第4話 (20)


「女に手を出すなぁぁぁぁぁああっ!」


 目の前に迫っていた足が視界から消える。そして…黒ズボンの足が降り立った。


「がっ!……て……てめぇ……!」


 跳び両足蹴りを完全に食らった男が地面を這いつくばって……蹴った本人を見る。


「レイラっ!」


 が……本人は既に横に倒れるレイラの縄をほどいていた。


「治癒がいるか?いや、痛み止めはないが……。魔法陣展開ちyu……カハッ……」

「よそ見してんじゃねぇよ!このクソガキがっ!」


 男がリュートを蹴る。リュートのうめき声が響く。路地裏に陽が当たり始め、空を飛ぶ鳥の影が映る。


「お前も一緒に売ってやる。だが…俺をいためつけたんだ。相応の対価は払ってもらうぜ」


 男がナイフを取り出して、リュートの目の前でチラつかせる。


 動け…動かなきゃ……。刺されるっ。


「まずは腹だなぁっ」


 そしてナイフが振り上げられた…。


「俺の女に手を出すなぁぁぁぁぁああっ!」


 同時にゴキッとイヤな音が鳴り、男が地面に伏す。その上にカンマ数秒遅れで着地する足。


「ふっ大丈夫か……i…?おい!男じゃねぇか!」

オンナハアッチ女はあっち


 目に映る足は1人分。なのにカタコトの声がした。


「騙したなぁぁぁぁ!って縛られてる!?」


 だれだ……こいつ…。目を上げると黒髪の青年がいて…肩から飛び出た金属の何かに黄色いオウムが止まっていた。


 ダサい……。オウムの乗せ方が…ダサい……。


「お嬢さん、俺が今助けますっ!」


 そして青年がレイラに近づく…から、俺は叫べた。


「そいつは俺の女だっ!」

「は?」

「…♪~~」


 口笛が聞こえる。オウムから出ているような…。


「おい!お前リア充は死んでれば良いのに!」

ゴシュジンハタスケガご主人は助けがヒツヨウナオンナヲ必要な女をサガセトイッタ探せと言った


 訳が分からねぇけど……とにかく…。


「助けてくれたことは感謝する!でも!俺の大事な女だ!…多分…」

「……。リア充爆発しろっ!」


 青年はそう言い捨てて路地を駆けた。


「……大丈夫か……なんか…締まらねぇけど……」


 格好悪い…。レイラを気にしすぎて…結局別の男に助けられて…。

 唇を噛み締めながらレイラを縛る縄とか布をほどく。


「…クソが…。だっせぇ…」


 どうしようも無いほど格好悪くてマヌケな俺が……悔しかった。

 自分1人で守れなくて何が『俺の女』だよ…。



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