第12話 感動もなくただ過ぎ去って
重要な提出物を出さねばならない主人公。ギリギリの所で何とか間に合った、若しくはダメだった・・・とかいうのを描写するのが物語を盛り上げるセオリーなのだろう。かく言う私もギリギリまで提出物に手をつけず泣きながらやったものだ。
しかし、そうもいかないものもある。普段からコツコツやらねばあとで恐ろしい程の後悔をするもの・・・その一つに、大学の卒業論文があるだろう。
私のゼミでは、自らテーマを設定して卒業論文を書くのがルールとなっていた。自由な反面、テーマによってはデータや先行研究もなく苦戦することとなる。また、自らが調査をすることも求められていた。
・・・上記のようなゼミで、一夜漬けに近い状況で卒業論文を完成させることが可能だろうか?要領が良く、頭の回転が良い方ならもしかしたらできるかもしれない。しかし、私は要領の悪さで有名な人間なのでこのようなことは怖くてできない。
それ故に少しずつ、泊まりがけで進めていった。やや辛くもあったが、それ以上に真っ暗な大学内で作業を進めるのが合宿のようで面白かった。かといってもう一度やりたいかは別問題であるが。
その甲斐あって余裕を持った形で(というより期限当日に出すのが怖かった)卒業論文は完成し、教務課に提出しに行った。
教務課の人はおめでとう、ご苦労さま、よく頑張ったね・・・・なんて言葉をかけることもなく、淡々と処理を済ませたあと証明書を発行しただけであった。
嗚呼、卒業論文ってこんな呆気なく終わるんだ。漫画の主人公みたいに祝福も、感動もされず。そして私の長い学生生活も同じように・・・
津軽の雪は冷たく現実を告げた。それを振り払うかのように私は土手町へ歩いて行った。
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