第4話 (27)

「…おい!俺の事下餞とか言うならどれだけお前は高貴なんだよ!」

「……はぁ…。何をそこまでムキになられるのですか?下らない」

「下餞下餞うるせーんだよ!お前の方がくだらねぇよ!」

「黙りなさい…。姉様にそれ以上話しかけないでください」


 冷たいナイフを首筋に感じる。ベールで隠された姉の口が歪んだ。


「私の妹に背後を取られないようになったら話しを聞かないこともないですわ」

「……クソが…。お前らがベール付けてんのはぁあ?下餞な俺より畜生みたいな顔してて醜いからだろ?」


 今でも馬鹿みたいな煽り文句だと思う。

 良く妹が切れなかったもんだ。いや、切れてるけど姉の制止によって助かったのか。


「ふっ………。ダーナ、下民の声に耳を貸すだけ無駄ですわ」


 妹だけしか反応しないのも…相手にされてないみたいで悔しい…。

 くっそ………ぜってぇ…後悔させてやる。


ーーーー


「青い血……か……」


 私は自分の手首を見る。少し青いのはその性質からだろう。


「…リュート…ちょっと怯えてたなぁ……でも…私のこと…抱きしめてくれた…」


 リュートが治しきれなかった傷跡を見てふふっと笑うレイラ。

 リュートはその隣の布団でぐーすかと寝ている。


「……私の事…拒絶しなかった……」


 レイラはいびきをかいて寝るリュートの横に移動し、酒臭いリュートを抱きしめた。


「……うぅ…酒臭いけど…。リュートだし…許してあげる」


 何言ってんだろ…私…。


「れい……らぁ………」

「ん?」

「レイラぁ……」

「リュート?どうかした?」

「レイラぁぁぁぁああああっ!」

「うわっ………あっ」


 呼ばれて抱擁を私は解く。そして絶叫でリュートから離れた。

 リュートが私に腕を伸ばしてきて、驚いた私は後ろに下がってしまった。


 高級ホテルとはいえ当然の如くベットの広さには限界がある。

 レイラは重いリュートをベットに運んだのだ。

 当然リュートは端っこの方で寝ることになり、その横に寝転んだレイラはほどんど縁の所にいる。

 つまり……。


「ちょ……。いでっ………うぅ…~…何すんのよ…」


 落ちる。


「れいらぁぁぁぁっ!」


 レイラが真っ黒な深い谷の底へと落ちていく。

 レイラの目が俺を捕らえていた。手を伸ばさなきゃ……とどけぇぇぇぇ!


『れいらぁぁぁぁっ!』


 手が…指先だけが掠めて………そのまま…落ちていくレイラ…。


「…っ……。…レイラ……」


 夢か…?夢…か…。でも…レイラが見当たらない。


「レイラ?」

「……もうっ……。寝相悪すぎで……しょ…?起きてる!?」

「レイラ……れいらぁ………」


 リュートは涙目で私を見た。

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