精神を司る者2
院長:ごめんね待たせて、ずっと起きてたんだろう?
卯月:………ええ。
院長:この事は…バカ弟子には内密にしてやってよ。全ての原因は…この僕の失態からきてるんだからさ…
卯月:重々承知していますよ。妬むつもりも、からかうつもりもありませんし…
院長:そ。いい弟を持ったもんだ……バカ弟子もね。
卯月:どうして…今日向に精神接合をしなかったんですか?その方が手っ取り早かったのでは…?
院長:あっはっは!それは………悪くないんだが、お互い隙だらけになっちゃうからね。それに……立ったまま接合しちゃったらバカ弟子、ぶっ倒れちゃうよ。
かといって患者を床に寝かせるのは性に反するからさ。………緊急時を除いてね。
卯月:……ぶっ倒れる…ですって?一体どういう意味なのですか…?
院長:接合された患者は…その間意識不明に陥っているようなもんだ。僕は回りの状況も把握できるけど…身動きは取れない。
手を離してしまうと強制的に接合解除しちゃうんだ。当然そんな事になったら患者の精神にも大きなダメージを与えてしまう。
簡単に接合なんて言ってるけどさ…きちんと手順を踏んでるからね。
それにさ………直ぐ済ませると宣言しておいてあれなんだけど。今回ね、あの体制で3時間にらめっこしてたの。
卯月:さ………3時間、ですって?とてもそんな長時間とは思えなかったんですが…
院長:ふふ………体感はもっと短くて当然さ。序盤の卯月は僕の中で眠ってたからね……
卯月:そう、だったのですか。私の記憶が曖昧なのは……そもそも眠っていたせいなのですね?
院長:うん、そうだよ。ま………僕とバカ弟子のにらめっこなんか長時間見てもつまらないでしょ?
直ぐ済ませられる自信もなかったし。万が一パニックになってしまえば卯月の処置以上に時間がかかるのは、
容易に推察できる。それくらいデリケートなものなのさ、精神(こころ)ってのは。だからむやみに接合なんてしちゃダメなんだよ。
ちなみに処置そのものはとっくに終わってるけど…どうして僕が側で経過観察してるか分かるかい?
卯月:…………?いえ、分かりません。
院長:主な目的は接合の後遺症が無いかを確認してるんだ。その瞬間は問題がなくても……時間経過で精神的不調が現れることも決して少なくないからね。
それがトリガーとなって起きた身体的症状は……不定愁訴と呼ばれる。当然バカ弟子達では手に負えない事が多いからね。最低1日は側に居ると決めてるんだ。
この話の流れで聞いておくけど…身体の具合はどう?もちろん精神的にも気になる事があれば言いなよ。
卯月:………っ。大丈夫……です。起きてから少々頭が痛みますけど……それほどではありませんから。
院長:全然大丈夫じゃないじゃん、酷い顔をして。ほら、横になってなよ。調べたげるからさ。
卯月:………すみません。
院長:謝らなくちゃいけないのば僕の方さ。卯月は被害者…なんだからね。
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