二十一曲目『襲われるヴァベナロスト王国』

 __時はタケルがヴァベナロスト王国にたどり着く、三時間前。


 世界を脅かす最悪の敵とされている、魔族。実際は他の人間と同じ人たちが暮らす、ヴァベナロスト王国。

 その王城の一室で、やよいはため息を漏らす。


「……タケル、キュウちゃん、どこ行ったの?」


 やよいは数日前に突然姿を消したタケル、それに合わせるように行方が分からなくなったキュウちゃんを心配していた。

 この国を襲ってきたフェイルによって、ボロボロにされてしまったタケル。やられた傷は深く、それ以上に……心が傷ついていた。

 困っている人がいたらすぐに飛び出す、無鉄砲で猪突猛進。音楽が大好きな筋金入りの音楽バカ。

 自分のことを顧みないような、優しいバカ。

 それが、やよいが知っている・・・・・・・・・、タケルという男だ。

 だけど、フェイルにやられて声を失ったタケルは__人形のように・・・・・・見えたことが、今もやよいの心の中に残っている。


「バカ……一人でなんでも背負って……少しぐらい、あたしたちのことを」


 __頼って欲しい。

 言葉に出さずに心の中で留めておいて、やよいはまた深いため息を吐いた。

 すると、部屋の扉が開かれ、そこからウォレスと真紅郎、サクヤが入ってくる。

 三人の姿を見たやよいは、暗かった表情を隠すように笑みを浮かべて出迎えた。


「おかえり、みんな! それで……見つかった?」


 やよいの問いに、三人は静かに首を横に振る。

 三人は毎日のように王国の外に出向いて、タケルとキュウちゃんの捜索をしていた。

 そして、今日も探しに行った結果__やっぱり見つからなかったらしい。

 やよいは「そっか」と呟いてから、顔を俯かせる。すると、ウォレスはニッと笑うと、拳で胸を叩いた。


「ヘイ、やよい! そんな心配することねぇって! あのタケルだぞ? どうせどっかで歌の練習でもしてるだろうよ!」


 ウォレスなりの励ましだと、やよいはすぐに分かった。

 だけどやよいは、ありがとうという気持ちは表には出さずに呆れたように肩を竦める。


「何言ってるの、ウォレス? いくらタケルだからって、それはないでしょ……」

「いや、分かんないよ? だって、タケルだし」


 真紅郎が苦笑いを浮かべながらウォレスに同意すると、サクヤもコクリと頷いた。


「……タケルは、音楽」

「そうだぜ! あいつ、音楽ミュージックのことになると、どこまでもバカになるからな! ハッハッハ!」

「ウォレスがそれを言う?」


 サクヤの言葉にカラカラと大笑いするウォレスに、真紅郎はジトッと見つめながら頬を緩める。

 三人だってタケルとキュウちゃんのことを心配していた。だけど、三人はいつも通りに振る舞う。

 暗くなってても仕方ない。いつかタケルが戻ってくることを願って、今は待つしかない。

 やよいは心配な気持ちをグッと堪えて、微笑んだ。


「うん、そうだね。タケルのことだから、今頃__ッ!?」


 その瞬間、やよいの言葉を遮るように城下街から甲高い警鐘が響き渡った。

 平和なヴァベナロスト王国に忙しなく響く鐘の音に、やよいたちは慌ててバルコニーに出る。

 すると、眼下に広がる城下街から火の手が上がり、その上空には__無数のモンスターの姿があった。


「そんな! 結界は……ッ!?」


 真紅郎が目を見開いて周囲を見渡す。

 この国には外敵から守るための結界が張られていて、国に害を為そうとしている者は誰であろうと外に弾き飛ばし、モンスターが入ってくることもないはずだった。

