二ノ三 選ばれた者と選ばれたい者

 退院して、地元愛知県に戻った頃には、とっくに二月を過ぎていた。まだ松葉杖はつかないと歩けなかった。いや、杖をつく腕だって痛いから、本当は出歩いて学校に行ったりとか、したくないんだけど。ちょうど中学三年生は受験シーズンでろくに授業もないから、休みたいくらいだ。

 それでも学校に行ったのは、クラスメイト達に会いたかったから。

 生きて帰ったという実感が欲しかったからだ。

「いやあ、しかしあんたが花菱にねえ」

 けれども久しぶりに学校に行って、周子ちゃんに会うと早々、そんなことを言われてびっくりする。

「な、なんでそのこと……」

「今、学校中じゃその話題で持ち切りだよ? あんたが花菱の選抜入試に受かったって。それにしても水臭いじゃない。なんで花菱受けるって言ってくれなかったの?」

「………………え、ええっと」

 混乱する。たぶん、これも小野さん辺りが口封じと辻褄合わせのためにしたことなのだろうけど、わたしは花菱の選抜試験を受けていて、それに合格したという扱いになっているらしい。辻褄合わせなら最初にそうと言ってほしい。

 そもそもわたし、選抜入試は受けていないし。受けたのは選抜入試という名目の地獄通過試験だ。

「そんな話、誰から聞いたの?」

「あの動ける豚」

 担任のことだ。

「花菱から連絡があって、あんたが合格したってわざわざ伝えに来たんだよ?」

「そ、そうなんだ…………」

 いろいろ、外堀を埋められている様な気がしてならない。

「おい、聞いたぞ夜光珠!」

 教室に入ると、興奮気味に眼鏡を押し上げながら昭くんもこっちに駆け寄ってくる。

「お前、受かったんだって? ていうか選抜入試って、選ばれたごく一部の人しか受けられないんだぞ? どうしてお前が?」

 そっか。昭くんは花菱高校の受験を目指しているから、周子ちゃんよりは疑うよね。

 どうやって疑いを躱そうかと思案していたが、すぐに昭くんがペラペラ喋る。

「どうだった入試? どんなことされた? どんなやつがいた? 俺たちの受験の参考になるから教えてくれよ!」

 ああそうかそうくるのか!

 どうしよう。まさか実は騙されて危ない橋を渡らされた挙句、蜘蛛頭の女性相手に妖刀振り回してましたとは言えないし…………。

 ていうかあらためてなんだその状況!? 今になって段々腹が立ってきた。

「うん、いろいろ、いろいろね、あったよ」

「いろいろって…………」

「また今度話すから!」

 特に行く当てもなかったけれど、急いで教室を飛び出した。行く先がなくて右往左往した結果、今の時間は使われていない武道場に足を踏み入れた。

 武道場は冷たい冬の空気が漂っていてうすら寒かったけれど、誰も人がいないらしくてホッとする。武道場の隅に腰掛けて、わたしはまた、帝都であったことを少し思い出した。

 外堀を埋められているという話なら、選抜入試に受かったと学校中に触れ回られる以前から、とっくに埋められている………………。



「あの…………妖刀剣士って」

 為定くんと天下さんと一緒に、三振りの妖刀、家守定、糸紡、無骨丸の妖刀検ようとうあらためを行った日のこと。為定くんは衝撃的なことを口にした。

 三振りの妖刀を整理局へ納める条件のひとつとして、わたしを、無骨丸の妖刀剣士にすることを提示したのだ。

「妖刀剣士って、あれですよね。花菱高校で育成している、妖刀を持つ剣士。わたしに、それになれって言うんですか?」

 話が、順序がおかしい気がする。

「わたし、まだ花菱にも入学していないんですが……」

「夜光珠さんは妖刀剣士について詳しく知らないようなので、まずはそこから補完しましょうか」

 天下さんが一歩前に出る。

「花菱高校は確かに妖刀剣士を育成するための学校ですけど、いわゆる専門学校のようなところじゃないんですよ? 第一、妖刀剣士は妖刀に選ばれて初めてその職に就くので、専門学校のようなところに通う必要はありませんし、何かしらの資格がいるわけでもありません」

