二ノ六 決意する者
「う、うわあああっ!」
激痛が走る。
刃の切っ先は、わたしの目前で動きを止めた。
わたしが差し出した右腕に突き刺さって、貫通して。
ギリギリで、止まった。
「く、ぐうううっ」
選ばれたとか、選ばれないとか。
ふさわしいとか、ふさわしくないとか。
できるとか、できないとか。
すごいとか、すごくないとか。
そんなことは、関係ないんだ。
「大事なのは、どうなりたいかだ。………………どうするかだ!」
そうだ。
わたしは、できると思ったから、昭くんに挑んだんじゃない。
助けられると思ったから、校舎に入ったわけじゃない。
「人の原動力は、こうありたいって願いと、こうなるべきだって決意だ! 願いと決意が、人を動かしてきたんだ!」
みんなを助けたい。みんなを助けるべきだ。
そう願って、そう決意したから、今わたしはここにいる。
無骨丸がなくて戦えなくても。
昭くんに敵わないのは承知の上でも。
今、わたしは自分の願いと決意でここにいる。
できるとかできないじゃなくて。
願ったなら、動け。
決意したなら、動けっ!
「があああああっ!」
ぐいっと。
昭くんが体重をかけてくる。わずかに、右腕に刺さった刃がさらに深く刺しこまれた。
「くっ………………」
いや動けって言っても。
動きたいけども!
これは結構まずい。
結構どころか大分まずい。
せめてここから逆転の一手を思いつくまでの時間くらいなら膠着状態に持ち込めると思ったのに。だから右腕を犠牲にしたのに。刃がじりじりと迫って来ている。わたしの腕の肉と脂肪と筋肉じゃ、刃を止めきれない。
ああもうっ! 「あんた腕細くっていいね」なんて周子ちゃんに言われて喜んでる場合じゃなく、もっと太っておけばよかった!
あるいは骨か! 骨を貫いてないから止まらないのか! いや骨貫いていたら痛いじゃすまないと思うからなあ! 肉を切らせて骨を断つって言葉があるってことは、骨は自分が断ったらまずいってことだもんね!
どうしようどうしようどうしよう。助けたいと願った。助けると決意した。あとは動くだけだけど、どう動いたらいいのか分からない。
「死ねええええ!」
「ああああっ!」
右腕に力をこめて、押し返そうとする。もうこれしか思いつかない。
死に物狂いで押し返せ!
ぬるっと。
さらに深く刃が刺さった。
「あ――――」
判断ミスった。逆だこれ。
このままだと、やば――――。
「はっはー!」
頭が真っ白になる一瞬、誰かの高笑いが聞こえた。
「意気やよし意気やよし! ワシはお前さんのような在り方は大好物だぞ!」
ふっと。
わたしにのしかかっていた昭くんの重みが消える。その代わり、わたしの眼前には銀色のアタッシュケースが飛び出していて。
横を見ると、昭くんが吹っ飛ばされている。
吹っ飛ばされている?
アタッシュケースで吹っ飛ばしたのか。
「なんだ…………なんだてめえは!」
立ち上がって、昭くんがこっちを見る。刀は手に握られている。つまりわたしの右腕からは引き抜かれた。
「なんだとはご挨拶だな! お前さんのあこがれる妖刀剣士だというのに! いやそれとも、花菱に通う学生身分では妖刀剣士と認められない口かなお前さんは!」
ふわりと、高笑い主はわたしと昭くんの間に割って入る。銀色の、趣味の悪い羽織りに赤塗りの鞘がない太刀。ひょっとこのお面の、この男は…………。
家鳴屋敷の…………。
「花菱高校一年生、
そうだ、屋敷で、繭子さんを焼き払ったあの妖刀剣士!
