第4話 (03)


ーー数分後ーー


「じゃあ俺は赤の十四に百賭ける!」

「私は赤の十二に百に賭けるわ!」

「おっ!お前ら賭けるな~。じゃあ俺は黒の二十四に百!」


 多分お酒で顔が火照ってる…。けどもーど~でもいい!


「ではルーレットを回します」


「赤の十四赤の十四赤の十四赤の十四赤の十四赤の十四でろ…」

「赤の十二赤の十二赤の十二赤の十四赤の十四……あれ?」


 ボールが回る。おちr…無くていい!まだまだまだ…今っ…じゃない……。


「賭けは初めてか?俺も似たような感じだったけどよぉ。こう言うのはそう簡単に当たんないんだ……ぜ?」

「赤の十二!」

「「あぁ~……。はずれ……てない!」」

「掛け値の十倍なのでこちらですね。どうぞ」


 レイラに押し渡されるコインの山。目が輝くのが分かる。


「まじかよ~嬢ちゃんやりやがるな~」

「レイラすげぇなぁ…」

「ふふん!勝つわよ~!さぁドンときなさい!」


 胸を文字通りドンと叩くレイラ。揺れる程の胸はない。


「おいお前ら稼いでるみたいだなぁ」

「レイラ。これ運が尽きたとみて一旦引こうぜ」

「そうね!じゃあ次の賭けにいくわよ~!」


 ん?肩掴まれたんだけど。俺?


「おい、聞いてんのか?」

「はい?俺ですか?」

「あぁ、お前ら稼いでるな。どうだ?一発でけぇの当てねぇか?」


 厳ついおっさんだな…。でっかいの…。


「レイラどうする?」

「う~ん…。行かない!と言うかこれで終わりにしてバーに行きましょ!」

「おっけー!じゃあ……」

「おいおい。勝ち逃げか?」


 引き留められても……。


「飲みに行きましょ~!」

「オーッ!」

「……ちょっと来てもらおうか」


 店の扉を掴んだときに同じように襟首を掴まれた。苦しいなぁ…。


「え?俺っすか?」

「あぁ、お前ら。勝ち逃げは……」

「リュート!逃げるが勝ち!」


 レイラの伸ばした手を掴んだ。襟にかかる手を払いのけ、カジノを飛び出したのは正解だったのだろう。


「お、おい!待ちやがれ!」

「待てと言われて待つ馬鹿が居るか~!」

「ほんとだほんとだ~!」


 大通りを走る。後ろから追いかけてくる男達の罵声は聞いてて楽しい。


「はぁはぁはぁはぁ…」

「はぁはぁ…逃げ切った?」

「は……ぁ…。多分な……」


 路地裏で呼吸を整える。大通りで男達が通り過ぎる声がした。

 レイラと顔を見合わせると、勝手に笑い声が漏れた。

 まだ死ぬまでに時間はある。

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