堕ちた人斬り1

日向:いい加減に諦めなさいな。貴方たちの企みは阻止されました。


敵:随分と余裕ぶっているんだな。それとも…分かってないだけか……ひひっ。


日向:………どういう、意味ですか?そもそもイドは随分前に此処へ突撃したはず。現に手下は壊滅したと報告も受けました。


敵:それが貴様を油断させる嘘だとは考えもしなかったらしいな…くくっ。残念だが奴なら………とっくに負けたんだよ!


日向:下手な嘘は止しなさい。そもそもイドが貴方達ごときに屈するわけがない!


敵:………はっ。なら見るがいい、貴様の信じた男の末路をな!


(物陰から現れた人影は日向を一瞥しても何の反応も示さなかった。)


日向:………い………イド……?


(自分の名を呼ばれても認識出来ないのだろうか。濁った瞳は日向を捉えようとしない)


イド:………何用か。主。


敵:くくっ……お前の連れだった奴だ。挨拶したらどうだ。


イド:………とぎ…?わしにゃ……誰もおらん。主以外…誰も。


日向:そ、そんな……イド!私です、日向です!覚えていないのですか!?


(イドは少し首をかしげたが、やがて表情が凍りつき、音無を引き抜いた。)


イド:………そうか。おまんが、日向……!倒すべき敵…


敵:どうだ?俺が作った薬の威力は……(手に小瓶を持っている)


日向:く、薬……ですって?まさかイドは……!


敵:もう、人格すら壊れ…記憶も抹消した。可愛い俺の操り人形よ。さあ、殺れ……!


イド:………はい。主。仰せのままに…


(次の瞬間、イドは間合いを詰めて斬りかかって来た。日向は刀を引き抜く事すらままならず…辛うじて鞘で攻撃を受け止めたが……弾き飛ばされてしまった)


日向:イド……お願いです!止めてください!私は貴方と戦いたくは無いんです!


(イドは日向の声など気にも止めていない。丸腰の日向を前に振りかぶり、真っ直ぐ斬りつけた)


日向:………!しまっ……た!


(衝撃に備えガードするが、攻撃は来なかった。恐る恐る目を開けると、人形の音無がイドを切り捨てる瞬間を目撃した)


イド:………ある……じ……


(最期までイドは日向を省みる事もなく息絶えた。日向はショックからイドに駆け寄ることも…憎むべき敵を詰ることも出来なかった)


音無:………日向さん。いつまでそうしているつもりですか。まさかこのまま殺られるおつもりで?

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