「えっと、じゃあ……」

「妖刀に選ばれた時点で、妖刀剣士なんです。だからなるとかならない以前に、もう夜光珠さんは妖刀剣士と言ってもいいんですよ」

 無茶苦茶な展開だ。

 妖刀剣士を育成する学校に行くか行かないかという話で悩んでいたつもりが、一足飛びだ。

「ただ、先ほども説明した通り、妖刀選抜というものがあります。これは全国の腕に覚えのある剣士から、我こそはという人物が集って妖刀に選ばれるかを試験するものです。花菱高校はこの妖刀選抜に出られるよう、生徒の剣術を鍛えるのが基本的な教育方針になるんですね。また、花菱と刀剣整理局は縁故がありますから、妖刀選抜の際、優先的に花菱の生徒を何名か選出させてくれるなどの特権があります」

 つまり、正確には花菱高校は妖刀剣士を育てる学校というより、そこに通えば妖刀剣士になる確率が上がる学校というわけだ。

「じゃあ、天下さんもそうやって妖刀剣士に?」

「ああ、いえ」

 彼女は首を横に振って、帯びていた刀に手を置く。

「わたしは違うんです。わたしは最初から、この『村雨丸』に選ばれていましたから」

 どういうことだろう。

「わたしが今回、夜光珠さんの妖刀検に同行した理由のひとつがこれです。つまり今の夜光珠さんはかつてのわたしと同じような経緯を辿っているので、説明が簡単なんですね」

 わたしの例をご説明しましょうと、天下さんは帯刀していた刀をベルトから抜いて見せてくれる。

「この村雨丸は、わたしの一族に代々伝わる妖刀でした。そして幼い頃、既にわたしはこの村雨丸に選ばれていました」

 そういう場合、どうなるのか。

「整理局が妖刀にそれぞれ妖刀剣士をひとりつけようとしている理由は二つあります。ひとつは妖刀の運用。あけすけに言えば軍事力として妖刀を使うことを目論んでいるわけですね。でもそちらはあまり重要ではありません。というより、軍事力云々は、妖刀による剣鬼化について誤魔化すための方便ですから」

「えっと、じゃあ」

「妖刀、そして妖刀剣士という存在は公になっていますが、政府はさすがに剣鬼の存在までは公にできないようでして。そこで剣鬼を狩るという妖刀剣士の役割のひとつを隠すために、軍事力と言っているわけなんです」

 そりゃあ、あんなものが存在すると公にしたら帝国中パニックになること必至だから、隠すしかないだろうけど……。

「ですから、最も重要な妖刀剣士の仕事は、妖刀の管理にあります」

「管理?」

「はい。夜光珠さんも既にもご存知の通り、妖刀は選ばれない人が抜けば、場合によっては剣鬼化という事態を引き起こす厄介なものです。そこで妖刀を正しく運用できる人間に常時帯刀させることで、その危険性を下げようというわけです。それに妖刀は数が多いですから、ひとりひとりが自分の目で見て管理するのが安全で確実なんですね」

 それは、まあ、分からないでもない。そもそも選ばれた人しか抜けないんじゃ、研いだり磨いたりもろくにできないだろうし。それができる人間、つまり妖刀に選ばれた妖刀剣士に管理させるのは合理的だ。

「その観点から言ってしまえば、既に妖刀に選ばれた人間がいる場合、つまりかつてのわたしや今の夜光珠さんのような場合、新たに妖刀剣士を選出するよりは、既に選ばれたあなたを妖刀剣士とする方が合理的なんです」

