異世界の物語2
カランド:見覚えのない天井……どうやら知らない建物に担ぎ込まれたようだ。撲られた額に手をやると、包帯が巻かれていた。
触れた瞬間に走る鈍痛は、これが夢でも幻でもないと証明している。休職中とはいえ、現職だった刑事に不意打ちを喰らわせるとは……
身体を起こして部屋を見渡そうにも、カーテンに遮られて外を窺う事はできない。
おぼろ気に理解できたのは、この建物が病院であること。そして、この部屋には僕ともう一人、誰かが居るということ。
さすがに目眩のせいで、ベッドから降りようとは思わないけど…
せめて、カーテンの向こうに居る誰かには会いたい。最低限、礼を言わないと。
………うう、さっき吸った煙草のせいで咳が止まらない。普段はレーダー代わりで便利なんだけど……今はただただ、しんどい。
咳をする度、撲られた額の傷に響く。
僕が咳を抑えようと奮闘していると、いつの間にか彼は…僕の真横に立っていた。
レオン:感心しませんね。頭部に傷を負っているのですから…寝ていないと駄目でしょう?
カランド:…………!君、は……
(カランドは驚きから、一層激しく咳き込んだ。まさか、こんな形で逢うことになるとは夢にも思わなかった。呆れた表情のレオンに背中を撫でられ、漸く咳が治まった)
レオン:私の顔に、何かついてますか?それとも……私をご存知なのですか?
カランド:……はぁ…はぁ…………もちろん、知ってるよ…
く、黒崎…レオン、君だよね……?
レオン:ほぅ………私のフルネームをご存知とは、貴方何者なのですか?
(カランドは答える代わりに、懐の手帳を渡した。自らの身分を証明していた警察手帳を…)
カランド:今は……休職中、だけどね。
レオン:………!刑事ですか……なるほど。
カランド:(むしろ、今は傷が癒えるまで伏せとくべきだったのかも知れない。だけど……仮にも命を救ってくれた人に、嘘をつくのは僕のプライドが赦せない。例えこのまま殺されてもね)
ごめんね。君に会いたいとは予々思ってたんだけど、まさか助けられちゃうとは……ありがとう。
レオン:完全に……想定外でした。貴方が警察に襲われている現場を目撃したため、保護しましたが…
……………ただで帰すわけにはいかないようですね。当然ながら、私の正体もご存知なのでしょうから。
カランド:……うん。君が関わった件については、全て目を通してる。その上で会いたくて…この近辺を彷徨いてたんだ。
別に君の成そうとしている"何か"を邪魔するつもりはない。僕を生かしておけないなら殺してくれても全然構わないよ。
どうやら組織からは完全にお払い箱にされたみたいだし、そんな身分じゃ遅かれ早かれ僕は死ぬんだもん。処遇は自由にしてくれれば本望さ。
レオン:………事なかれ主義の組織から離反させられるとは、かなりのレアケースですね。まさか貴方、犯罪者では………?
(カランドを見つめるレオンの表情が凍りついている。恐れではなく、怒りの感情だ……)
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