第15話 特効薬我に在り

昔から緊張ばかりして散々な目に会っている。テストでミスするのは序の口(それ故に数学は苦手であった)で、部活最後の大会で涙をのむこともあった。

センター試験も間近、大学受験は何とか突破したい、そんな私は不倶戴天の敵である「緊張」を無くす方法を模索していた。深呼吸、手に人の文字を書く、水を飲む・・・どれもそんな効果は無かった。しかしある日私は一つの薬を知った。

飲み薬で、これを服用すると緊張がほぐれるというものだった。値段はほんの少し高いが、それで受験が突破できるなら・・・と思い、私はドラッグストアに向かった。

しかし商品名を失念してしまった。そんな所だぞ、私よ、と思いつつも覚えている情報、自分がなぜそれが必要かを精一杯店員さんに伝えた。しかし返ってきたのは意外な言葉であった。

「確かに落ち着くかもしれないけど眠くなってしまうよ、だから買わない方がいいと思う」

てっきり在庫を探すと思っていた私にとって拍子抜けする言葉であった。店員さんは続けてこう話した。

「今まで必死に頑張ってきたなら、それを信じることが一番だよ。頑張っておいで」

私は静かに返事をし、店を後にした。緊張に効く特効薬をもらったからだ。

結局引っ越しもあってその店員さんに御礼は言えていない。しかし店員さんからもらった特効薬は確実に、私の人生を変えた。


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