 だけど、その結界は完全に消失している。結界がないということは__この国は今、無防備だ。


「やよい! 皆様! 大変です!」


 すると、部屋の扉が勢いよく開かれ、このヴァベナロスト王国の王女、ミリアが慌てて入ってきた。

 そして、ミリアもバルコニーに出ると視力を失った目で外をジッと見つめる。


「見ての通り、ついさっきこの国の結界が消失しました! そして、四百体・・・以上のモンスターの魔力を感じます!」


 視力の代わりにミリアは魔力を探知することが出来る。

 その力でモンスターの数を調べたミリアに、やよいたちの顔が真っ青に染まった。


「よ、四百!? そんな数、いきなりどうして!?」

「理由は分かりません! ですが、前触れもなく突然・・・・・・・・現れたんです! お母様はすぐに避難所を解放し、住民たちは避難しています!」


 あれだけの数が突然、前触れもなく現れるのは普通では考えられない。

 だけど、今はそれを考えている暇はなかった。

 避難所に住民が避難していても、あれだけのモンスターが暴れ回れば危険なことには代わりない。

 そこで、また部屋に一人の男が入ってきた。

 それは、ヴァベナロスト王国の誇り高き選ばれた六人の騎士__<六聖石>が一人、レイドだ。

 レイドは険しい表情を浮かべながら、やよいたちを真っ直ぐに見つめて口を開く。


「何があったかは把握しているな? 今から騎士団と我ら六聖石で、あのモンスターたちを迎撃する! すまないが、貴殿らも手伝って欲しい!」


 四百以上もいるモンスターを相手に騎士団と五人だけでは、さすがに数が多すぎる。

 やよいたちにも共に戦って欲しいと頼むレイドに、やよいたちは力強く頷いて返した。


「ハッハッハ! 当然だろ! オレたちに任せろ!」

「うん、ボクたちはこの国に凄く世話になってるんだ。手伝うに決まってるよ」

「……絶対、守る」


 ウォレス、真紅郎、サクヤが当然のように戦うことを決め、最後にやよいはギュッと胸に前で手を握りながら、言い放つ。


「タケルだったら、そうするに決まってる! それに、あたしだってこの国が大好きだから!  この国を守るために、戦うよ!」


 全員の意思を確認したレイドは、深々と頭を下げた。


「すまない、ありがとう! 早速だが、行くぞ! まだ避難が終わっていない住民もいる!」

「皆様、本当にありがとうございます……私は戦闘には参加出来ませんが、すぐに結界を元に戻せるように頑張ります! どうか、皆様……ご無事で!」


 非戦闘員のミリアは消失した結界の対処に向かい、やよいたち四人とレイドは城の外へと走る。

 城の外ではこの国の騎士団たちがずらっと整列し、今から始まる戦いに顔を険しくさせていた。

 そして、騎士団たちを率いるように、五人の姿。


「遅いぞ、お前ら」


 一人は仏頂面の男、ヴァイク。


「さぁて、みんな。絶対にこの国を守るわよ」


 一人は妖艶に笑う女、レンカ。


「フンッ、こいつは荒れそうだな」


 一人は隻腕の老人、ローグ。


「フムフム、結界が消失……間違いなく、あいつがいるネ」


 一人は白衣を着た猫背の男、ストラ。

 そして、最後の一人。このヴァベナロスト王国の女王__レイラ。


「__この国始まって以来の、大きな戦いになりそうね。あの男が、また……ッ!」


 レイラは空を飛び回っているモンスターの群れを見て、ギリッと歯を食いしばる。

