第4話 (16)

 耳を貸すな。耳を貸すな。こいつを信じちゃ駄目だ。


「俺と一緒に居てくれ!それだけでいい!」


 耳を……。鼓膜をぶち破りたい。こんな言葉を聞くぐらいなら…。


「頼む……」


 耳を塞がせてくれない。嬉しがる自分が嫌いだ。


ーー数年前ーー


 青い血…それ以外にも私にまとわりつく呪いのような…いや呪いはあった。

 その全てを理解してくれた男がいた。拒否し続けてもどうでも良いと言ってくれた。

 死後私にかかる呪いの所為で転生できないとも言った。可能性が高いと。誰もがそう言っていると。

 でも…それもどうでもいいと言ってくれた男がいた。


「**!俺と…一緒に過ごしてくれ!」

「…ありがと…ぅ……」


 だから…この人には話そうと思った…。青い血のことも。でも……話した瞬間……私から離れた。

 私を恐れた。私を拒否した。呪い子だとも言った。

 呪い子なのはいい。でも…理解してくれなかった。


「レイラ!俺と…一緒に過ごしてくれ!」


 だから…その言葉を信じてはいけない。

 翻させなければいけない。言葉を飲み込ませて、私から離れさせて、私を恐れるように仕向けなければいけない。

 信じてはいけない。


「血をみてでも言える!?」

「なんだってしてみろよ!俺は正直怖い!でも!もうどうでもいいから!」

「私は青い血なだけじゃない!穢れる忌み子!神子の代償!呪いはいくらでもかかってる!」

「…絶対に離さない!」


 その言葉を信じてはいけない。流されてはいけない。強く締められる腕を無理矢理逃れる。


「じゃあ青い血だって証明するわよ!青い血を掛けるわよ!汚れた血を!」

「やってみろ!」


 パンが載っているテーブルのよこのバターナイフを手に取る。

 そして…腕を切った。血が溢れる。赤い血だ。


 赤い血がレイラの腕から溢れる。そして床に付いて数秒後、青く変色して固まった。

 血が腕から溢れ続ける。レイラの野郎失血死する気かよ!


「魔法陣展開!治癒!」


 空中に手を開く。手の平に移る黄金色の魔法陣をレイラに近づいて当てる。


「馬鹿野郎!なんで深く切るんだよ!死ぬ気かよ!」

「怯えなさいよ!怖がりなさいよ!本当に青い血なのよ!」

「どうでも良いっ!」


 レイラの腕からの出血が止まる。

 傷は跡形もなくなっていた。床に垂れる血も、腕を伝う血も青く変色して固まる。

 傷口のあったところは肌の色が青黒くなっていた。


「馬鹿野郎!血管内まで青くなってるじゃねぇか!」

「はなれなさいよ!」

「もういいだろ!俺は!レイラが怖くない!だから!意地張るのを止めて!俺を信じてくれ!」


 そうだ。信じて欲しいんだ…。俺は…ただ信じて欲しいだけなんだ……。

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