第7話 既視感は柑橘か、炭酸か
恐らく「既視感」という言葉は聞いたことがあるだろうし、その感覚を体験したこともあるだろう。既視感とは、ざっくり言うと体験したことのない出来事を体験したかのように感じてしまうことである。ふとした瞬間に、こんなこと前にもあったよな?と思ってしまうことも既視感の一例である。脳の記憶機能と関わっているという説もあるが、詳しいことは謎である。もちろん私も体験したことがあるが、自分自身で体験していることなので特に気にしない。そんなことあるよな、程度で済ませている。
ただ、これが「他人の既視感に自分が出てきた」となれば別である。そもそも滅多にないし、有ったとしてもその本人が既視感にお前が出てきたぞ、と私自身に語り掛けることなど殆ど無いからだ。・・・とはいえ、私自身そういうことを過去に体験した。
中学の修学旅行であったと思う。晩御飯、それはとても良いものであった。飲み物は水ではなくオレンジジュース。嫌いではないが、私は炭酸・・・特に三ツ矢サイダーが好きだ。何も気にせず
「これが三ツ矢サイダーだったら良かったなぁ」
と同級生に話す。するとその一人が
「木村が食事の時そう言ってたこと、前にあった気がする」
と言い出すのだ。そもそも同級生同士で食事をすることがないのに、サイダーの話をするだろうか?私は既視感なのだなと分かったが、まさか他人の既視感に私が出てくるとは思わなかったし、こういう例はこれっきりである。
考えようによっては奇跡的な体験なのだろうが、それより不思議さが勝ってしまう。ただ既視感とは自分で体験しても、他人に自分が出てきても不思議なものである。
(なおこの同級生は真っすぐ正直な性格であり、混んだ作り話をするような人ではないことを念のためにつけ加えておく)
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