 もはやこの国の平和は壊されてしまった。そして、その平和を壊しにやってきたモンスターは間違いなく、あの男の仕業だ。


 レイラたちをこの世界を脅かす魔族として広めた張本人。

 レイラの元夫にして、マーゼナル王国の王__ガーディ・マーゼナル。その部下の男、フェイルの差し金だ。


 前に一度襲ってきたフェイルが、モンスターの群れを引き連れてヴァベナロスト王国に攻め入ってきた。

 いつかやってくるとは思っていたレイラだったが、それでも大好きなこの国が戦火に包まれたことに、怒りを露わにしている。

 そして、レイドも五人の列に加わった。


「今はとにかく、あのモンスターをどうにかしましょう」

「……えぇ、そうね」


 レイドに言われ、深呼吸をして怒りをグッと堪えたレイラは騎士団たちに向き直り、声を張り上げる。


「__今! このヴァベナロスト王国はマーゼナル王国の者によって、襲撃を受けている! だけど、このままやられる訳にはいかない! みんなでこの国を守るわよ!」


 レイラの言葉に騎士団たちは雄叫びで返事をした。

 ビリビリと空気を震わせる騎士団たちに、レイラは城下街を襲っているモンスターたちに向かって、人差し指を向けた。


「__全軍、突撃!」


 レイラの号令に、騎士団たちは足並みを揃えて走り出す。

 その数、百人。相手は、四百体以上のモンスター。圧倒的に数の上では不利だとしても、愛するこの国のために騎士たちは雄叫びを上げながらモンスターの群れへと突撃していった。

 やよいたちも魔装を展開し、騎士たちと一緒に駆け出す。街の大通りには、家や店を破壊して回るモンスター__ライオドラゴン。

 火の手が上がる中、何人かの逃げ遅れた住民たちがライオドラゴンに襲われていた。


「あ、危ない!?」


 やよいたちが急いで助けようと動き出すと、その前に一瞬にして距離を詰めたレイドが剣を振り上げ、住民を襲おうとしていたライオドラゴンの首を一刀両断する。

 そして、レイドは剣を薙ぎ払い、首を失ったライオドラゴンの体を吹っ飛ばした。

 住民たちに背を向けたまま、レイドは剣を地面に突き立て、それぞれに指示を出し始めた。


「早く避難所に走れ! 女王とレンカは城の防御! ローグ様は騎士団と共に遊撃を! ストラはミリア様と一緒に結界に向かえ! 私とヴァイクは前線だ!」


 指示を出されたそれぞれが頷き、動き出す。

 住民はレイドにありがとうと礼を言ってから、一目散に逃げ出した。

 そして、ヴァイクはやよいたちに目を向け、口を開く。


「やよいたちは私たちと共に! ウォレスとサクヤは前へ、やよいは中距離、真紅郎は後方から援護射撃だ! これ以上、モンスターの侵攻を許すな! 全力で食い止めるぞ!」


 やよいたちはレイドとヴァイクと共に、モンスターの群れを食い止めることになった。

 一番危険で、一番重要な役割だ。それが分かっているやよいたちは、真剣な表情で頷いて返す。


「やるしか、ないよね……ッ!」


 やよいは深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。 

 この国を守るため、住民たちを助けるため__そして。


「タケルがちゃんと戻ってこれるように___ッ!」


 どこに行ったのか分からないタケルが戻ってきた時に、この国がなかったらまた自分を責めるだろう。

 だけど、そうはさせない。もうタケルを傷つけたくない。あんなに打ちのめされたタケルなんて、もう見たくない。


 だから、あたしが__守る!


