第4話 (33)

 リュートの頬を挟んだ。そのまま口を近づけて…口の端に突いているクリームを舐め取った。


「クリーム。ついてたよ?」

「ぁ……あぁ…。ありがと…」


 口の中に感じるリュートの…味?かな?


「リュートの味がする」

「はぁっ~~っ!」


 リュートが顔を真っ赤にさせて息を吐いた。すっごく可愛い。


ーー数刻後ーー


「た…食べ過ぎた…」

「美味しかったわ…ぁ…ぁりがとうね」


 数刻前の事を思い出して勝手に顔が赤くなる。

 今までの自分が恥ずかしい。横を見ればリュートも一緒で…何故か嬉しくなった。


 レイラの顔をこっそり見ようとすると目が合った。その目の下は赤くなる。

 自然と手が伸びて…レイラの手に当たった。


 レイラの手の甲が優しく俺の手首を擦って、レイラの親指が俺の手の平を掴んだ。


 リュートの手がなめらかに滑って私の指の間にリュートの指が入る。…幸せ…で一杯。


====


「ふっ……下らない戦いがお好きなようで…」


 その双子の声がして振り返ると、スタッとその場に降り立っている姉妹。

 髪が上になびいているのを見ると飛び降りたのか…。


「うっせぇ黙れ!」

「今度は逃がすなよっ!」


 魔法を放ちながら駈け寄ってくるその男。ソレに合わせて走ってくる周りの男共。

 この双子はほっといていいだろう。自分の事を考えろ。


「姉様、不毛な事を我々もするのですか?」

「それが仕事ですわ。頼みましたわよ」


 鉄パイプを拾って重さを確かめる。殺したくはないな…。そんな贅沢言ってられねぇけど。


「かかってこいやぁぁぁぁぁああっ!」

「うぉぉぉおおおおお!」


 鉄パイプをむちゃくちゃに振り回す。溝打ちに男の蹴りが入った。

 が、こちらに手応えはない。


「ぐっ……あぁぁぁああっっ!はぁっ…はっ……!」


 すぐに疲れて…呼吸が苦しくなる。魔法陣を展開しようとした矢先、赤髪の男がにやっと笑っていた。


「くっ……」

「きゃぁぁぁぁぁあっ!」


 叫び声で振り返ると姉に向かって襲いかかろうとする男がいた。

 それも鉄パイプで。


「よそ見は禁物ってしらねぇか?」

「がっ……あぁぁああっ!」


 蹴られて吹っ飛ぶ力のまま姉と男との隙間に割り込む。


「うあぁあああああぁっ!」


 怖い怖い怖い。このまま脳みそが砕けるかも知れない。手をむけて魔法を使った、のに火は出てこない。

 時間がゆっくりになる。妹が俺の前に現れて、男の首の骨を折った。その瞬間がはっきり見える。


 ゴキッ


 耳にその音が聞こえたと同時に身体に何かが触れた。小さいけど力強い温もりだ。

 視界が変わり、何故か次の瞬間には姉の背中を眺めてる。


「腐敗するといいですわ」


 男の集団が倒れ落ちた。そして時間が戻る。


「うっ……いった………」

「…不快ですわ。私が本気であのような悲鳴を上げるとでも?」

「…どういう…ことだよ…」

「悲鳴でひとは動きを止める。ダーナがくるまでの時間稼ぎですわ」


 じゃあ俺のあの度胸は無駄って事…なのか?おい。


「何を考えてるのかは分かります。いえ、無駄ですね。私の仕事が増えただけなので邪魔でした」

「くっ……そ…」

「ダーナ。無駄ではないわ。…少し私気に入りましたの。まぁそれはダーナも同じようですが…」


 言っている意味が分からない。が…さっきまでの痛みが上ってきた。ご都合主義野郎…め…。

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