「そ、そんなものですか?」

「妖刀選抜も大変ですから。何回やっても妖刀剣士が決まらない場合もありますし、それに剣鬼化して会場が滅茶苦茶ということも……。妖刀選抜にはそうしたリスクがあるので、既に妖刀が人を選んでいるところに、新しい妖刀剣士を見繕うのは二度手間なんですよ」

 言われてみると納得しそうになる理屈だけど…………。

「とはいえ、夜光珠ちゃんを本当に妖刀剣士にするかは結構議論のあるところでね」

 太刀川さんが言葉を挟む。

「さっき小野から聞いたよ。結構賛否両論あるって」

「小野さんが…………」

 だから不確定って、あのとき小野さんは言っていたのか。

「まず第一に、本当に選ばれているのかという疑問があった。なにせ屋敷での戦闘を見たのは当の本人を除けばそこの家鳴くんだけだ。妖刀に選ばれたのではなく、妖刀に魅入られて剣鬼化しているのではないかという疑念があった。でもそれはさっき確認した通り、なさそうだ。妖刀を抜くのを怖がる剣鬼はいない」

 それなら、安心だけど。

「二つ目の疑問は、妖刀剣士の仕事の問題。無骨丸を用いての戦闘で大怪我を負ったでしょ? それじゃあ妖刀剣士の目的である妖刀の安全な管理と運用をこなせているとは言い難いってね。だから別の剣士を見繕うべきだって意見も多かった」

「それは…………」

 インドア派がこんな鉄の塊振り回したら怪我するに決まってるって。

「で、ここからが重要。その二つ目の反対意見に対し、花菱高校は夜光珠ちゃんを入学させ、妖刀剣士として十分な力をつけさせるという方針を打ち出した」

「だから、わたしを合格にしたんですね」

「そうだろうね。もし夜光珠ちゃんが花菱に入学すれば、在学五人目の学生妖刀剣士になる。五人も花菱に妖刀剣士がいるのは短い歴史でも最多だから、その栄誉を高校側は欲しがってるってのもある。それに夜光珠ちゃんが妖刀剣士として学校に通い、卒業すれば妖刀剣士を輩出したっていう花菱の実績になるからね。妖刀剣士の排出なんて妖刀に選ばれるかどうかって運要素の大きな代物だから、確実に実績となる君を花菱が逃す手はない」

「そういう経緯で、わたしも村雨丸とともに花菱に入学を許されたわけなんです」

 横からひょいと、天下さんが顔を出す。

「じゃあ、わたしと天下さんの場合、順番が逆になるわけですか。妖刀剣士になるために花菱に入学するんじゃなくて、妖刀剣士として力をつけるために花菱に…………」

「そういうことになります」

 でも…………。

 とどのつまり、重荷を背負わされたことには変わりがない。

 さっきまでは、自分を騙していた学校にそれでも入学するかしないかという話だったのに……。いつの間にやら、妖刀剣士になるかならないかというところまで進んでいる。

「事情は聞いています」

 為定くんが口を開く。

「お姉さんは、花菱高校に騙されてぼくの屋敷まで来たと。そこで死ぬような目に遭いました。ですから、花菱高校へ入学するのに抵抗はあるかもしれません。ですが、もし無骨丸を受け取っていただけるのなら、花菱高校への入学はほとんど必定となります」

 それは、そうだろうけど……。

「ぼくの我儘をお許しください」

 彼は頭を下げた。

「本音を言えば、ぼくは、両親の守った刀を政府に渡したくないんです。そもそもの発端は整理局の人間が押しかけて来たことですから、当然でしょう。ですが、今のぼくに刀を守る力はない。だったらせめて、こちらが有利な条件を提示できる中で、信頼できるお姉さんに一本でも預かってもらいたいんです」