 その想いでやよいは恐怖を押し殺し、モンスターへと走っていった。


「__てあぁぁぁぁッ!」


 やよいは街を破壊して回っているモンスター__<ライオドラゴン>に向かっていくと、怒声を上げて斧型のギターを振り上げる。


「__<フォルテ!>」


 そして、音属性魔法の一撃強化フォルテを使い、勢いよく斧を振り下ろした。

 街を破壊することに集中していたライオドラゴンの横っ腹に、やよいの斧が直撃する。

 その瞬間、爆発したような音が轟き、鈍い骨が折れる音と共にライオドラゴンが吹き飛ばされた。

 他のライオドラゴンを巻き込むように吹き飛ばされたライオドラゴンを睨みながら、やよいは斧をドンッと地面に突き立てる。


「これ以上は、あたしが絶対にやらせない!」


 威嚇しているライオドラゴンたちに、声を張り上げて宣言するやよい。

 すると、呼応するようにウォレスはニヤリと笑うと、二本のドラムスティックに紫色の魔力刃を展開して前に出た。


「ヘイ、やよい! オレたち、だろ?」

「……うん。ぼくたちが、やらせない」


 同じように前に出たサクヤが、拳を構えながら言う。その傍にはフワフワと魔導書型の魔装が浮かんでいる。

 そして、三人の後ろから飛来した紫色の魔力弾が、弧を描きながらライオドラゴンたちに襲いかかり、着弾した。


「そうだよ、やよい。みんなで、守ろう」


 銃型のベースを構えながら、真紅郎が微笑む。

 やよいはウォレスたちの顔を見渡してから、ニッと口角を上げた。


「みんなで、タケルが戻ってこれるように頑張るよ!」


 今はいないタケルのために。大好きなヴァベナロスト王国を守るために。

 やよいたちは戦火に身を投じた。


「ハッハッハァァァァ!」


 ウォレスは笑いながらライオドラゴンを魔力刃で斬りつける。


「__シッ!」


 サクヤは短く息を吐き、ライオドラゴンに拳を叩き込む。


「__撃ち抜く!」


 真紅郎はベースのボディ部分にあるコントロールノブをいじり、弦を弾いて魔力弾を撃ち放つ。

 放たれた無数の魔力弾はライオドラゴンを取り囲むような軌道を描きながら、着弾する。

 そして、跳び上がったやよいは斧を思い切り振り被ると、全体重を乗せて斧を地面に振り下ろした。


「__<ディストーション!>」


 やよいの固有魔法、<ディストーション>。

 音の衝撃が地面に伝わり、隆起しながらライオドラゴンたちを襲い、爆音が轟く。


 それから__苛烈な戦いを繰り広げて、二時間。


 平和な街は破壊され、火の手が上がり、黒煙が空へと伸びていく。

 倒したモンスターたちと、やられた騎士たちが地面に横たわる中、やよいたちはモンスターと戦いながら傷ついた騎士たちを安全な場所へと運んでいた。

 だけど、二時間経ってもモンスターの数は減らない。いや、むしろ増えている・・・・・気がしていた。


「はぁ、はぁ……、ぜ、全然減らない……」


 ほぼノンストップで戦い続けていたやよいは、呼吸を荒くしながら額の汗を拭う。

 もはや倒した数も覚えていない。それぐらい戦っても、数は一向に減らない現状に、やよいは少し焦っていた。


「チッ! こいつはさすがに厳しいぜ」

「……しつこい」

「明らかに減らした以上に増えてるね」


 ウォレスは舌打ちし、サクヤは眉を潜め、真紅郎は顎に手を当てながら思考を巡らせる。

 今のところモンスターの侵攻は食い止められているものの、あまりの長時間の戦闘に騎士団たちや、やよいたちの体力は限界が近くなっていた。

 これ以上の戦闘は危険と判断した真紅郎は、やよいたちに言い放つ。


「一度、中央まで下がろう! ライブをした広場でレイドたちと合流し、残った人たちでモンスターの侵攻を防ぐ!」


 真紅郎の判断を聞いたやよいたちは、頷いて広場まで走った。

 すると、そこではレイドとヴァイク、ローグ、残っている騎士団が集まり、モンスターと戦っていた。

 レイドはやよいたちに気付くと、モンスターを斬り払いながら声をかける。


「真紅郎! 大丈夫か!?」

「大丈夫! でも、前線を引いてここで戦った方がいい! あまりにも数が多すぎる!」

「だろうな! 私たちもそう判断した!」


 レイドも同じ判断をしていたようで、この広場で全力で食い止めることにしていた。