「大丈夫か夜光珠の! まあ随分と蛮勇じゃったの! よかよか。こういうのはワシ好みじゃ!」
太刀川さんはこっちを振り返る。ひょっとこのお面は頭に斜めにかけられていて、顔が今ははっきりと見える。凛々しくて、はっきりとした目鼻立ちの精悍な人だ。てっきり何か顔を隠したい事情でもあるのかと思ったけれど、そういう様子はない。
「あの………………え?」
「おう、ワシがここにおるんが不思議っちゅう顔しとるな。いや何、従姉の仕事の手伝いでな。太刀川水鶏じゃ。会っとるじゃろ?」
「あ、ああ!」
苗字が一緒だと思ったけど、従兄弟だったのか。
「ちょいとばかり調査仕事を終えて、今日帝都に帰る前にお前さんの顔でも拝んで行こうと思っとったらこれよ。随分えらいことになったのう」
今、太刀川さん――鳩児さんは完全に昭くんに背を向けている。鳩児さんは全然、昭くんのことが眼中にないみたいだ。
目の前で、刀を抜いて殺気を放つ相手が眼中になって、すごいな…………。
屋敷で会ったときもそうだった。目の前の明確な脅威に対して飄々として、かつ毅然と対処していた。
妖刀剣士はみんな、あんな感じなのだろうか。
わたしは、あんな風になれるのだろうか。
「てめえ、おい、人の話を聞いているのか!」
後ろで昭くんが叫ぶ。その声を完全に鳩児さんは無視した。
威圧感だ。
鳩児さんの気配が威圧感として、昭くんにすべて向かっているのが分かる。鳩児さんは何もせず、気配だけで完全に昭くんを圧倒している。だからこんなに、余裕なんだ。
「よし、立てるか。いやまだ立たなくてもいいかの。体を起こせるか?」
「は、はい……」
なんとか、上半身を起こす。不思議と、痛みは薄い。
「よし、じゃあお前さんに渡すものがある」
じゃーんと、おどけながら鳩児さんはわたしの前にアタッシュケースを出す。細長いそれは、刀を納めるのに使われているもので。
わたしに渡されるこれの中身は、ひとつしかない。
「無骨丸…………」
ケースの中には、無骨丸が収められていた。
「お前さんは今、決意を目に秘めている」
わたしの目を見て、鳩児さんは話す。
「それは自分で何かをなそうという人間のする目じゃ。何かを決意した、強い人間の目じゃ。今のお前さんに、ワシの助太刀はこれ以上いらんな?」
「わたしは………………」
無骨丸を手に取る。ズシリと、重い。
これは、責任の重さだ。
一度目は、うやむやにした。
刀に選ばれたという事実を。二人の人間を殺したという事実を。たったひとり生き残ったという事実を。
全部、うやむやにした。
二度目はない。
たぶん、これを抜くということは、決意するということだ。
わたしのこれからの生き様を、決めるということだ。
わたしは、決めた。
決意なら、とっくにしていたから。
無骨丸を抜く。鞘はケースの中へ戻す。廊下の電灯に照らされて、無骨丸はギラギラと光る。
気配が濃くなる。無骨丸の、静かで重く、ずっしりとした気配。
その気配が少し、怒っているようにも感じた。
あるいはこの怒りの気配は、わたしのものか。
「ためらうなよ」
鳩児さんは、最後に付け足した。
「あれはもう、鬼じゃ。一度鬼になった者は、元には戻らん。妖刀に繋がっている両手と、それから首を斬り落とさない限り、死ぬこともない」
たぶん、そうだとは思っていた。家定さんはそうやったら死んだし、繭子さんはそうしなかったから生きていた。
「せめて斬ることだけが、ワシらにできる供養じゃ。荼毘に付して来い」
「はい」
返事を言うか言わないかのところで、わたしの体は動いていた。
「なっ…………」
面食らったらしい昭くんが咄嗟に刀を持ち上げる。わたしはいつの間にか無骨丸を振り下ろしていて、刀同士がぶつかり合う。
「てめえ、その動き、どうして…………」
質問には、答えない。
