第4話 (17)

「……信じて良いの…?」

「…俺は信じて欲しい……」


 違う。そんなことを言いたいんじゃない。レイラにそんな事を言いたいんじゃない。


「俺は!信じて欲しい!だけど!それ以上に!」


 そうだ…臭い台詞だ。でもそれでも伝えたい。教えたい。


「レイラに…幸せになって欲しい。多分、いや、絶対。

 幸せになって欲しいし……出来ることなら俺と幸せになって欲しい…」

「……はぁ……」


 私は何をやっていたんだろう…。

 青い血だと言ったときから…もうそれでよかったんじゃないの…?

 なんでここで意地張って……。もうこの一秒が惜しく感じる。この事態に掛けた三〇分も、今こうやって考えてる時間さえも惜しく感じる。


「…よしっ!リュート!朝ご飯ちゃちゃっと済ませて遊びに行きましょ!」

「え?」

「何あんたまで泣いてんのよ!行くわよ!私に幸せになって欲しいんでしょ?」

「…わ、わかった!着替えてくるっ!あと床も掃除しよう!」

「あ、それは私が……」

「いいからっ、レイラも着替えて!」


 床にこびりついた青い血。リュートはバターナイフで、それを削り出した。削りカスが舞う。

 多分リュートに降りかかっている私の青い血は…もう見ていて怖くなかった。


ーー数刻後ーー


「あのさ、リュート。朝の話し覚えてる?」

「えっと……あれか?」

「そ、そのときリュートさ…」


 ……こ、告白したんだから穿り返すなよぉぉぉぉおおお!


「私に幸せになって欲しいって言ったじゃん?」

「そうだな……」


 そのことじゃないのか…。告白じゃないのか…。ちょっとがっかりかも…って情緒不安定だな俺。


「しかも『俺と一緒に』って」


 そ、そこに繋がるのかっ!たっ確かに…一緒に…幸せになりたいって言った…。


「だからさ……その……それ……」

「……」


 リュートの方を向く。顔が上気しているのは分かる。俯いている顔を上げた。

 リュートは……現在進行形で顔が赤くなっている。


「…私からも……」

「ちょっと走ってくるぅぅぅぅうううう!」

「お願いした……え?」


 リュートが目の前から走り去った…。

 行き交う人とぶつかって謝りながら遠くに小さくなっていく…。


「……は?」


 呆れの声が出た。そして状況が飲み込めてくるにつれて眉間に皺が寄っていくのが分かる。


「…は?」


 そして苛立ちの声が出た。

 今告白しようとしてたのは分かるでしょ?ねぇさっ!

 なんで逃げるわけ!?そのくせ告白するようなことは言うし!

 折角もっと仲良く…名実ともに交際関係になれそうだったのに…。

「はぁ……」


 結局悲しみのため息が出て……再び怒りが湧いてきた。

 あのチキン野郎!もうチキンって呼んでやる!

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