 やよいたちもレイドたちと合流し、モンスターと戦い始める。空には無数のモンスター。ライオドラゴンだけじゃなく、ワイバーンのヴィーヴルまでいた。

 その数、三百以上。一度減らしたものの、また増えてやよいたちに襲いかかってくる。


「何故、ヴィーヴルまでいるんだ……ッ!」

「今は考えるな、ヴァイク!」


 ライオドラゴンと一緒にいるヴィーヴルに、顔をしかめながら悪態を吐くヴァイク。そこにレイドは剣を振りながら答える。

 別種族のモンスターが協力するのは、普通ではありえない。これ誰かの手によって命令されているに違いないとレイドは考えていた。

 だけど、今はそれを考えるよりもモンスターを減らすことが優先だ。そう考えたレイドは戦場を走り回り、モンスターを斬り捨てていく。

 激化する戦場の中。ついに限界に達したやよいは、足がもつれて地面に転がった。


「きゃっ!?」


 そして、倒れたやよいに__ライオドラゴンが襲いかかる。


「やよい!?」


 真紅郎は慌てて助けようとライオドラゴンに銃口を向けると、させないとばかりにヴィーヴルが飛来してきた。


「くっ……誰か! やよいを!」


 すぐに銃口をヴィーヴルに向けて魔力弾を放ちながら、真紅郎が声を張り上げる。

 だが、誰もがモンスターを相手にしてて、やよいを助けに行けずにいた。


「や、やよい……グアッ!?」


 ウォレスも気付いて走り出そうとすると、ライオドラゴンの体当たりによって吹き飛ばされる。


「……邪魔、するな……ッ!」


 サクヤもやよいを助けようとして、モンスターたちに阻まれている。

 その間にもライオドラゴンは牙を剥き出しにして、やよいに向かって突き立てようと口を開いていた。

 やよいは疲労によって立ち上がることが出来ない。このままだと、やよいの体に牙が襲ってしまう。


「キャアァァァァッ!」


 向かってくる鋭い牙を見たやよいは、悲鳴を上げてうずくまった。


 うずくまっているやよいに、ライオドラゴンの牙が突き立てられる、その瞬間__。


「__俺の許しもなく」


 パキパキと地面が凍り、口を大きく開いていたライオドラゴンが一瞬にして氷像と化す。

 ヒヤリと冷気が漂う中、やよいの目の前に凍った地面を踏みながら立つ一人の男の姿。

 男はニヤリと笑うと、わずかに曲がった細身の片刃刀__シャムシール・・・・・・を振って氷像を斬り砕いた。


「__やよいたんに、触れるんじゃねぇぞゴラァ……」


 その男の名は、アスワド・ナミル。

 盗賊集団<黒豹団>のリーダー、アスワドがやよいの危機を救った。


「あ、アスワド……?」


 やよいは突然のアスワドの登場に呆気に取られていると、アスワドは振り返りながら頬をだらしなく緩ませる。


「やよいたぁぁん! 見た? 俺の活躍! 惚れた? 惚れただろ?」


 最初は少しは見直していたやよいは、すぐに呆れたようにため息を漏らした。


「はぁ……それがなければ、少しは格好いいのに……」

「え? 格好いい? やっぱり惚れたのか……ッ!」

「惚れてない。それより、今までどこにいたの?」


 手を差し伸べて立ち上がるのを助けようとしていたアスワドの手を無視して、一人で立ち上がったやよいはジトっとアスワドを睨みながら問いかける。

 すると、アスワドはボサボサの黒い髪を掻きながら、申し訳なさそうに頭を下げた。


「一応、国の周りを調査してたら、この国が襲われてるのを知るのが遅れた。悪かった。でも、もう大丈夫だ……」


 そう言うとアスワドはシャムシールをモンスターの群れに向けながら、ニヤリと不敵に笑う。


「__俺が来たからには、好きにはやらせねぇ。やよいたんは、俺が守ってやるぜ」


 そして、アスワドは体から冷気を漂わせながら、走り出す。


「あの赤髪がいねぇ今が好機! あいつがいない間に、俺がやよいたんを虜にさせてやるぜぇぇえぇ!」


 そう叫んだアスワドは、ライオドラゴンをシャムシールで斬り払った。

 続くようにアスワドの仲間、黒豹団たちも戦線に加わる。人数が増えたことで、モンスターたちの侵攻を押し返し始めた。

  


 

 

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