第4話 最終話

 宿に入って最高級の部屋とそこから一番離れた部屋を確保して…数分経ってもその場に立ち尽くすレイラの前に立った。


「…レイラ……好きだった…ZE☆…」


 鍵をレイラに押しつけて、格好付けて言って……宿に入った。


「…な…なによ……格好付けちゃって……アイツはそんな風に言わないし…」


 胸が痛い。自分で言って…気付いた。


「アイツはあんなダサくない…。リュートは…リュートなのに…」


 ”リュート”が好きなんだろう。立った今…自覚して…あと数分前に…数秒前に気付けてたら…。

 宿に入って…リュートを探す。ちっぽけなその背中が…すごい遠かった。渡された鍵を握りしめて、私は自分の部屋に向かう。


 最高の部屋。何もかもが広くて…二人だと狭かったあのベットよりもっと広い。

 それに寝転んで…涙がシーツにシミを付けた。


「うわぁぁぁぁぁぁあああっ!」


 変な声が出る。泣き声なんだろう…。こんな声を出して泣いたのはいつぶりだろうか…。


 好きで好きで好きで。リュートが好きで!やっぱりリュートが好きで。


「ねぇっ!居てよ!横にいてよ!抱きしめてよ!頭撫でてよ!隠れてないで出てきてよ!ねぇ!」


 喚く。馬鹿みたいに。喚き続ける。



「レイラが好きで!好きなんだよ!……嫌いなわけねぇだろ…」


 自分の胸倉を掴んで堅くて狭い布団に腰掛ける。

 隣の部屋から喘ぎ声が聞こえる。


「すきっすきよっ」

「あぁ…おれもだっ……」


 薄い壁を挟んでその声を聞いて…壁を殴った。声が静まる。

 自分の胸をえぐり取りたい。

 なんで…。


「なんでこんな悲しいんだろ…。なぁ……」


 自分の口からでかかった言葉に驚いて唇に手が触れる。

 声は出なかったけど唇は…『レイラ』と動いていて。

 今まで話しかけた光景が思い出がフラッシュバックする。


「れいらぁ…。なぁ…れいらぁ!」


 そばに…横に立ってたかった。



 ベットが広い。広すぎる。私がいくら大の字に寝ようが私はベットからはみ出ることは一切無い。


「ずるすぎるよ…こんなの…」


 誰もいない横を見て…涙がまた零れた。

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