わたしの体は、わたしの体じゃないみたいな力を出して、鍔迫り合いの状態から思いっきり昭くんを押しのけた。さっきの彼との力比べが冗談みたいに、わたしの方が今は力が強い。
「遅い」
分かる。まるで無骨丸の洗練された動きが、わたしの頭までクリアにするみたいに。昭くんの動きが鈍いのが、手に取るように分かる。
踏み込んで、下から上に斬り上げる。まず、左腕を斬り飛ばした。
「ぐあああああっ!」
大仰に吠えた昭くんは、わたしに背を向けて一目散に逃げだした。方向は、昇降口。
足元に転がっていたバケツを無骨丸の刃先ですくい上げて、投げ飛ばす。バケツはキレイに彼の頭に嵌まって、視界を塞いだ。
少し距離ができたところで、両足に力が加わる。わたしは、無骨丸の動きに逆らわなかった。
走り抜ける。バケツを外そうと必死になっている隙に、昭くんを追い抜いて、追い抜きざま、両足を切り落とす。
「や、やめっ、ぎゃああああ!」
体のバランスを崩して、地面に転がりそうになるところで、わたしは振り返り、もう一回無骨丸を振う。ギリギリのところでバケツを脱いだ昭くんが、右手に持った刀で防ごうとする。そのガードごと、一息に切り崩す。
刀の刀身と、彼の右腕とを、同時に切り落とした。
わたしたちは、いつの間にか校舎の外を出て運動場のすぐ近くまで来ていた。遠くに、避難していた生徒たちがこちらを見つけて騒ぐ声が聞こえる。
「やめ、やめて、やめてくれ…………」
必死に体を起こしながら、昭くんは懇願する。
「なんで、俺、これ、死ぬ、死んじまう……」
「そう、だね」
殺すしか、ないのか。
無骨丸が、振り上げられる。抵抗するための力が、まるで入らない。筋繊維の一本まで、無骨丸に支配されている。
「殺すのかよ……夜光珠! 俺を、クラスメイトだった俺を!」
「…………………………」
希望は、ない。
そんなものはない。
あるのは願いと決意だけ。
あのときこうすればという過去に対する後悔も、ひょっとしたらこのまま生かしておけば剣鬼から戻るかもしれないという未来に対する希望もない。
あるのは今、ここで悲しみを斬り落とすという決意だけ。
「ごめん」
無骨丸は、振り下ろされた。
今回の事件に対する死者十五名という数を、どう評価するべきかは分からない。負傷者は百名をくだらなかったけれど、死者は家鳴屋敷の総数よりは少なかった。
少ないと、言っていいのか。
幸いだったのは、あのとき三年三組の教室にいた周子ちゃんたち数名は一命を取り留めたこと。担任の先生も入院はしたが命に別状はない。
事件は、受験ノイローゼに陥った宮本昭という少年の暴走という報道をされ、そう処理された。被害者の葬儀は合同で、大々的に行われた一方、加害者である昭くんの葬儀は、自宅でひっそりと、同日に行われた。
「いてて…………」
わたしは頬をさすりながら、帰りの道をとぼとぼと歩いていた。今回の怪我は右腕が全治一か月。その他足や腕の怪我は新しく負ったというより、前の治っていない怪我悪化するという状態を取った。けれども前回のように筋がズタズタになって苦しむということはなかった。真剣相手にホウキの柄で挑んだにしては、上々の成果だったかもしれない。
袋に入れた肩から下げた無骨丸が重い。あの後、鳩児さんはいつの間にかいなくなっていて、仕方ないので無骨丸はわたしが預かっている状態だった。せめてこれは、回収してから帰るべきだったんじゃないだろうかあの人は。
「そういえば…………」
小学生の頃は、よく昭くんの家に周子ちゃんと一緒に遊びに行ったな。あれ以来か、この道を歩いて家に帰るのは。
そうそう、ここの角を曲がると公園があって、そこでもよく遊んで………………。
「うむ。やはりコンビニの肉まんは美味いのう!」
公園のベンチの前で、誰かが焚火している。