「為定くん……。でも、わたしは、君に信頼されるようなことは…………」

「お姉さんは、ぼくを庇ってくれたじゃないですか」

 それは、無骨丸を抜く直前のことを言っているのだろうか。

 あのときは、自分でも何を基準に動いているのか分からなかったから。

「それに、無骨丸が認めています。だったら、ぼくはその結果を信頼します」



 結局、答えは待ってもらうことにした。だから、無骨丸は今手元にない。どのみち、無骨丸については他の二本よりも情報が少ないから検査をいろいろする必要があると言っていたので、太刀川さんのところに預かってもらっている。

 妖刀剣士。

 妖刀剣士か…………。

 今こうして、受験勉強もせずにのらくらしているところからも、もう半ば答えは出ているような気がした。学費の面でも、花菱に通うという選択肢は悪くなかった。それに入院している間に高校入試の日程はのっぴきならないところまで進んでいて、わたしはほとんど入試さえ受けられない状態にある。

「ああそれと」

 わたしの背中をぐいぐい押すように、天下さんはこんなことも言った。

「妖刀剣士は立派な職業ですので学生の身分でもきちんとお給金が出ますよ。確か一年目は、三十万くらいは出ましたね」

「三十万……」

「もちろん月収です」

「げっ………………!」

 大卒の初任給が二十万超えないとニュースでやっているご時世に、三十万は魅力的すぎる。

 無論税金からだろうけど、よく無駄遣いって批判されないな。

 ともかく、魅力的なのは確かだし、いろいろな事項を加味すれば、わたしは為定くんの提案を飲むしかないような気がした。両親を殺したわたしを「信用できる」とまで言ってくれた相手に対して報いる手段は、それしかないような気もするし。

 でも、決心がつかない。

 今でも、思い出すと震える。犬井くんが殺されたあの瞬間。鳳さんがわたしたちを庇って死んだあの場面。ぺたり、ぺたりという家定さんが変異した者の足音。繭子さんだった者の、蜘蛛になった顔と、最後に見せた、下半身まで蜘蛛になってしまった異形の姿。

 妖刀剣士の仕事のひとつは、剣鬼を倒すことだと言っていた。天下さんはさらっと言ったけれど、それは命懸けの仕事のはずだ。現に家鳴屋敷では整理局の実働部隊十人と、わたしと一緒に試験を受けた二十三人が死んでいる。

 たった二体の、剣鬼相手に、三十三人殺された。

 あんなものと、また戦えって?

 無理だ。絶対に無理。たとえ億という金を積まれても無理。妖刀に選ばれたという優越感や、信頼していると言ってくれた心地よさがもたらす酔っぱらったようなホワホワとした気持ちも、あの鬼たちの姿を思い出すと一瞬で冷める。

 怖いんだ。

 怖い。

 入院していたときだって、怖くて仕方なかった。夢に何度もあの人たちを見た。日が暮れると病室の扉をそろりと開けてあの鬼たちが入って来るんじゃないかと思えて仕方なかった。殺したはずだけど、現に、殺したと思った繭子さんは生き返って襲ってきたんだから。

 廊下をあの鬼たちが彷徨っているんじゃないかと思うと、まともに歩けない。夜中に何度も起きて、ひどく汗をかいた。それは今でも、あまり変わっていない。

 だからわたしにはきっと、無理なんだ。

 たとえ無骨丸の能力が自動戦闘で、わたしがその能力を十全に活かして、怪我もなく運用できるようになったとしても、あの殺されるかもしれないという恐怖からは逃げられない。たぶん、無骨丸はわたしが恐怖で体をこわばらせても、勝手に動かしてくれるだろうけど、それでも駄目なものは駄目だ。

 学校がどうした。学校に行くのがそんなに大事なのか。

 学校は、命を張ってまで行くところじゃない。

 だから、諦めるのがいい。

 そう決心がつくと、さっきまで周子ちゃんや昭くんにいろいろと聞かれて、どう誤魔化そうか考えていたのが馬鹿らしくなった。そうだ。わたしは花菱になんていかない。その決心がついただけ、今日学校に来た意味はあったかもしれない。

