異世界の物語4

カランド:………ん?僕はダーツの的じゃないんだけどな。


(カランドはそう茶化すと、そのままベッドに横たわった)


……ごめん。ちょっと喋りすぎてさ、頭痛くなっちゃった。少し寝ていいかな?


(レオンの返事も待たず、すぐに眠ったカランド。念のために確認するが起きる気配がない)


レオン:………全く、動揺する気配がないんですね。目の前に連続殺人犯が居るのに射殺はおろか、戦おうともしない。


それで正義を語るとは……理解できません。所詮刑事はその程度、なのでしょうが。


(彼に関する疑念について思案を巡らせているうちに、レオンは眠ってしまった。数時間後にカランドが目覚めても、座ったまま微動だにしない)


カランド:(………そっかぁ、僕が気になって動けなかったんだね。悪いことしちゃったなぁ……)


(カランドは自らのコートをレオンに掛けると、これからどうすべきかについて思案を巡らす事にした)


(どうして、殺さなかったんだろう。寝てる間、僕は無防備だったはず。まだ気になる事が残ってたのかな……?


あ、僕がレオン君に会いたかった理由……言ってなかったっけ。でも、そんなに重要な事じゃないもんね…


あれから何日経ったのか知らないけど、ちょっと煙草吸いたいなぁ…)


(少しして、レオンは身体の重みで目を覚ました。彼のコートを布団がわりに寝ていたことに気がついた)


レオン:………いつから、起きていたのですか?これを被せたのはもしかして貴方ですか?


カランド:あ、おはよう。時間は分からないけど僕はさっき起きたよ。布団も被らず寝てるの、寒そうだったからつい。邪魔だったかな、ごめんごめん。


レオン:こんな重量のある物を被せられて、眠れるわけがないでしょう。


カランド:………レオン君って、以外と筋力ない感じ?僕、毎日それ着て走り回ってたんだけどなぁ。


鞄を持つのが嫌で、ポッケに必要なの全部突っ込んだらそうなっちゃったんだ。



レオン:私の仕事用鞄と同じ重さです。着衣のレベルを超越してますね…どう考えても。


カランド:…………ね、どうして僕のこと、殺さなかったの?


レオン:少し、貴方について調べました。

カランド・ベイカー……


凶悪犯罪対策第2課に配属されて2年、犯罪歴はなし。ちなみに私が手に掛けるのは凶悪な犯罪者のみです。故に今の貴方は獲物足り得ない……それだけです。


元々私は……誰かを傷付ける事は好きではありませんでした。戦いが好きだと勘違いされる事が多いのですが、ね。


カランド:なるほどねぇ。腕っぷしと戦いの好き嫌いは必ずしも比例しないって事か。


そうだ、僕が君に会いたかった理由ね、上層部が異常に恐れてる手掛かりが欲しかったんだ。だって、どう考えたっておかしいじゃない?


被疑者を見掛けたら即射殺しろ…なんて。僕でも越権を望んだけど、処刑迄はやり過ぎ。


そんなに疚しい事があるのかな。凶悪犯罪として君に目をつけられる自覚があるほどの。


レオン:心当たりは今のところありませんね。巧く隠し通しているだけかもしれませんが。


カランド:………そっかぁ。僕は、そろそろお暇するよ。漸くレオン君と話もできたし死なないように隠居するよ。


レオン:ふむ……少々待ちなさい。せめて、その傷が塞がったかどうかは確認しますよ。


カランド:……うん、ありがとね。


………さよなら、レオン君。個人的に応援してるよ。

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