異世界の物語5

カランド:……うーん、痛いなぁ。肋骨数本やっちゃったじゃん。煙草咥えてなかったら立ってられないよ。


(カランドは折れた場所をそっと撫でると煙を吐き出した)


昔、君が僕の頭を撲った時に…なんで気絶したか知ってる?もちろん痛みで気絶した訳じゃないよ。


だって、僕が煙草を咥えてる間…痛みはほとんど感じなくなるからね。人前だと……げほん!咳が止まらなくなっちゃうけどさ……


話が逸れたね、普通に脳震盪さ。あの時は本当に参ったよ。まさか僕の気配察知と予測回避が効かないなんて。さすがに死んだと思ったよ……


(……や、ホントに。レオン君が居なかったらトドメを刺されてただろうし)


おっかしいなぁ。君とは同期2年の仲なのに……動きが全然予測できない。細かい事が気になる性分だからさ、観察眼は悪くない筈なのに。


カロライン:笑止。貴方の能力を見越して戦闘スタイルは変えてあるわ。


カランド:……ふーん、そっかぁ。引き出しが多いのは凄い事だ、うん。さすが同期トップ、一番敵に回したくない相手だと思ってたけど。


カロライン:………もう良いかしら?そろそろ貴方の長話にうんざりしてきたの。終わりにしましょう、長い鬼ごっこは。


カランド:うん、長々とごめんね。終わりにしよう……逃げ回るの、疲れちゃったから。


(吸殻を投げ捨てたカランドは、かつての同期であるカロラインを真っ直ぐ見据える)


………ふぅ、痛いから手加減とかできないけど許してね?


カロライン:………あら、この私に勝てると思ってるのかしら。


カランド:生憎、今はのんびり死んでる暇は無いからね。力ずくで諦めてもらうよ…!


カロライン:何を、愚かな……!


(数分の後、地面に伏していたのはカロラインだった)


………どう、して…この私が?


カランド:こんな形で、"セカンド"の力を行使することになるとは思わなかったよ。


カロライン:………何ですって…!?


カランド:必要が無いから今までずっと隠してきた。この力を活かせればと思って刑事になった。


だけどね……駄目だったよ。結局僕はお払い箱、こうして今、罪無き君をこの力で傷付けた……


僕に正義を背負う資格はない。

………君にはセカンドである僕を殺せない、諦めてくれるかい?


カロライン:………私が諦めようと、"監理局"が貴方を始末するはず。逃げ道なんか………!


カランド:うん。遅かれ早かれ来るだろうね…。勘違いしないで欲しいんだけど、僕はやりたい事がある。


それが済んだら、大人しく出頭するさ。罪を逃れるとは言ってないからね。


……救急車は手配しておくね。僕の一撃を受けちゃったから動けないだろう?せめて別れ際くらいは、マトモなふりさせてよ。


(そのまま彼女を省みる事もなく、カランドは立ち去った)


この痛みは……僕の罪なのかな。都合のいい正義を振りかざして、結局力に使われた。


"力に使われるも、力を使うも…人間の側の心の問題"だっけ?


僕は、やっぱり凡人だ。人より強い力を持ってるからって、傲ってたんだろう。

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