第4話 (32)

「え?なんで攻守交代してんの?」

「あら、見てなかったの?勿体ないわね」

「あんたと違って私達は働いてたのよっ」

「あら心外だわ。私も女神のように彼らの甘酸っぱい恋物語を見守っていたのよ?」

「黙ってろサボり令嬢、顔と胸で男をこき使うクズが飄々と言うなっ」

「口悪すぎでしょ、言ってることに何も間違いはないけどさ。

 にしても……完璧にSMが逆転したじゃん」


 先ほどの三人が再び二人を眺める。レイラが丁度、リュートの顎に指を這わせた時だった。


「あ~、私の彼氏Mなんだけど」

「いきなりのカミングアウトは止めて下さる?」

「私の彼氏と真逆の性癖やんっ」

「ごめんツッコミになってないから。面白くない。

 でさ、わかんないからギャグボール突っ込んで涙目で…てか途中から号泣してるんだけど構わずムチで叩いてさ。

 全く喘がないわけ」

「これは私のアイデンティティーっ、ボケてないことぐらい分かってるっ」

「それは……可哀想ね……」

「でしょ?ほんと訳わかんなくてさ…怖かったの…」

「いや彼氏さんがよ?ちゃんと最後まで聞かせてくれるかしら?まぁなんとなく分かるけど」


 そのポニーテールのウェイターはお盆で自分に風を送りつつ、見本としておいてあったスムージーを啜った。

 巨乳のウェイターの手には何故か…いや必然的に桃のスムージーが渡された。これぞ乳の力と言うべき物か。

 ボブカットの小柄なウェイターは彼女らの無視に少ししょげて、とぼとぼと持ち場に戻った。


「酷ぃ~。そこは私を可哀想って言うべき所でしょ~。

 まぁ…想像通りでさ。肉体的Mじゃないって悲しげに言われてさ…。

 今見て思った。こういう物を求めてたのか~って」

「へぇ…。リア充は良いご身分だ事。あら、積極的ねぇ」


 巨乳美女はリュートの頬を挟むレイラを見てそう嘯いた。




「ん~、どう?美味しいかしら?」


 あ……味が分かんねぇ…。けど…美味しい…。って言うのと…レイラの香りが鼻に刺さる。

 凄く良い匂いで胸が……。


「トクン…トクン…って?鼓動…速いわね」


 レイラが俺の胸に手を当てる。ドキッとするけど…振り払えない…。


「くぁっ………や……やぁ…めろよ…」

「あっ、かわい~。照れちゃってるし、あと…『やぁ…』ってすっごく可愛いかったよ?」

「おまっ……それは……れいらが……」

「なぁに?私が?」


 リュート…ドキドキしてて可愛い…。凄い愛でたい…いや既に愛でてるけど…。包み込みたい…。


「…か…かゎぃぃ…からぁ……だっ…よ」


 喉から声を絞り出すように…意趣返しかの様に言うリュートだけど…全くその効果は為してない。ふふっ。

 私はそのまま手をリュートの頬に伸ばした。

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