いや、誰かじゃなくて。
鳩児さんじゃん。
何してんのあの人。
「おおう、夜光珠の! こっちだ」
待ち人はどうやらわたしだったらしい。こっちに向かって手を振る。
「えっと、なにしてるんですか?」
「コンビニの肉まんに舌鼓を打っておったところじゃ!」
「いやそれは見て分かるんですけど」
それ以前だよ、知りたいのは。
仕方なく近づく。焚火の勢いは意外と強く、少し近づくと、この星が輝く寒空の下では暖かかった。
けど、この焚火…………。
「刀、ですよね?」
この人、公園の地面に刀刺してるんだけど。その刀の刀身が燃えて焚火の代わりになってるんだけど。
「おう。ワシの『燐火ノ太刀』は刀身が燃えるだけの刀じゃからの。こういうときは暖を取るのに困らなくていいのう!」
「絶対後で怒られるやつだ…………」
誰に怒られるかは知らないけど。こんな粗末に扱っていいの? 妖刀って…………。
「それで、どうした?」
鳩児さんはわたしの頬を指して言う。
「赤くなっとるぞ。誰ぞに殴られたか…………」
「はあ、まあ…………」
さっきまで、昭くんの家にいた。
葬儀をしていると聞いたから、足を運んだのだけど…………。
「人殺しと言われて、殴られまして……」
今も、耳にこびりついている。
人殺し。
「どうして昭が死ななきゃいけなかったの!!」
人殺し。
「殺さずにすます方法もあったんじゃないのか!!」
人殺し。
「妖刀に魅入られているのは、どっちだ!」
いろいろ、言われた。
それはもう、いろいろ。
でも、辛かったのは、何かを言われたことよりも、昭くんの家族が発している気配で……。
「気配が…………」
「気配…………? まあ、ここ座れ」
「はい…………」
横に、腰掛ける。
「気配が、もう、取り返しのつかないところまで淀んでいました。今は、全員の気配がわたしに向いているから、そうでもないですけど…………。あの気配は……」
知ってる。
わたしの両親もそうだったから。
「やがて、耐えられなくなる。責任を負わせる相手がわたしひとりしかいない事実に耐えられなくなる。そんな気配でした。しばらくすれば、わたし以外のもっと身近な誰かに責任を押し付けて、そうしないと耐えられないくらい、淀んだ気配があそこには充満していて」
昭くんの死の、責任は取るつもりだった。
たとえ剣鬼になっても昭くんは昭くんで、だから責任から逃れられるとは思っていなかった。
でも…………。
「昭くんの家族の分までは、責任を負う覚悟が、できてなくて……」
やがて崩れる気配。もうヒビが入り始めていて、取り返しのつかないところまであと一歩の気配。
彼の家族をああしてしまった責任が自分に降り注ぐとは、ちょっと、考えていなかった。
「ほれ」
目の前に、肉まんが差し出される。
「腹が減っては悪い方向にしか物事を考えられんくなるからの。まずは腹ごしらえからじゃ」
「………………ありがとう、ございます」
受け取って、一口齧る。
温かくて、おいしい。
でも、なんでだろう。
少し、しょっぱいな。
「ぐ、ううううううぅ」
目の前が、かすむ。喉の奥が痛くて、うまく咀嚼したものを飲み込めない。
泣いているのか、わたしは。
涙がこぼれて、耐えられない。
なんで。
なんで。
昭くんが、周子ちゃんが。
クラスのみんなが、学校のみんなが。
こんな目に遭わなきゃいけないんだ。
いや、学校のみんなだけじゃない。
犬井くんも、鳳さんも、為定くんも。
なんで、こんな不幸な目に遭うんだ。
いったい誰が、みんなをこんな目に遭わせているんだっ!
「整理局が来て、宮本のと言ったか? やっこさんが振るっていた刀を回収したぞ」
「……………………はい」
警察とは違う様相の人達が来て、昭くんから刀を回収するのを見ていた。
そういえば、あれ?
結局、あの妖刀は?