 チャイムが鳴る。授業が終わったのだ。今の休み時間の内に、教室に戻ろう。

 松葉杖をついて武道場を出る。武道場は体育館の横にあって、一度外へ出ないと行けない。渡り廊下を通って体育館の横を歩いていると、正面からてくてくとジャージを着た先生がやって来る。

「おお、夜光珠。こんなところで何してるんだ?」

 動ける豚……じゃなかった担任の先生だ。

「さぼりとは感心しないな。まあお前はもう受かってるから気楽なもんだけどな!」

「いや…………」

 担任はやけに機嫌がいい。

「ご機嫌ですね」

「そりゃあな。まさか教え子が花菱に合格するなんて夢にも思わなかったし。我が額縁中学の歴史から言っても、たぶん初めてのことだからな!」

 そりゃあ花菱は設立十年足らずの学校だから、初めてなのは当然なんじゃないだろうか。特にうちは平凡な公立中学で、花菱が求めるような剣の腕が冴える人材なんて通ってないだろうし。

「いやあめでたいめでたい。他の連中の受験にも弾みがつくってもんだ」

「いや、その……」

 背中をバンバン叩かれて痛かった。花菱には行かないと言おうと思ったけれど、それを言うタイミングがなかった。

 そのときだ。

 ふと、背筋に悪寒がした。

「…………………………っ」

 担任に叩かれ過ぎて傷が痛んだ、のではなく。

 気配が、近づいている。

 この気配は…………似ている。

 家鳴屋敷で感じたものに。

 恐怖がぶり返して、体が強張る。必死に感覚を研ぎ澄まして、気配の大元を探る。気配はどこか遠いところから、こちらに高速で近づいてきている。

 体育館横の渡り廊下から、中学の職員用通用門が見える。そこに一台の、黒塗りの車が滑らかに入ってきた。気配の元は、あそこからだ。

 車が駐車して、人が下りてくる。

「あれは…………」

 下りてきたのは白いスーツに白い帽子という、白づくめの男だった。遠目でいまいち分からないけれど、年は、若いようにも見え、何百年も生きているように見える。そんな、どこか超然的な顔立ちをしている。

 その男からは、ほとんど気配はしない。なんだろう、この気配の薄さは。原因を考えていると、男が細長いアタッシュケースを持っているのに気づく。まがまがしい気配は、そこから漏れている。その気配が、男の気配を消してしまっているのだろうか。

 でも、あの細長いアタッシュケースは、研究所で見たのと同じだ。妖刀を持ち運ぶのに使っていたような……。

 じゃああれは、妖刀?

「お、来たな」

 来客を知っていたのか、担任が呟く。

「あれは何なんですか?」

「真剣だよ」

 真剣? 普通の?

「いやあ、花菱も太っ腹というか、サービスがいいな。うちが普通の公立中学で真剣を一本も持ってないって知って、参考に一本貸し出してくれるんだとさ。花菱の試験では真剣を使うとかで、試験前までに一度も持ったことがないんじゃさすがに受験する連中がかわいそうだからな」

「そ、そうなんですか…………」

 本当に、あれは普通の真剣なのか? 明らかに気配がおかしい。

 でも、案外そんなものなのかな。妖刀だって、妖刀検のときは家守定と糸紡には気配を感じなかったし。わたしが気配を刀の気配を感じるようになったのは、それが妖刀だからじゃなくて、家鳴屋敷という異常な場所に置かれたショックからだったのかも。いつから自分が人の気配を察知できるようになったのか覚えていないせいで、この力も詳細が不明だ。

 そういえば天下さんはわたしの、気配を察知できるという話を何か知っていることのように聞いていたけれど、あの態度はなんだったんだろう。

 来客の男が昇降口から校舎に入る直前、こっちを見た、ような気がした。

 寒い、冷たい目をしていた。

 なんだ、これは。

 すごく、嫌な予感がする。

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