眠れない夜

灯りを落とした住宅地をひとり歩いてみる

街灯に照らし出された歩道の上に蝉が数匹落ちていた

皆死んでいるのだろうと見ていたが

一匹だけ足を組んでいないものがいた

手に取ってみると弱々しいながらも指にしがみ付いてきたので

どこか適当な枝はないかと見回し

親指よりも少し太いくらいの枝に摑まらせた

帰りに同じ木によって確かめてみると

先ほどより少し上に登っていた

あと僅かの命

お前にできることをすればいいよ

次はもう拾ってあげられない

拾ったとしても助けたことにはならないからね

僕とお前は似たようなところにいる

それだけのことで枝に乗せてあげたんだよ

お前はよく頑張った



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