「あの妖刀、なんだったんですか?」
何か能力があるものだとばかり思っていたけれど、昭くんは刀をただ振うだけで特殊な力は使わなかった。
「あれは未満刀と言うての」
わたしの疑問に、鳩児さんが答えてくれる。
「妖刀未満の刀、というわけじゃの。妖刀の生まれる過程で、そのような中途半端な刀が生まれるんじゃ」
「そんな刀が…………」
「中途半端とはいえ妖刀じゃ。お前さんの無骨丸やワシの燐火ノ太刀ほどではないが、人を選ぶ。しかしの、未満刀に選ばれた人間は他の妖刀にも選ばれる確率が高いんじゃな。じゃから、花菱では未満刀を用いてその者が妖刀に選ばれる素質を持っているかどうか試しておる」
「それが…………」
「そうじゃな、本来の選抜入試の一部じゃ」
肉まんを一口齧り、飲み込む。
「とはいえ妖刀は妖刀じゃ。通常のそれほどではないにせよ、宮本の例のように、剣鬼化する危険性は低いが零でもない。あそこまで刀に呑まれるケースも稀じゃがの」
「そんな…………危険なものを花菱は
信じられない…………というほどでもない。家鳴屋敷の一件を考えれば、ありえそうなことだ。
しかし、鳩児さんは首を横に振った。
「さすがの花菱もそんなことはせん。未満刀は学校から持ち出すのを禁止されておる」
「え?」
じゃあ、あのとき持ち込まれたのは?
いったい…………。
「お前さんは人首製鉄から刀剣類が盗まれたというニュースを知っとるか?」
「え…………はい」
そういえば、為定くんとタクシーに乗っているとき、そんなニュースを聞いたような。
「その盗まれた刀剣類というのがな、未満刀なんじゃ」
「なっ………………」
百本近く盗まれたと聞いているぞ!
全部未満刀?
今回の昭くんが持っていたのと、同じような……。
「整理局で犯人を追っておるが……」
「分かっているんですか、犯人」
「まあの。おそらく、
「地濃…………」
「今、政府も警察も一丸となって追っている不逞の輩での。今風に言えばテロリストかの。妖刀を武力に国家の転覆を狙っておる」
地濃。地濃。どこかで、聞いたような。
「妖刀を、武力に?」
「ああ。刀剣整理局、ひいては政府の刀狩りに不満を持つ輩や、妖刀剣士に恨みを持つ者をまとめ上げての。実は家鳴屋敷で整理局が妖刀の確保を急いだのも、地濃が関係しておる」
「それは……」
「数年前から、政府が所在を把握しながらも確保できていない妖刀――家守定や糸紡のようなものじゃな――それらが強奪されたり、あるいは持ち主ごと消える事態が相次いでおる。おそらく、地濃が強奪したか、言葉巧みに持ち主ごと一味に引き入れておるのじゃろう。さらにワシら妖刀剣士の頭が痛いのは、同じ妖刀剣士のうちの何人かも地濃の甘言に騙されたのか、姿をくらましておることじゃな」
それで、所在がはっきりしている家鳴屋敷の妖刀の確保を急いだというわけか。
「花菱の小野から聞いたが、お前さんを妖刀剣士にするという話に賛否が分かれていた原因のひとつがそれじゃ。お前さんを妖刀剣士にしても、地濃に引き抜かれかねんと言うての」
「それは、ないですよ」
思い出していた。思い出した。
『Kosaku T』!
あの白スーツの男だ。妖刀を額縁中学に持ち込んだ、あの男! あの男が地濃高作だ。
あの男のせいで、昭くんは…………。
「額縁中学に未満刀を持ち込んだのは、地濃高作です」
「……本当か?」
「はい。おそらくは……」
頭が冴える。
意識がはっきりとする。
さっきまでのショックと悲しみは、消えていた。
「鳩児先輩。わたしは…………」
人を動かすのは、いつだって。
かくありたいという願いと。
かくあるべきという決意だ。
「妖刀剣士に、なれるでしょうか。先輩みたいに、剣鬼を見ても臆さずに構えていられる、本物の剣士に」
「ワシが答える必要は、ないじゃろ?」
誰かの確証も、保証もいらない。
選ばれていようといなかろうと、やると決めたのだから。
「わたしは、なりたい。妖刀剣士に。無骨丸を振うだけの力を、手に入れたい」
そして、見定めた敵を、打ち倒す。
行こう。
花菱高校へ。
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