第4話 (08)

「う~ぎゅうぎゅう…」

「そうだな。人気のあるやつだから並ぶ場所までギュウギュウなんだろ。期待しようぜ」

「そうね……」


 熱気が凄くて……リュートの匂いが頭を支配する。


「ごめんな。これでも空間作ってる方なんだが…」

「いや…いい。ありがと…」


 今、私はリュートに壁ドンされてる。リュートが私を見て笑うのを見て胸が跳ねる。


「ポップコーン食べきってから入って正解だったね…」

「そうだな。顔、赤いけど大丈夫か?」


 顔が赤いのは…リュートの所為でしょ…。


「だ、大丈夫よ…。はぁっ………」


 クラクラする。リュートの匂い…効果ヤバすぎ……。


「おい、おい!」


ーーーー


「あ……れ?」

「起きたか。苦しいところあるか?」

「ここどこ?」

「救護所だ。暑さでやられたんだろ。ほら水だ」


 あ…気絶しちゃったんだ…。


「ごめん…」

「謝罪を求めて人のために動く奴なんていねぇよ」

「…ありがと……」


 やっぱり"いい"。イイ奴だ。凄く…。


「おう、もう少し休めよ」

「うん……」

「…っ…。こ、コップ返してくる」

「ありがと…」


 リュートの顔赤かった?気のせい…かな?…いいやつ……だ…。凄く。


ーー同刻ーー


「なんだよあいつの顔…。うんって言ったときのあの笑みは…ヤバい…。めっちゃ…可愛かった…」


 返却所にコップを置いて、立ち止まる。目の前のコップを見た。


「…んぐっ……。駄目だ駄目だ…間接キスとか何を目論んでるんだ俺は…。

 まるで変態じゃないか…。いや本気で変態だろ…」


 やれやれと首を振る。あぁ、別になんてこと無いさ。

 なんてこと…。目がつられる。って駄目だ駄目だ!他のことを…。


「んぐっ……」


 再び喉が鳴る…。


「た、楽しむためだし…好きなように…生きていいよな……いいよ…な……」


 手が伸びる…。が、届く前にそれは消えた。


「回収しますにゃ~。あっそれとももう一回使うにゃ?」

「あ……お願いします……」


 そして手で感じる陶器のひんやり感。って…。


「あ、やっぱいいです…」

「そうにゃ?じゃあ回収するにゃ」


 ……これでよかったんだ。何も間違っちゃいない。あぁ、これでよかったんだ!全て!


「……はぁ……」


 あ~むなしい。間接キスに興奮するとかキモいだろ…俺。


ーー数分後ーー


「レイラ、お待たせ」

「えぇ、落ち着いたわ」

「そうか、またなんかあったらすぐ言えよ?」

「勿論。じゃあ行きましょうか。さっき聞いたんだけど今お昼時だからさっきのショー空いてるって」

「そうか、腹は減ってないか?」

「えぇ!大丈夫よ!」


 落ち着いてるレイラも可愛かったけど…元気が一番かな。


「何苦笑いしてるのよ!さっ、並ぶわよ!」

「分かった分かった」


 ふくれっ面も可愛いな。っと…俺は馬鹿だな…。

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