第10話 ぽっぽ君の涙。

その日のこーちゃんは、夜になってもなかなか帰ってこないので、哀れな飼いひよこであるぽっぽ君は何度も小さな子供用携帯電話でこーちゃんに連絡した。時刻は9時を過ぎた。こーちゃんは帰ってきたが、明らかに様子がおかしかった。大丈夫?こーちゃん?ぽっぽ君がいつものようにこーちゃんの胸に頭をこすりつけると、こーちゃんは身震いしてぽっぽ君を突き放した。こ、こーちゃん!僕は疲れてるんだ、1人にしてくれ。こーちゃんは、大好きな肉じゃがをぽっぽ君が用意しているのに、さっさと2階のベッドに行ってしまった。一階に毛布を用意しておくから一人で寝ろ、グズ!えーんえーん。ぽっぽ君の涙が家の中をこだました。ぽっぽくんはこーちゃんが眠ったあと、こっそりとこーちゃんのベッドに入った。やめてくれやめてくれ。ぽっぽ君がぎゅっとこーちゃんの背中をさすり、頭を擦りつけると、こーちゃんは唖然として起きた。言うことを聞かないと捨てるからな!僕は今日、他の女性と寝たんだよ!君には意味わからないかもしれないけど。こーちゃん、こーちゃん、ごめんなさい、失礼します。ぽっぽ君は夜中にもかかわらず、出て行く準備をしだした。やめろ!やめろ!ぽっぽ君は涙を流しながら床に倒れてしまった。別に好きで寝たわけじゃないから……。他のゼミ生にもレイプするような女だから……。証拠をとっておきたかっただけだよ。君はここにいたまえ。僕が好きなのは君だけだから。行かないで行かないで何でもするからこーちゃん。こーちゃんはぽっぽを置いてどっかに行っちゃうんだわーん。そんなことはないよ。ずっと一緒だよ。ごめんね。こーちゃんは眠ってしまったぽっぽ君をベッドに運び抱き抱えて眠った。こーちゃん、こーちゃんどこ?ぽっぽ君は寝言を言っている。ここだよ。そう答えると、二人の魂は混じり合い、二人の震えはおさまった。

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