。

「無政府状態かぁ、厄介だねぇ」

笑顔の青年は楽しそうに言う。

「彼らが最近見えなかったのは、別の国で殺戮を行っていたからだと?」

「うん、議会が言うにはそうだ」

指揮官の返答に、中性的な美貌を揺らしながら、そのヒトは考え込む。

「有り得ません。隣国が襲われているのを我々が気付かず、サフォイア公国も助けを求めてこないなんて」

サングラスの青年が指揮官を正面から見据えてきっぱりと告げる。


「そうだね。問題はそこだ」


指揮官は腕を組む。

「僕たちは帝国だけでなく、いろんな国に回ってきた。遠く離れた場所だろうと、「懺滅隊」が見られた国はすべて、訪れてきている」

「解せませんね」

レベッカが溜息をつく。

「こればっかりは、自分達で現地へ行って、真実を見つけ出すしかない」

指揮官は立ち上がり、隊長たちを見据える。


「緊急任務だ」


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