第4話 (29)

「んぁ……」


 なんで俺……なんでなんでなんでなんで!?なんで俺……こいつレイラと…き…き、き、キス。

 キスしてんだ!?オカシイだろ!?どうかしてやがる!


「……ぁ…起きたぁ?りゅーとぉ…昨日は激しかったね」

「へ…?」


 …俺は…こういう台詞を何度も妄想したことがある。

 相手は超巨乳の女性や言い表せないほどの美人だったが…。レイラも美人か。まぁ胸は…ノーコメントde…とかじゃない!


 この状況と『激しかった』で脳内検索すれば…夜の…大人の営みしか思い浮かばない。


「え……ちょっ!何で」

「ん?恋人として当然のことでしょ?」


 まてまてまてまて……そうだ…。昨日は…冗談めかして告白しようとして止めたんだっけな。

 うん。振られるような未来を想像したから告白してないんだな。


「……何で!?ここに」

「んっ?だって……私たち……」

「そ、そういうのはちゃんとした関係になってからじゃないと!

 うん!だから俺こ、告白して!OKもらったら!それからにしよう!

 うん!顔洗ってくる!」


 リュートはショックと酒で昨日の事を都合良く忘れているみたいだ。

 レイラは寝ぼけと幸せでとろとろになった頭でなんとなく感づいて顔を少しずつ染めた。


「…もしかして俺の事好きなのか…?うん、好きなんだよな。だって…こ、恋仲とか言ってたもんな。

 告白したらすぐOKもらえるよな」


 自分に言い聞かせるリュートは女々しく自分の頬を手で挟んだ。


「うわっ……キモっ…。俺キモっ……。くっそ……あ"ぁ"あっ」


 濁った息を吐きながら二日酔いで痛い頭に疑問を持ちつつ乱暴に自分の顔を洗った。


ーー数分後ーー


「……そっか…そうなんだ…。へぇ…私に告白したこと忘れてるんだ…。へぇ~……」


 暗い笑みを浮かべるレイラはリュートの枕に顔を埋めた後、蛇のように鋭い目で壁を睨んだ。

 さながらリュートは蛙と言ったところか。


ーー1刻後ーー


「今日はどこいく?」

「そうね~…あっ、あそこのパフェの店っ!」

「……分かった。{金足りるかなぁ…}」

「ん?なんか言った?」

「いやぁ……なんでもない…」


 ぱふぇっ!ぱっふぇ!ぁぁ~クリームと混ざり合ったあの苺の……。ふわぁ……。


「…幸せそうで良かった」

「何言ってんのよ!当然じゃない!さっ、沢山食べるわよ!」

「お、おう…。体重計乗っとく?」

「乙女になんて事言うのよ!デリカシーのない男は嫌われるわよ!」


 ぐっ………凄い胸に刺さった……。き、嫌われたくない…。


「……ま、まぁ…レイラなら太っても可愛いと…」

「お世辞なんていらないわ。さ、食べましょ」


 何突然お世辞を吹っ掛けてくるのよ。普通にしてて良いのに…。


 お店に入ると意外にも空いていて…何故か女性のウェイターが俺らを見た後に優しく目を細めて、隅の席に案内された。

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