第4話 (11)

 でっかい夕焼け。


「綺麗だな……」

「えぇ……綺麗……」


 くぅ……ここで手を繋げれば…最高のシュチュエーション!頑張れ俺!


 …どうやって…。で、でもここは男からよね。がめつい女はよくないってのが一般論だし…。じょ、譲歩で少し手を寄せるぐらい…。


 …気配が凄い感じられる。レイラの手が近づいた気がする。

 あぁ、譲歩なのか?つないで良いのか?でもこれで違ったら…。


 何グダグダしてんのよ!手を繋いで良いってサインぐらい気付きなさいよ!

 繋いでも良いって言うべき?いやでもここで『は?』ってなるのはいやだし…。


「「…はぁ……」」

(どうやって繋げばいいんだ…?ゆっくり自然に当たる感じでやればいいのか…?)

(…うぅ…。手を繋ぐ気が無いって事かしら……)


 なっ…今のレイラのため息は詰まらないって意味か?ちょ、調子に乗せてるだけでホントは夕焼けも綺麗じゃないって意味か?


 ちょ、リュート…。あんた…今のため息なんなのよ…。もしかして手を近づけたらから尻軽女とでも見られてるの!?


「……」


 ゆっくり…近づける…。拒否されたら『あぁ~ごめんごめん。当たっちまった』って言えばいい。


 …手が近づいて来てる?やっ……緊張してきた……。


「……っ…ひゃっ」

「うわっ、あ、ご、ごめん!あ、あ……ぁ…ぁたっちまった…」


 …きょひされた…。…今手を退かしたのってそう言う意味だよな?


 あーーーー!私の馬鹿!なんで今手を戻したのよ!驚いたからって!折角のチャンスを…無駄にしちゃったじゃない!


「…べ、別に良いわよ…そ、そのぉ………」


 そ…その?い、いいのか?手を繋いでも……。いやいやそう言うことじゃないんだろうな…。


「て、手が当たったぐらいなんてこと無いから…い…ぃいわよ……」

「ぁ、お、おう……」


 レイラの手がすっごい近くに置かれる。くっ…上から…かぶせるように……。つ、冷てぇ…。でも…柔らかい…。


 うっ……なんなのこいつの手…。当たった瞬間めっちゃ心臓バクバクするんですけど…。


「……き、綺麗だな……{…月が…}」

「……え、えぇ……」


 …なんて言ったのかしら…まさか「月」とか?そんな訳ないよね。

 今日新月だし…ましてや西を向いてるのに…。


ーー数分前ーー


「あんたの分のチュロスは?」

「えーっとね。ないてるおねーさんとおにーさんがいたからあげたの」

「へ?」

「あとおにーさんには『幸せにしろよ』って言ったの」


 …弟…。あんた…どこでそんな言葉を覚えたのだ…。


「じゃあ私の半分あげるわ」

「いい。おねーさんにこれもらったから」


 そして弟が見せつけるように服から取り出したのは青色に光る石。


「…あんたそれ…。ちょ…お母さん…」

「え、いや嘘よ。さすがにこんなに高価な物は…」

「…不壊石だ。あぁ、不壊石だ。レプリカじゃない」


 え…石細工のお父さんが認めるって事は…。


「本物!?」

「えへへ。おねーさんすっごく喜んでた。この石大事にするね」


 弟があどけなく笑う。アーチの上から女の人の驚いた声が聞こえた。

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