第4話 (21)
「……はぁっ……」
強く息を吐いて目尻に溜まりかけていた涙を振り払う。
そして悔しそうに私の足の縄をほどくリュートを見た。
「マヌケなのよ。ちゃんと倒しきってないのに油断するからよ」
「……くっ……」
「でも……私を……一番に心配してくれて…私一番で動いてくれて……嬉しかった…。ありがと…りゅーと」
潤んだ目で見上げられて固まる。俺はこの顔に弱い。
「……ぁ…あ、おう……」
「けど!私の心配よりさきに自分の心配をして欲しいわ」
「……それは……分かった。…切り替えだ切り替え!うん、こんな事で戸惑ってても意味ないからな。
よし、川へいこ……っうか…!」
立ち上がったと同時に腹に激痛が走る。
「…魔法陣展開、鎮痛」
レイラの手が痛みの走る腹に当たると、その痛みが引いていった。
「ありがとうな。…行くか!」
「えぇ!服も買ったし!そこの男は…」
「構ってる余裕は俺らにない!」
ーー1刻後ーー
「きゃー!冷てぇ!」
「フハハハハッ!何幼女みたいな悲鳴上げてんのよ!」
「うるせぇ!レイラも入ってみろ!」
無駄だろうがズボンの裾を捲り上げて川に浸かる。
確かに冷たいっ!けど……悲鳴を上げたら負けよ!
「くっ………。へ、へへん!どうよ!」
「十分冷たそうな顔をしてやがるな!これでも食らえ!」
「ひっ!冷たっ!か弱い女に水掛けるって事は…分かっているわよね!」
「冷てぇなっ!おう!仕返してくる時点でか弱くねぇよ!」
「乙女になんてこというのよ!」
ーー数分後ーー
「…はぁはぁ…あんたやるわね……」
「レイラも……へこたれねぇな…」
…レイラを睨め付けようとして……ッ…目をそらせる。
透けてる…。水色の下着が透けてる…。
「……ヘンタイ…」
気付いたのか胸を隠すレイラ。…川のせせらぎが大きく聞こえる。
「…あ……す、すまん!あ…えっと…」
「しっ……」
言い訳を閉ざされてレイラを見るといつになく真剣な表情だ。
「…悲鳴…聞こえない?」
「悲鳴?……」
川の向こうの森から…確かに何かが聞こえる。
「行くわよ!」
「おう!」
森を駆ける。悲鳴が近づいてきた。
「や……お兄ぃちゃん……」
「いいから早く逃げろ!後から追いかけるから!」
ゴブリンがその兄弟に迫る。九歳と六歳ぐらいだろうか…。
「いい?今はゴブリン数匹だけどわんさか来るだろうから救出だけを念頭に置くわよ」
「分かった。俺が足止めしとく……って俺左手火炎の魔法陣だった」
「うそ?じゃあ私水砲の魔法陣だから変わろ……ちょっ!」
「人を助けるのは俺の役目だぁぁぁぁ!」
ゴブリンの前に飛び出て拾った太枝を振り回す。
「バカッ!早く引いてよね!」
太枝を縦に振り下ろしてゴブリンと間合いを取る。レイラは……もう退けてるのか…?
じりじりと後退する。ゴブリンがじっくりと間合いを詰めてきた…。次足を引いたら…逃げる!
「レイラ!弟寄越せ!」
すぐに追いついた。理由は完璧に六歳の弟だろう。
「普通に走ってるわよ!」
「そんなのおせぇだろ!」
「わわっ!」
走ってる弟を無理矢理背負って走る。森との境界の川が見えてきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます